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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科64巻8号

2010年07月発行

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あとがき フリーアクセス

著者: 渡辺晋一

ページ範囲:P.636 - P.636

文献概要

 日本では世界の標準治療薬の30%は使用できないといわれているが,その一方で日本でしか通用しない薬剤や治療法がある.その1つがイチゴ状血管腫に対するレーザー治療である.イチゴ状血管腫は自然に消退するため,その治療の原則は今でもwait and seeである.しかし近年日本では,早期にレーザー治療をすべきだと,まことしやかに本や雑誌に記載されていて,このような教育もされている.確かに単純性血管腫にはレーザー治療が世界標準治療になっているが,イチゴ状血管腫に早期からレーザー治療を行ったほうがよいというエビデンスはない.Rookの教科書では,イチゴ状血管腫に対するレーザー治療は賛否両論があると記載されているが,それは公正を期すために英語で書かれた日本からのプラセボを置かない治験論文も引用しているからである.しかし,イチゴ状血管腫はレーザー治療をしなくてもやがて退縮するので,数年すると未治療部位との差がなくなり,むしろ何回もレーザー治療を行ったほうが瘢痕などの副作用が目立つ,というプラセボとの比較試験論文が数編ある.そのためRookの教科書では,残存したイチゴ状血管腫や巨大なものにはレーザー治療をしてもよいが,自然消退を早めるわけではない(実際は多少消退を早める)とネガティブなコメントとなっている.実際タイからの留学生は,日本ではなぜイチゴ状血管腫にレーザー治療をするのかと不思議がっていたし,米国のレーザー治療センターの皮膚科医は,イチゴ状血管腫はwait and seeで,治療をする場合はコルチコステロイドの投与であると断言している.日本ではイチゴ状血管腫はレーザー治療の保険適用があり,しかも乳幼児では医療費が無料であるため,全身麻酔下で(20年以上前から海外にある外用麻酔剤は日本では認可されていないため),不必要なレーザー治療がたくさん行われている.このようにして日本では税金が無駄に使われている.なぜイチゴ状血管腫に保険適用があるのか,誰がそれを決めたのかいまだにわからない.日本の治療レベルは高いと信じている人は多いが,いつまでその化けの皮が剥がれずにすむのであろうか?

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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