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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科65巻12号

2011年11月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・51

Q考えられる疾患は何か?

著者: 安藤典子

ページ範囲:P.929 - P.930

症例

患 者:52歳,男性

主 訴:顔面を除く全身の皮疹

家族歴・既往歴:特記すべきことなし.

現病歴:初診約半年前より陰部に紅斑が出現し,約2か月前よりしだいに全身に拡大した.

現 症:顔面を除くほぼ全身に厚い鱗屑を伴う紅斑を認めた(図1).背部では灰白色牡蠣殻様の角質増殖もみられ(図2),外耳孔にも鱗屑が付着していたが,腋窩・膝窩の間擦部には皮疹はなかった.軽度の掻痒を自覚していた.

今月の症例

Rhabdoid型組織像を呈した結節型悪性黒色腫の1例

著者: 藤井瑞恵 ,   村上正基 ,   井川哲子 ,   大石康史 ,   上原治朗 ,   本間大 ,   伊藤康裕 ,   高橋英俊 ,   山本明美 ,   坂井博之 ,   飯塚一

ページ範囲:P.932 - P.935

要約 55歳,男性.10年ほど前に右頰部の黒色斑を自覚した.2009年5月頃同部位が急速に結節状に隆起してきた.腫瘤は大部分が淡紅色で一部青褐色斑を伴い,ダーモスコピーではやや灰青色調のatypical pseudo-pigment networkを認め,一部ではregression structureと考えられる無色素性病変を呈していた.組織学的に腫瘍細胞は大型で好酸性の強い細胞質と偏在性の大型の核および明瞭な核小体を有していた.核分裂像も多数みられた.免疫染色ではHMB-45,デスミン,α-smooth muscle actinは陰性であったが,S100蛋白,およびMART-1が陽性で,rhabdoid型悪性黒色腫と診断した.過去のrhabdoid型悪性黒色腫の報告においても自験例と同様にHMB-45は陰性となることが多く,診断上,留意すべき所見と思われた.

症例報告

ロクロニウムによるアナフィラキシーの1例

著者: 磯久太郎 ,   益田浩司 ,   影山京子 ,   中井章淳 ,   加藤則人

ページ範囲:P.937 - P.940

要約 14歳,女児.脊柱側彎症に対して手術の麻酔導入時にプロポフォール,フェンタニル,次いでロクロニウムが投与された.約10分後,四肢体幹に紅斑・膨疹が出現し,頻脈,血圧低下をきたし,上記薬剤によるアナフィラキシーが疑われた.プリックテストの結果,ロクロニウムのみ陽性を認め,同剤によるアナフィラキシーと診断した.手術時のアナフィラキシーの原因薬物として筋弛緩薬の頻度は高く,またロクロニウムによるアナフィラキシーの報告は海外で多くみられており,本邦での使用頻度の増加とともにロクロニウムによるアナフィラキシーの報告が増加する可能性がある.

線状IgA水疱性皮膚症の1例

著者: 石田修一 ,   日野頼真 ,   千葉由幸 ,   堀内義仁 ,   福田俊平 ,   橋本隆

ページ範囲:P.941 - P.945

要約 83歳,女性.初診の1か月前から四肢に掻痒を伴う紅斑,水疱が出現し,2009年10月下旬に当科を受診した.初診時現症は,四肢に掻痒を伴う浮腫性紅斑と緊満性水疱を認め,生検病理組織像では好中球と好酸球の浸潤を伴う表皮下水疱を認めた.また,蛍光抗体直接法で表皮基底膜部にIgAの線状沈着を認め,間接法ではIgAが真皮側に陽性であった.以上よりsublamina densa型の線状IgA水疱性皮膚症(linear IgA bullous dermatosis:LABD)と診断した.テトラサイクリン・ニコチン酸アミド併用内服療法が奏効したが,減量に伴って再燃した.LABDは自己免疫性水疱症の1つであるが抗原は単一ではなく,抗原不明の症例も多い.ジアフェニルスルホンやステロイド全身投与により治療されることが多く,自験例のようにテトラサイクリン・ニコチン酸アミド併用内服療法のみによる治療が奏効した症例の報告は少ない.

塊状のIgA沈着を呈したDuhring疱疹状皮膚炎の1例

著者: 林欣宇 ,   氏家英之 ,   渡邉美佳 ,   馬場慶子 ,   阿部理一郎 ,   清水宏

ページ範囲:P.946 - P.949

要約 49歳,日本人男性.10年前から背部に掻痒を伴う皮疹が出現し,寛解と増悪を繰り返しながら徐々に体幹全体に拡大した.近医にてステロイド外用治療を受けたが,改善しなかった.軀幹,両上腕に類円形の径30mm大までの紅斑が散在し,小水疱を伴っていた.病理組織像では,真皮乳頭の微小膿瘍と表皮下水疱を認め,蛍光抗体直接法では真皮乳頭に塊状のIgA沈着を認めた.患者血清中の抗表皮トランスグルタミナーゼ(epidermal transglutaminase:eTG)IgA抗体が陽性であった.上下部消化管内視鏡,十二指腸および回腸生検,小腸カプセル内視鏡を行ったが,特に異常所見を認めなかった.Duhring疱疹状皮膚炎(dermatitis herpetiformis Duhring:DH)と診断し,ジアフェニルスルホン50mg/日を投与したところ皮疹は速やかに改善した.本症例のような塊状のIgA沈着パターンを呈するDHはまれである.また,本邦におけるDHの診断に,抗eTG IgA抗体の測定が有用であると考えられた.

眼囲に生じた色素性扁平苔癬の1例

著者: 時田智子 ,   森康記 ,   前田文彦 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.950 - P.953

要約 56歳,女性.初診の約2か月前から両眼囲にアイラインを引いたような独特の形状を呈する黒色皮疹が出現し,徐々に拡大した.皮膚病理組織は,組織学的色素失調の強い扁平苔癬であった.同様の皮疹は左耳後部と左大腿部にみられた.左大腿部の皮疹は黒色扁平隆起性局面を呈し,組織像も同様に色素性扁平苔癬であった.初診の約1年前からカンデサルタン内服の薬歴があることから,自験例はカンデサルタンが原因薬であると推察し,さらに眼科手術や化粧品などの物理的刺激によるKoebner現象が関与していると考えた.

心病変を伴ったサルコイドーシスの1例

著者: 塩田剛章 ,   石崎純子 ,   布田伸一 ,   三橋哲也 ,   田中勝

ページ範囲:P.954 - P.958

要約 76歳,女性.全身倦怠感で初発し,意識消失発作で当院救命センターに入院した.胸部CTで両側肺門・上縦隔リンパ節腫脹,ツベルクリン反応陰性,リゾチーム高値などからサルコイドーシスによる心病変が疑われたが,心電図と心筋生検では異常がなく,皮膚所見の有無につき当科に依頼となった.左膝蓋の軽微な暗紅色の紅斑と背部の落屑性紅斑より皮膚生検を施行し,類上皮細胞肉芽腫を認めたためサルコイドーシスと確定診断した.また,ガリウム(Ga)シンチグラフィで上縦隔と左室心筋に集積があり,タリウム(Tl)心筋シンチグラフィにて前側壁と後下壁に集積低下があり,心病変が判明した.サルコイドーシスの心病変頻度は5%であるが,死因の47~78%を心病変が占める.しかし,生前に診断されるのは3割以下に過ぎない.心筋生検の陽性率は2割と低いが,Tl心筋シンチグラフィでは7割に集積低下が検出され極めて有用である.また軽微な皮膚症状でも生検を行うことがサルコイドーシスの早期診断に重要である.

右頸部に単発した深在性エリテマトーデスの1例

著者: 上田美帆 ,   松村由美 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.959 - P.962

要約 50歳,女性.初診の3年前に右頸部に皮下硬結を自覚した.近医にてクラリスロマイシン,セチリジン,トラニラスト,プレドニゾロン内服,ベタメタゾン,タクロリムス外用にて加療されてきたが,いずれも無効であり,皮膚生検にても有意な所見が得られず診断が確定しないため,当院を受診した.病理組織像では真皮から皮下組織におけるリンパ球主体の小葉性脂肪織炎を認めた.培養や特殊染色では細菌,抗酸菌,真菌を検出しなかった.MRIでは皮下脂肪織の炎症を認め,腫瘍性病変はなかった.臨床および病理組織像より深在性エリテマトーデスと診断した.深在性エリテマトーデスは顔面,上腕,大腿に発症することが多いが,自験例は頸部という非常に稀な部位に単発で生じたことによって,発症から診断に至るまで長期間を要した.

耳介,鼻および気管軟骨に病変を認めた再発性多発軟骨炎の1例

著者: 加茂真理子 ,   白樫祐介 ,   藤本篤嗣 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.963 - P.967

要約 45歳,女性.初診時,右耳輪部の発赤,耳介皮膚の肥厚を伴う左耳の変形,鞍鼻を認めた.初診の数か月前に左耳介に今回と同様の症状が出現し,2か月前には近医耳鼻科にて喉頭蓋炎と診断された.画像検査で気道軟骨,胸骨肋軟骨結合部の炎症,呼吸機能検査は閉塞性障害を示した.右耳介部の生検病理組織像では軟骨近傍の筋組織内に好中球,リンパ球の浸潤を認めた.これらの所見より,再発性多発軟骨炎(relapsing polychondritis:RP)と診断し,プレドニゾロン50mg内服による加療を開始したところ,約3日で症状および呼吸機能を含めた検査所見の改善が得られた.RPの好発部位のうち,気道病変は進行すると変形による気道狭窄や肺炎を生じ,致死的となる可能性がある.自験例での経過から,CTなどの画像検査と並び,呼吸機能検査がRPの気道病変の評価に有用である可能性が示唆された.

ステロイドパルス療法が著効した特発性分節型無汗症の1例

著者: 岩出舞子 ,   後藤康文 ,   田中飛鳥 ,   斉木実 ,   宇原久 ,   奥山隆平

ページ範囲:P.969 - P.972

要約 36歳,女性.初診の2か月前より発汗減少を自覚し,高温下で倦怠感が出現するようになった.発汗試験では,左C3~C4,Th2~Th8,Th12~L2領域に分節型に発汗を認めたが,それ以外の部位はほぼ無汗で,うつ熱を伴っていた.皮膚生検では汗腺の形態に異常はなかった.また深部腱反射は正常で緊張性瞳孔はなく,Adie症候群の合併は否定された.特発性分節型無汗症と診断した.ステロイドパルス療法を施行したところ,発汗量の増加とうつ熱の改善が認められた.特発性分節型無汗症に対する治療は十分確立していないが,ステロイドパルス療法は試みるべき治療法の1つではないかと思われる.

アポクリン汗囊腫の1例

著者: 神山由佳 ,   曽我部陽子

ページ範囲:P.973 - P.976

要約 49歳,女性.7か月前より右上眼瞼の皮下結節を自覚し,その後わずかに増大した.初診時,右上眼瞼鼻背寄りに皮膚常色で径5mm大の弾性硬の皮下結節を触知した.病理組織学的に単房性の囊腫であり,囊腫上皮は単層から数層の円柱上皮で構成され,断頭分泌を示していた.外層には筋上皮細胞を有していた.免疫組織化学染色で囊腫壁細胞はCEA陽性,EMA陽性,GCDFP-15陽性を示し,汗腺分泌部への分化傾向を有するアポクリン汗囊腫と診断した.一般にアポクリン汗囊腫は青色や黒色調を呈することが多いが,自験例では深在性で小さな病変であったため皮膚常色を呈したと考えた.眼囲に生じた皮下結節は,本症も鑑別疾患に挙げるべきである.

Superficial angiomyxomaの1例

著者: 陳貴史 ,   前田健志 ,   河邊京子 ,   瀬下達之

ページ範囲:P.977 - P.981

要約 35歳,女性.約1年前より左前胸部の皮下腫瘍に気づいたが放置していたところ,徐々に増大してきた.初診時,腫瘍は2cm大で弾性軟,皮膚色,表面は平滑であった.病理学組織学的検査では,真皮内に粘液様物質を貯留する多数の結節が線維性中隔で境されていた.粘液基質内には壁の薄い血管の増生と散在する紡錘形細胞を認めた.粘液様物質はアルシアンブルー染色陽性,腫瘍細胞はビメンチン,CD34陽性,D2-40,S100蛋白,デスミン,ケラチン,EMA陰性であった.以上の所見よりsuperficial angiomyxomaと診断した.本邦20例の検討で,男性の下半身に多く,自覚症状のない結節,皮下腫瘤がほとんどで,ビメンチン,CD34陽性,S100蛋白,デスミン陰性が多い.Carney複合の除外診断を行う必要がある.

ドレーンで術後排便管理を行った乳房外Paget病の1例

著者: 田中飛鳥 ,   後藤康文 ,   葭矢裕之 ,   岩出舞子 ,   石曽根聡 ,   宇原久 ,   奥山隆平

ページ範囲:P.983 - P.986

要約 50歳台,女性.肛門周囲から腟にかけて広がる乳房外Paget病に対して腫瘍切除と植皮術を行った.肛門部に植皮をする際,デュープルドレーンを肛門部に留置し術後の排便管理を行った.便は留置したドレーンを介して排出され,植皮部のタイオーバーガーゼが汚染されることを予防できた.乳房外Paget病は多くの場合,外陰部や肛門周囲に発症する.肛門周囲の腫瘍を切除し植皮術を行った場合,術後に糞便による汚染が生じることが多く,植皮部を清潔に保つことは容易でない.自験例のように肛門部にドレーンを留置することは,侵襲が少なく,安価な材料を使った簡便な方法であり,肛門周囲の植皮術の際に有用な手法と考えた.

電子線治療を行った高齢者の顔面基底細胞癌の1例

著者: 中山若菜 ,   野上玲子 ,   古閑幸則

ページ範囲:P.987 - P.990

要約 90歳,女性.20歳時にHansen病にて当施設に入所した.2008年,鼻背部右側のドーム状隆起性腫瘤を主訴に当科を初診した.経過観察していたところ拡大傾向を示し,2010年に1.6×1.4×1.8cm大となり,病理組織像にて基底細胞癌と診断した.認知症,気分障害があり,根治手術は困難と判断し電子線治療を選択した.治療は1回線量2Gy×35回,追加照射11.5Gy計81.5Gyを行い,腫瘍は著明に縮小し患者の満足も得られた.顔面基底細胞癌に対し,放射線療法を行い良好な経過をとった症例であった.特に高齢者の顔面の基底細胞癌において,放射線療法は今後有力な選択肢になると考えられる.

若年女性に生じた原発性皮膚CD30陽性リンパ増殖症の1例

著者: 古舘禎騎 ,   大谷朋之 ,   小澤麻紀 ,   相場節也

ページ範囲:P.991 - P.993

要約 24歳,女性.半年ほど前から左鼻根部に痤瘡様の皮疹を認め,近医で抗生剤外用,内服で加療されたが改善を認めず,徐々に拡大してきた.皮膚生検の結果,真皮全層および皮下脂肪織にかけて,異型なリンパ球がみられる密な細胞浸潤を認めており,皮膚T細胞性リンパ腫の組織像と考えられたため,加療目的に当科を紹介された.当科初診時,13×9mm大のやや境界不明瞭な扁平隆起性の紅色結節を認めた.免疫染色で原発性皮膚CD30陽性リンパ増殖症(境界型)と診断した.若年女性の顔面であり,根治性と整容面を考慮し,放射線治療を選択した.予定照射量(40Gy)に達する前に腫瘍が消退し,切除は行わなかった.照射終了後3か月経過するが,現在再発は認めない.本疾患の若年発症は稀であり,また結果的に根治性,整容面の双方で満足のいく結果であった.

左腋窩擦過傷より発症したtoxic shock syndromeの1例

著者: 佐藤之恵 ,   大内結 ,   堤直也 ,   鈴木亮 ,   佐藤友隆

ページ範囲:P.995 - P.998

要約 27歳,男性.グアム旅行中に左腋窩に皮疹を自覚した.帰国後,皮疹が増悪し,39℃の発熱,下痢,嘔吐が出現し,当院内科と皮膚科を受診した.初診時,左腋窩に水疱,膿疱が散在し,全身に日焼け様紅斑,眼球結膜充血,イチゴ舌,血小板減少,BUN/Crの上昇,T. Bilの上昇がみられた.以上,臨床症状と検査所見よりtoxic shock syndrome(TSS)を考えた.血圧低下を認め,内科に入院となり,抗生剤としてシプロキサンの投与と大量輸液を開始した.左腋窩膿疱からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)が検出され,TSST-1産生株であった.抗生剤をバンコマイシンへ変更し,軽快した.TSSの原因で増加する市中MRSA感染症では,IL-6と重症度が相関すると考えた.

左手背に生じたExophiala xenobioticaによる黒色菌糸症の1例

著者: 太田美和 ,   木下洋和 ,   上條麻弥 ,   新美美希 ,   小川祐美 ,   佐野文子 ,   比留間政太郎 ,   池田志斈

ページ範囲:P.999 - P.1003

要約 79歳,女性.東京都在住.40歳より糖尿病.趣味は園芸.胆管癌を疑われ当院内科にて入院精査中であった.約1か月前に,外傷の既往なく左手背に類円形の痂皮を伴う小結節が出現し徐々に増大し,中央より排膿するようになったため当科を初診した.病理組織所見では,真皮内に膿瘍および異物巨細胞からなる肉芽腫が形成され,褐色の胞子連鎖や菌糸が多数みられた.膿汁と組織片の培養で黒色真菌が分離され,形態学および分子生物学的解析でExophiala xenobioticaと同定,同菌による黒色菌糸症(phaeohyphomycosis)と診断した.切除後3か月間イトラコナゾール100mg/日を内服した.術後1年3か月経過した現在再発はみられていない.本菌による感染症の症例報告では,われわれが調べえた限り,自験例が世界で3例目であった.

急性腹症を生じた内臓播種性水痘・帯状疱疹ウイルス感染症の1例

著者: 矢嶋萌 ,   松村由美 ,   一戸辰夫 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.1005 - P.1008

要約 46歳,男性.皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫に対して2年半前に臍帯血幹細胞移植を受け,移植後2年間アシクロビルの予防内服を継続していたが半年前に中止していた.初診の2日前より37℃台の発熱があり,嘔気と軽度の心窩部痛を自覚した.当院血液内科初診時,心窩部に筋性防御を伴った圧痛を認めた.皮膚科に水痘の可能性について相談があり,右下腹部に水痘を思わせる丘疹を1個認めた.内臓播種性水痘・帯状疱疹ウイルス感染症を疑い,アシクロビルの投与を開始した.腹痛は著しく,モルヒネと塩酸ケタミンを要した.血中ウイルスDNA量が高値であることから水痘・帯状疱疹ウイルス感染症と確定診断した.移植後の水痘・帯状疱疹ウイルス回帰感染は重篤な割に皮疹が非典型的なことがあり,皮膚科医も知るべき疾患である.

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欧文目次

ページ範囲:P.927 - P.927

文献紹介 毛包幹細胞は色素幹細胞の機能的ニッチとしての役割を担っている

著者: 土井亜希子

ページ範囲:P.967 - P.967

 17型コラーゲン(COL17A1/BP180/BPAG2)が欠損した接合部型の先天性表皮水疱症では脱毛や毛包の萎縮をきたすことが知られる.本論文では17型コラーゲンが毛包幹細胞のみならず,色素幹細胞の維持においても必須であるということ,つまり毛包幹細胞が色素幹細胞のニッチとしての役割を担っていることが明らかにされた.

 通常,毛包幹細胞では17型コラーゲンが高発現している.しかし,著者らが17型コラーゲンノックアウトマウスを作製したところ,生後12週頃よりマウスの白髪化がみられ,後に脱毛を生じた.17型コラーゲンノックアウトマウスの毛包幹細胞は恒常性を保つための休眠状態を保つことができず,その結果として毛周期も破綻していた.また,生後8週頃からケラチン15などのマーカーで標識される毛包幹細胞が消失しはじめており,17型コラーゲンが欠損すると毛包幹細胞が維持されず,脱毛をきたすことが明らかとなった.

お知らせ 第28回日本臨床皮膚科医会総会・臨床学術大会/テーマ「基本に忠実・変化に対応~よりよき皮膚科診療をめざして」

ページ範囲:P.1004 - P.1004

会  頭 津田 眞五(大分県)

事務局長 楠原 正洋(福岡県)

実行委員長 松田 哲男(福岡県)

会  期 2012年4月21日(土)~22日(日)

会  場 ホテルニューオータニ博多(福岡市)

     〠810-0004 福岡市中央区渡辺通1-1-2

     TEL:092-714-1111/FAX:092-715-5658

次号予告

ページ範囲:P.1009 - P.1009

投稿規定

ページ範囲:P.1010 - P.1011

あとがき

著者: 石河晃

ページ範囲:P.1012 - P.1012

 われわれ医師は患者さんの訴えを聞き,身体所見,検査所見をとり,知識と経験から判断を加え,治療を行っている.また,日常診療のなかから,「これは」と思うまれな疾患,重要と思われる事実,新しい解釈,治療経験などを論文として世の中に発信している.これらに共通して必要なことは,①事実を正確に把握すること,②それを正しく解釈し,考察すること,③他者にわかりやすく伝えることである.新聞記者も目的や対象は異なるが,記事を書くにあたって,非常によく似たプロセスを取っている.論文の著者も新聞記者も内容に関しては書く側にすべての権限があり,何を題材にするか,どこをクローズアップするか,そしてどのように表現するかは著者の自由である.近年,政治家のうかつな発言により,大臣就任まもなく辞任するケースが相次いでいる.政治家は法律の制定により国民の利益,幸福のため貢献することが求められているが,個人としての考え方と社会としての考え方,その時々の刹那的な考えと将来を見据えたときの考えなど自ずと異なるはずである.政治家は公人として発言をするべきであるが,マスコミも,何をどのように伝えるか,モラルと正確性,中立性が求められる.「死の町」「放射能つけちゃうぞ」発言の報道のあり方については一部で論議が巻き起こったが,こうした議論により政治家のみならずマスコミや社会が成熟することを切に願う.振り返って学術論文には中立性は求められていないが,事実に基づく理論的な考察により,医学の進歩に寄与することが求められている.症例の記述と教科書的な解説で終わっている論文を時に目にするが,新聞記事との違いをご理解いただき,ぜひ,「著者の主張」を展開していただきたいたいと思う.

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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