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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科65巻11号

2011年10月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・50

Q考えられる疾患は何か?

著者: 小林美和

ページ範囲:P.835 - P.836

 症例

患 者:5歳,男児

既往歴:Crouzon病

現病歴:1歳頃より足背が黒褐色調を呈し,その後項部・鼠径部・腹部などに色素沈着を生じ,皮表が粗造化した.

現 症:全身に色素沈着が高度で,特に口囲・頸部・肘窩・腹部・膝窩・股部に目立つ(図1,2).皮野が著明で,粗に触れる.

症例報告

クロタミトン,ジイソプロパノールアミンによる接触皮膚炎症候群の1例

著者: 本多皓 ,   橋本玲奈 ,   高江雄二郎 ,   海老原全 ,   永尾圭介

ページ範囲:P.838 - P.842

要約 42歳,男性.右手首に湿布薬(セルタッチ®パップ)を貼布した3日後より,貼布部位に一致した掻痒を伴う紅斑とびらんを生じた.1か月後に左足首に同薬を使用したところ,貼布部にびらんを生じた後,全身に浮腫性紅斑が多発した.パッチテストにて陽性反応を示した,クロタミトン,ジイソプロパノールアミンによる接触皮膚炎症候群と診断した.これら2物質による接触皮膚炎症候群の報告は稀で,クロタミトンは自験例を含め2例,ジイソプロパノールアミンは自験例のみであり,文献的考察を加えて報告する.

コリン性蕁麻疹出現から,10数年の経過で生じた特発性純粋発汗機能異常症の1例

著者: 大西正純 ,   高橋和宏 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.843 - P.846

要約 31歳,男性.15歳頃より運動後にピリピリした痛み,かゆみを持つ発疹がときおり出現していた.10数年経過し,全身の無汗を生じた.温熱,薬物による誘発試験は陰性であり,明らかな基礎疾患を欠き,組織学的に汗腺の異常がみられないことなどより,特発性純粋発汗機能異常症と診断した.自験例は発疹の出現から長期間経過後に無汗が出現し,治療により発汗がみられた後も有痛性の発疹が継続した.発疹の出現が心理的ストレスを伴う場面でのみ出現していることから,心理的因子が発疹の出現に関与していたと考えた.

高齢者に生じた亜鉛欠乏症の1例

著者: 塩田剛章 ,   橋本怜奈 ,   森布衣子 ,   木花いづみ

ページ範囲:P.847 - P.851

要約 98歳,女性.2001年に脳梗塞を発症した.経口摂取が徐々に困難となり,初診の3か月前から半消化態栄養剤であるテルミール®の経口摂取が食事の中心であった.2009年3月から鼻周囲,爪囲に痂皮が付着する紅斑が出現し,その後外陰部,臀部にびらんが出現した.臨床的に典型的な皮疹,血中亜鉛値低下(8μg/dl),および亜鉛の投与により皮疹と低下していた意識レベルが速やかに改善したことから,亜鉛欠乏症と診断した.高齢者の栄養補給として最近利用されることの多い経腸栄養剤の選択方法について注意が必要である

増殖型壊疽性膿皮症の1例

著者: 神林由美 ,   佐々木喜教 ,   水芦政人 ,   浅野雅之 ,   芳賀貴裕 ,   奥山隆平 ,   相場節也

ページ範囲:P.853 - P.856

要約 35歳,男性.左下腿伸側を打撲した後から毛囊炎様の皮疹が生じた.抗生物質の内服や静注,抗真菌薬の内服治療に反応せず,当科に紹介された.左下腿伸側に,径7.0×4.5cm,境界明瞭で,表面が痂皮に覆われた疣状局面を認めた.組織像は,表皮の偽癌性増殖が顕著で,好中球浸潤を主体とした膿瘍の形成がみられた.Blastomycosis-like pyodermaや増殖型壊疽性膿皮症を鑑別診断としたが,感染症が否定できず,切除,植皮した.しかし1か月後,創縁に同様な病変が再発したため壊疽性膿皮症を疑い,シクロスポリンを投与したところ著効した.健常者の疣状局面で,切除後再発しシクロスポリンに反応した点から増殖型壊疽性膿皮症と診断した.本症とBlastomycosis-like pyodermaは患者の背景,病態,治療が異なるが,臨床像が極似する場合がある.今回,治療前の鑑別が困難であった症例を経験した.

扁桃炎を契機に急性汎発性膿疱性細菌疹を繰り返した1例

著者: 馬場慶子 ,   浜坂明日香 ,   今野信宏 ,   安川香菜

ページ範囲:P.857 - P.861

要約 53歳,女性.咽頭痛に続いて手掌に膿疱が出現し,発熱と関節痛とともに急速に体幹,四肢に拡大した.病理組織学的に角層下の好中球性膿疱を認めた.急性汎発性膿疱性細菌疹(acute generalized pustular bacterid:AGPB)と診断し,抗生剤点滴(ピペラシリンナトリウム,クリンダマイシン)で発熱,皮疹,咽頭痛は改善した.2年前にも扁桃炎を契機に同様のエピソードを認め,AGPBと診断され抗生剤で治療し軽快していた.自験例は扁桃炎を契機にAGPBを繰り返した症例と考えた.Tanが提唱したAGPBは再発しないことが疾患概念であるが,過去の症例報告を検討したところ,再発症例が約25%にみられていた.疾患概念を必ずしも満たしていなくても,AGPBと診断可能な症例もあり,新たな診断基準の確立などが必要であると考えた.

歩行障害をきたし,ステロイドが著効したmorphea profundaの1例

著者: 眞海芳史 ,   塩田剛章 ,   安田文世 ,   森布衣子 ,   木花いづみ

ページ範囲:P.863 - P.867

要約 79歳,男性.数か月前から左下腿の皮膚が硬くなり,歩行が困難になった.左大腿から左下腿,下腹,左前腕に帯状の光沢を有する皮膚硬化局面があり,特に左下肢は硬化のため膝関節の伸展が不能で歩行障害をきたしていた.皮膚症状以外にはRaynaud現象,嚥下障害,呼吸困難などはなかった.抗Scl-70抗体,抗セントロメア抗体は陰性であった.左下腿の局面と比較的新しい硬化局面である左前腕,下腿生検部位の対称部位の右下腿健常部からの生検を施行した.病理組織学的所見では筋膜から膠原線維の増生が始まり,脂肪織,真皮下層に膠原線維の増生,膨化が及ぶ変化をとらえることができ,morphea profundaと診断した.副腎皮質ステロイドの投与で症状は改善し,歩行可能となった.本症を他の限局性強皮症と異なる独立した疾患単位として位置付ける意義について考按を加えた.

強皮症と閉塞性動脈硬化症の合併による右足趾潰瘍の1例

著者: 上田美帆 ,   谷崎英昭 ,   谷岡未樹 ,   松村由美 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.869 - P.873

要約 79歳,女性.10年以上前より全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc)があり,近医に通院していたが無治療であった.2009年10月より右足に疼痛が出現し潰瘍化した.2010年1月に右足第1,2,5足趾潰瘍の加療のため近医に入院し,SScに伴う末梢循環不全による足趾潰瘍として保存的治療を行ったが改善せず当院皮膚科に転院となった.糖尿病,高脂血症,高齢であることと片足のみの潰瘍であることから閉塞性動脈硬化症の合併を疑い,下肢血管造影を行ったところ浅大腿動脈の起始部から閉塞長18cmの完全閉塞がみられた.右大腿動脈-膝窩動脈バイパス術を施行したところ,皮膚組織灌流圧測定と足関節上腕血圧比測定にて右足の血流改善みられた.SScを背景に足趾皮膚潰瘍をみた場合,糖尿病の合併,高脂血症などのリスクファクターを有する場合や,片足のみの疼痛,皮膚壊死の場合は,閉塞性動脈硬化症の合併も考慮する必要があると考える.SScに生じた足趾潰瘍の原因として,血流評価の重要性を再認識した1例であった.

皮膚筋炎に合併した肺癌の診断にPET/CTが有用であった1例

著者: 藤尾由美 ,   石橋正史 ,   澤藤誠

ページ範囲:P.874 - P.878

要約 59歳,男性.初診の約2週間前から顔面と手背に掻痒を伴う皮疹が出現し,下肢の脱力感および全身倦怠感を主訴に,当科を受診した.ヘリオトロープ疹,両肘頭・膝蓋に角化性紅斑を認め,両手にはGottron徴候,逆Gottron徴候およびmechanic's handの所見を認めた.また四肢近位筋の筋力低下を認め,CPK,アルドラーゼ値の上昇を伴っていた.臨床所見および各種検査より皮膚筋炎と診断した.CTにて肺門部に結節影を認め,さらに診断確定のためにFDG-PET/CTを施行し,肺門部肺癌およびリンパ節転移が疑われた.血液検査上Pro-GRPの上昇を認め,胸腔鏡下縦隔生検にて小細胞癌と診断した.肺癌の治療を優先し,現在,化学放射線療法施行中である.皮膚筋炎において悪性腫瘍の合併が疑われるものの,CTや他の画像診断により診断を確定しえない場合,PET/CTは有用であると考えた.

有茎性結節を形成した乳房外Paget病の1例

著者: 須山孝雪 ,   堤田新 ,   寺本由紀子 ,   山本明史

ページ範囲:P.879 - P.882

要約 49歳,男性.慢性腎不全で人工透析中である.3年前より外陰部に掻痒が生じていた.初診の2か月前より右陰茎基部に有茎性結節が出現し,増大したため近医を受診した.生検により乳房外Paget病と診断され,当科を紹介された.初診時,右陰囊から陰茎にかけて60×60mmの紅色局面があり,その中央に26×23mmの結節が存在した.マッピング生検でマージンを確認後,紅色局面より1cm離して切除した.センチネルリンパ節生検を施行したところ両側鼠径部に転移を認めたため,両側のリンパ節郭清術を施行した.術後1年2か月の現在,再発・転移を認めない.有茎性結節を生じた乳房外Paget病は早期から急速な増殖を示すものと考えられる.結節病変を生じた外陰部乳房外Paget病は積極的にセンチネルリンパ節生検をすべきと考えた.

右腋窩に生じたアポクリン腺癌の1例

著者: 古舘禎騎 ,   芳賀貴裕 ,   大谷朋之 ,   涌澤千尋 ,   相場節也

ページ範囲:P.883 - P.886

要約 54歳,男性.4年くらい前から右腋窩に弾性硬の皮下腫瘤が出現し,増大してきた.近くの外科,整形外科を受診し,皮膚生検でアポクリン腺癌と診断され当科を紹介された.術前検査でリンパ節転移が疑われたため,拡大切除およびリンパ節郭清を施行した.病理組織学的には淡好酸性胞体と腫大した核を有する異型細胞が充実性,一部管腔構造をとって増生し,一部で断頭分泌像が認められた.リンパ節転移は,摘出した26個のリンパ節のうち17個で陽性であった.また,腫瘍細胞はGCDFP-15,CAM5.2,EMA,HER-2などが陽性であった.断端は陰性であったが,術後再発のリスクを考え放射線療法を追加した.アポクリン腺癌に対する術後補助療法として確立されたものは今のところないが,自験例は術後放射線治療を施行し,術後10か月を経過したが,再発や転移は認めていない.

皮膚生検にて診断しえた血管内B細胞リンパ腫の1例

著者: 船井尚子 ,   小粥雅明 ,   杉山崇史 ,   柳生友浩 ,   橋爪秀夫

ページ範囲:P.887 - P.890

要約 70歳,男性.2009年4月以降,排尿障害と計3回の比較的速やかに回復する両下肢の脱力が出現し,その約1年3か月後からは認知機能の低下や性格の変化がみられるようになった.入院時,LDH 963IU/l,sIL2R 1,520U/mlと高値であり,頭部MRIでは血管支配領域に一致しない多発性虚血性病変を疑わせる所見がみられた.無症状の胸部の淡い紅斑から皮膚生検を施行し,病理組織像で真皮深層の小血管内にLCA陽性,L26陽性,CD79a陽性,CD3陰性の大型の異型細胞を認め,血管内B細胞リンパ腫と診断した.近年,本疾患の診断方法の1つとして,無疹部からのランダム皮膚生検が注目されている.しかし,皮疹部生検での腫瘍細胞陽性率はほぼ100%であり,皮疹の有無を注意深く観察して,生検部位を決定するべきと考えた.

皮下結節が多発したdiffuse large B cell lymphomaの1例―原発臓器による病理組織像の違いについて

著者: 鈴木薫 ,   林伸和 ,   竹中祐子 ,   川島眞

ページ範囲:P.891 - P.894

要約 85歳,女性.半年前から軀幹に出現し,次第に増数した多発皮下結節を主訴に当科を受診した.初診時,軀幹に拇指頭大までの,常色から淡紅色で弾性硬の皮下結節が40個以上あった.頸部,腋窩の表在リンパ節を触知した.背部の皮下結節の病理組織像では,脂肪織に腫瘍細胞が集塊を形成し,個々の細胞は好塩基性で異型な核を有しCD20,CD79a陽性であった.胃,骨・骨髄,リンパ節にも病変を認め,diffuse large B cell lymphoma(DLBCL),Ann Arbor分類IV期と診断した.初診から34日目に急速な胸水貯留による呼吸不全により永眠した.DLBCLについて過去の本邦報告例の検討では,皮膚以外の臓器を原発とし皮膚病変を伴うDLBCLは予後不良例が多く,皮膚原発のものでは組織学的に脂肪織に病変の主体を認めないことから,自験例を皮膚以外の臓器に原発したDLBCLと考えた.

頭部皮下腫瘤を契機に発見された肝細胞癌多発骨転移の1例

著者: 長島真由美 ,   藤村奈緒 ,   伊藤彩 ,   中村和子 ,   廣門未知子 ,   早川広樹 ,   池澤善郎 ,   蒲原毅

ページ範囲:P.895 - P.898

要約 58歳,男性.慢性C型肝炎の治療中に頭部に皮下腫瘤が生じ漸次増大した.初診時,右前頭部から側頭部にかけて径7cm大,弾性軟のドーム状に隆起した皮下腫瘤がみられた.頭部CT,MRIで,頭蓋骨から頭蓋内外に浸潤する骨破壊性の腫瘍性病変があった.皮膚生検では,細胞質に好酸性の顆粒状物質を有し異型の強い細胞が,索状,シート状の組織構造を呈して充実性に増殖していた.免疫組織染色で,肝細胞癌に特異的とされるHep Par1染色が陽性であった.CT,MRIにて肝臓内に多数の占拠性病変と胸椎,肋骨の転移が認められ,肝細胞癌多発骨転移と頭骸骨転移に伴う皮下腫瘤と診断した.肝細胞癌の頭蓋骨転移の頻度は稀である.しかし原発巣の特異的症状が初期に出にくく,転移巣が初発症状となることがある.頭部皮下腫瘤の鑑別すべき疾患の1つとして注意が必要と考えられた.

疣状黄色腫の2例

著者: 信原桂子 ,   上原慎司 ,   石井正光 ,   中川浩一 ,   吉田康彦

ページ範囲:P.899 - P.902

要約 症例1:80歳,男性.約1か月前から陰囊に軽度の出血を伴う皮膚結節が出現し,徐々に増大した.病理組織学的に表皮の乳頭腫状増殖を認め,真皮乳頭層に泡沫細胞が浸潤していた.免疫染色にてCD68が泡沫細胞の細胞質に陽性を示した.症例2:82歳,男性.約2年前より陰茎に無症候性皮膚結節が存在し,徐々に増大した.病理組織学的に表皮に過角化および乳頭腫状増殖,真皮乳頭層に泡沫細胞および形質細胞の浸潤を認めた.免疫染色では泡沫細胞がCD68陽性であった.以上より2例を疣状黄色腫と診断した.症例1は典型例であるが,症例2では陰茎に発生しており,この点について文献的考察を加えて報告する.

シャント瘤の1例

著者: 泉祐子 ,   本田まりこ

ページ範囲:P.903 - P.906

要約 63歳,女性.2010年5月,3年来使用している右上腕の血液透析シャント刺入部の丘疹を自覚した.透析科で針を用いての除去を試みたが,成功しなかった.その後,丘疹は増大し,ステロイド外用では改善しなかった.同年7月,当科を紹介され受診した.シャント部皮膚に15mm大の痂皮を伴う結節を認め,周囲の発赤と下床の硬結がみられた.画像検査でシャントとの連続性を認め,その周囲に炎症を示唆する画像所見がみられた.透析シャントにみられる動脈瘤あるいは静脈の動脈瘤様拡張をシャント瘤と呼ぶことから,シャント瘤と診断した.また,臨床的に周囲の発赤がみられ,画像上炎症を示唆する所見を認めた.初診より約1か月後,シャント瘤摘除術の待機中に自宅で破裂した.シャント瘤は,破裂するリスクがあるため,早期の手術治療が必要とされている.

治療

市販のパーマ液を使用した超弾性ワイヤー法による巻き爪,陥入爪治療の試みとVHO法との比較検討

著者: 佐藤まどか ,   竹内真

ページ範囲:P.907 - P.911

要約 巻き爪の治療方法としてさまざまな矯正法が行われている.いずれの方法も治療には多くの時間と労力を必要とする.今回われわれは,市販のパーマ液を使用して爪を軟化した後,超弾性ワイヤーにて短日時で矯正整復が得られる治療法を試み,従来から施行されてきたVHO法と比較して検討した.検討の結果,深爪になっていない比較的薄い爪ではトラブルもなく短期間で巻き爪の改善が得られることがわかった.適応を選べばかなり有用な方法と考えられる.

臨床統計

急性帯状疱疹痛の自己評価―帯状疱疹患者アンケート調査結果(続報)

著者: 比嘉和夫 ,   鈴木祐子 ,   鈴木和重 ,   川島眞

ページ範囲:P.913 - P.919

要約 皮膚科を受診した帯状疱疹患者を対象にアンケート調査を行い,痛みの把握という観点に着目して解析した.痛みの感覚については,視覚アナログスケール(visual analog scale:VAS)および日常生活への痛みの影響を具体的に言葉で聴取した5段階の痛みスコアで判定した.有効回答を得た3,224例のうち59.6%が女性であり,年代別では50歳台以上の患者が多かった.皮疹が軽症でも,強い痛みを訴える症例が少なからず存在した.痛みのスコアとVASでの痛みの強さは相関していたが,痛みのスコアが同じでも,VASでの痛みの強さの回答にはかなり幅があり,痛みのスコアとVASでの痛みの強さの傾向は完全に同じではなかった.痛みをより正確に把握するためには,皮疹の重症度などの臨床像だけで判断せず,どの程度の痛みなのかを日常生活への影響度合いなどを含め,具体的に聞くことが必要と考えた.

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欧文目次

ページ範囲:P.833 - P.833

文献紹介 ヘルペスウイルスゲノムの宿主テロメアへの組込みを促進する繰り返し配列

著者: 横山知明

ページ範囲:P.873 - P.873

 テロメアは染色体の末端にみられる構造で,6塩基の特徴的な繰り返し配列(telomeric repeats:TMRs)を持つDNAと,さまざまな蛋白質で構成される.テロメアは複製による染色体の短縮や他の染色体との融合を防ぐ役割をしている.Marek's disease virus(MDV)はヘルペスウイルス属の2本鎖DNAウイルスであり,鶏に感染してMarek病を引き起こす.MDVはそのゲノムの末端に,TMRsと同一の繰り返し配列を有する.TMRs変異MDVを作製し鶏に感染させたところ,感染鶏のマレック病発症率は有意に低下した.野生型MDVのゲノムが宿主のテロメアへ組込まれたのに対して,変異MDVは染色体内に組込まれた.さらに変異MDVでは,ウイルスの再活性化が有意に阻害されていた.以上の結果より,MDVがTMRsを利用して宿主テロメアへ組込まれることで,効率的な再活性化を可能にしていることが明らかとなった.

 HHV-6など他のヘルペスウイルスにもTMRsが存在することから,TMRsによるウイルスゲノムの組込みが,保存されたメカニズムであることが推察された.HHV-6は,薬剤過敏症症候群において再活性化することが知られているが,そのメカニズムの一端を明らかにした興味深い論文と言える.

次号予告

ページ範囲:P.921 - P.921

投稿規定

ページ範囲:P.922 - P.923

あとがき

著者: 中川秀己

ページ範囲:P.924 - P.924

 東日本大震災と福島原発事故に加え,世界連鎖株安に超円高進行と次々に難題が生じ,日本は戦後最大の国難の真っただ中にある.しかもどの課題に対しても政府は無策であり,大学時代から熱血漢であった同級生の東大アイソトープ総合センター長の児玉龍彦君が放射能対策の怠慢に対し,国会議員を叱り飛ばしたことは久しぶりにスカッとした思いである.福島原発事故は私の生活にも大きな影響を及ぼした.まずは節電である.病院は3%,大学エリアは15%の節電目標を掲げた.診療に関してはクールビズはダメなのでネクタイを着用しているが大汗かきの私には病院での仕事はきつく,すこしバテ気味となった.自宅では夜はなるべく家族全員で1部屋に集まり,27℃に温度を設定してなんとか眠れた.家でもまめに電気を消していると以前かなり電気を無駄に消費していたことがわかった.また,家内が区の子供たちに電気の大切さを教えているとのことで,ほろ酔い加減で帰宅するとソーラーカー・ロボットの作成,磁石で電気を起こす機械のコイル巻きなどを頼んでくるので折角の酔いが吹き飛んでしまった.次は食材である.なんせ大量の放射能のダダ漏れである.生産者の方には申し訳ないが,ずさんな食品検査システムは信用できず,水は西日本,野菜は四国から取り寄せ,肉はすべて外国産のものに変わってしまった.釣り好きの私も釣り場は千葉,茨城を避けている.この方面の釣り宿に聞くと釣り客は激減しているそうである.なるべく神奈川の方面で釣りをするようにしているが,釣った魚も家内に白い目で見られてしまい,魚を料理する意欲が失せてしまっている.東北方面の水産従事者は大変であろうと思うが,この方面の魚介類は汚染が進んでしまうのではないかと危惧している.児玉君が提唱しているガンマカメラやCCDカメラを使ったベルトコンベアーによる食品検査システムの開発と加速化に国がいち早く取り組むことを願っている.

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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