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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科65巻13号

2011年12月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・52

Q考えられる疾患は何か?

著者: 安藤菜緒

ページ範囲:P.1019 - P.1020

症例

患 者:20歳,男性

主 訴:顔面,背部の紅褐色斑

既往歴:小児喘息

家族歴:特記すべきことなし.

現病歴:2歳時より顔面,頸部,背部に紅斑があり.9歳時,他院皮膚科での精査では筋炎所見はなく,ステロイド外用剤のみで経過観察されていた.15歳より皮疹の色調が濃くなったため受診した.

現 症:顔面に境界明瞭な色調の濃い紅褐色斑を認め,全体的にやや隆起し,下顎部では線状や点状の紅褐色斑を認めた(図1a).背部では著明なポイキロデルマと,線状もしくはびまん性に色調の濃いやや隆起した紅褐色斑を認めた(図1b).徒手筋力テストは上下肢とも5.図1cは9歳時の爪囲紅斑と手指関節背の角化性丘疹.

今月の症例

円形脱毛斑が先行した塩酸ミノサイクリンによる薬剤誘発性ループスの1例

著者: 白山純実 ,   辻真紀 ,   今中愛子 ,   八幡陽子

ページ範囲:P.1022 - P.1026

要約 47歳,男性.2002年頃から顔面の痤瘡に対し,ミノサイクリン100mg/日を断続的に内服していた.2008年1月頃から後頭部の脱毛斑と肩・頸部・膝関節に疼痛,12月頃から発熱が出現していたが自然に軽快した.2009年1月から頭部の脱毛斑が急速に拡大し40℃までの発熱が連日続くようになったため入院した.白血球減少,抗核抗体320倍,尿蛋白を認め,ミノサイクリンによる薬剤誘発性ループス(drug-induced lupus erythematosus:DILE)を疑い内服を中止したところ,症状は速やかに消失した.その後,自己判断で再度内服したところ,翌日の夜から関節痛と40℃の発熱を認めた.以上の経過よりミノサイクリンによるDILEと診断した.内服中止後,脱毛斑は徐々に軽快し,新生もなかったことから,円形脱毛斑もDILEの一症状と考えた.

症例報告

人工膝関節置換術後に生じ,好酸球性胃腸炎を併発した全身性金属アレルギー

著者: 濱佳世 ,   日野亮介 ,   吉岡学 ,   中島大毅 ,   中村元信 ,   戸倉新樹

ページ範囲:P.1027 - P.1030

要約 73歳,女性.2009年11月コバルト/クロム合金による右人工股関節置換術,2010年3月に同金属による右人工膝関節置換術を受けた.膝関節置換術後,右下腿の腫脹が続き,術後15日目頃から下痢とともに全身の紅斑が出現した.パッチテストで,クロム,コバルト,水銀,ニッケル,人工関節の合金が陽性であった.皮膚病理所見では多数の好酸球とリンパ球の浸潤を認めた.また,上部消化管内視鏡と病理検査の結果,好酸球性胃腸炎を併発しており,全身性金属アレルギーと診断した.ステロイド全身投与のみで改善しないため,金属の経口摂取制限とクロモグリク酸ナトリウム(インタール®)の内服を併用したところ,皮疹は軽快し,順調にステロイドを漸減できた.関節置換術後の全身の紅斑,胃腸症状の併発時には,全身性金属アレルギーの診断をまず念頭に置く必要性が再認識された.

ボルテゾミブによる紫斑を伴った有痛性紅斑の1例

著者: 松木美和 ,   相原道子 ,   高橋一夫 ,   松本憲二 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.1031 - P.1034

要約 51歳,女性.難治性の多発性骨髄腫に対してボルテゾミブの投与を開始した.投与開始12週後より両下腿に紫斑を伴い,皮下に硬結を触れる有痛性紅斑が出現した.皮膚生検病理組織像では,表皮基底膜部に空胞変性があり,真皮内小血管周囲に炎症細胞浸潤がみられた.浸潤している細胞はリンパ球を中心として好中球を混じており,核塵,赤血球の漏出がみられ,血管障害が示唆された.休薬後3週間で皮疹は消退したが,その後も投与ごとに同様の皮疹が再燃した.再燃はあるものの症状は自制内であり,自然軽快を繰り返したため継続投与が可能であった.分子標的治療薬による皮膚症状の多くはアレルギー性の機序だけではなく用量依存性の中毒反応として生じる.したがって,安易に有害と判断し中止をするだけではなく,対症的に皮膚症状を抑制しながら薬剤投与を安全に続けられるようサポートしていくことも必要である.

特発性後天性全身性無汗症11例の臨床的検討

著者: 丸山涼子 ,   苅谷直之 ,   佐藤信之 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.1035 - P.1039

要約 2005年1月~2010年4月に当科を受診し,温熱発汗試験で無汗部位を確認しえた特発性後天性全身性無汗症患者11例について,患者背景,病理組織像,治療について検討した.11例の内訳は,男性9例,女性2例で,発症年齢は13~60歳(平均27.4歳)であった.11例全例にステロイドパルス療法について説明し,施行の了解が得られた患者にステロイドパルス療法を行った.汗腺に変性像を認めた2例を含め,5例にステロイドパルス療法を施行し,全例で症状が改善した.ステロイドパルス療法未施行6例のうち,2例では無治療で症状が改善し,3例は不変,1例は経過不明であった.特発性純粋発汗機能不全症(idiopathic pure sudomotor failure:IPSF)に相当すると考えられたのは4例であった.ステロイドパルス療法は無汗症に有効であると考えられた.また,今後無汗症の診断基準,治療法についてのガイドラインの作成が必要であると思われた.

Delusional infestationの2例

著者: 坂井博之 ,   菅野恭子 ,   佐藤譲 ,   飯塚一

ページ範囲:P.1041 - P.1044

要約 症例1:81歳,男性.1942年にライム病に罹患し,その後現在まで虫が体内に棲息し種々の症状をきたしていると信じている.過去にライム病の治療歴があり,これまでの経過をレポート用紙にまとめて持参してきた.スルピリド投与により訴えが減少した.症例2:52歳,男性.再診時に虫の検査を希望して繊維屑や紙片を持参してきた.Delusional infestation(DI)と考え対応していたが来院しなくなった.両症例ともにspecimen signを示したprimary DIと診断した.DIは妄想性疾患であるが,患者にとっては現実的な皮膚疾患と同様であるため通常皮膚科を受診する.DI患者への対応,薬物療法など基本的な対症方法を考察した.スルピリドはDIに対して効果が期待できる皮膚科医でも使用しやすい薬剤の1つと考えた.

両眼瞼浮腫,呼吸苦を契機に診断に至った上大静脈症候群の1例

著者: 畠田優子 ,   田宮紫穂 ,   赤坂江美子 ,   生駒憲広 ,   馬渕智生 ,   松山孝 ,   小澤明 ,   田尻さくら子 ,   河野通良

ページ範囲:P.1045 - P.1048

要約 66歳,男性.両眼瞼浮腫にて近医を受診し血管性浮腫の診断でプレドニゾロン内服治療を開始した.症状は一時軽快したが,減量にて症状が増悪したため,2007年8月当院を紹介され受診した.初診時,両眼瞼に淡い紅斑を伴う浮腫がみられた.病理組織学的所見は真皮上層の血管周囲にリンパ球主体の炎症細胞浸潤と浮腫を認めた.採血検査では抗核抗体640倍(nucleolar pattern)と上昇したが,抗Jo-1抗体と抗二本鎖DNA抗体は陰性であった.日内変動のある呼吸苦を伴うため施行した胸部造影CTにて,中縦隔に主気管支内へ突出する軟部腫瘤を認め,上大静脈にも一部浸潤していた.以上から,縦隔型肺癌による上大静脈症候群と診断した.呼吸器内科にて化学療法,放射線療法,気管支ステント治療を施行したが,初診から約1年で永眠した.呼吸苦を伴う両眼瞼浮腫をみた場合,上大静脈症候群も考え検査を進める必要があると思われた.

膵頭部癌に伴った皮下結節性脂肪壊死症の1例

著者: 田島綾子 ,   米山啓 ,   大橋弘文 ,   岸宏久 ,   外川八英

ページ範囲:P.1049 - P.1053

要約 68歳,女性.初診の2週間前より両下肢に有痛性の紅色結節が多発した.大腿部の小結節を全摘生検した.HE染色で脂肪織上層に限局性巣状の脂肪織炎を認め,中心部には脂肪細胞の隔壁が好酸性に肥厚し,核が消失したghost-like cellを認めた.皮下結節性脂肪壊死症を疑い,膵疾患の精査を行ったところ,アミラーゼなどの膵逸脱酵素の上昇と膵頭部癌が見つかった.手術適応はなく,保存的治療が行われたが,皮疹は自然軽快した.初診より5か月後に永眠した.

経表皮性排除を認めたsubepidermal calcified noduleの1例

著者: 甲田とも ,   笠井弘子 ,   木花光 ,   高橋浩之 ,   中村宣子 ,   朝倉靖博

ページ範囲:P.1054 - P.1058

要約 1歳,女児.数日前より両耳後部と左側頭部に粟粒大までの黄白色丘疹が多発した.高カルシウム血症,基礎疾患などはなく,病理組織像よりsubepidermal calcified nodule(SCN)と診断した.被髪頭部に白色粒状丘疹の新生が続き,これは鑷子で出血もなく容易に剝離できた.この病理像は層状の角化物に覆われた,真皮と同様の構造物で,顆粒状の石灰沈着を認め,経表皮性排除された後のSCNと判明した.初診後3か月で皮疹はすべて自然消退した.過去20年間の論文によるSCNの報告に自験例を含めた20例中,多発例は9例であったが,皮疹の新生,自然消退を繰り返した例は自験例のほかに1例のみであった.経表皮性排除は5例で認めたが,完全に排出された後の臨床像,病理組織像を捉えた例は自験例のみであり,真皮の構造が比較的保たれていたのが印象的であった.

Melkersson-Rosenthal症候群の1例

著者: 小岩克至 ,   下山潔 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.1059 - P.1063

要約 36歳,女性.既往に18歳と28歳のときに顔面神経麻痺がある.初診の1年前より左頰粘膜・歯肉・下口唇の腫脹を自覚した.歯科を受診し,齲歯治療をしたが改善しなかった.近医皮膚科を受診し,抗アレルギー剤の処方で腫脹は改善した.しかし,その後も4~5回腫脹・消退を繰り返し,最近は抗アレルギー剤を内服しても改善しないため当科を受診した.臨床所見は上下口唇・左頰粘膜の腫脹と皺襞舌であった.下口唇から皮膚生検術を施行し,病理組織学的に血管周囲に軽~中等度に小円形細胞が浸潤しており,その一部に類上皮細胞を認めた.以上よりMelkersson-Rosenthal症候群と診断した.トラニラスト内服に反応しないため,ステロイド内服・局注を追加し腫脹は改善した.3主徴の口唇腫脹・再発性顔面神経麻痺・皺襞舌が揃い,病理組織学的に肉芽腫性変化を認めるものは比較的稀である.

多形紅斑様皮疹を呈し,非典型的な臨床経過をとった62歳男性の麻疹

著者: 笠井弘子 ,   甲田とも ,   木花光 ,   下田浩輝 ,   長谷川毅

ページ範囲:P.1065 - P.1070

要約 62歳,男性.3日前より39℃の発熱と肩関節痛を認め,2日前より体幹,四肢に多形紅斑を思わせる浮腫性紅斑が散発した.初診時,眼球結膜充血,口腔粘膜疹,リンパ節腫脹はいずれもなかった.入院後,結膜充血,口腔内発赤,胸水貯留,全身浮腫が出現し,プレドニゾロン投与にて軽快した.年齢および臨床所見から,本例に対し,当初ウイルス感染症は積極的に疑わなかった.入院時の血液検査で肝機能障害がみられ,ウイルス感染症も疑い,抗体価の測定により麻疹と確定診断された.非典型的経過をとる麻疹には修飾麻疹と異型麻疹があり,麻疹ワクチン接種が関与するとされる.自験例では,予防接種歴はないと推測されたが,異型麻疹に近い臨床像をとった.多形紅斑の原因検索の重要性を再認識した.

PETで陽性を示した有茎性巨大尖圭コンジローマの1例

著者: 古舘禎騎 ,   芳賀貴裕 ,   菊地克子 ,   相場節也

ページ範囲:P.1071 - P.1074

要約 70歳,女性.20年ほど前から左大陰唇に結節が生じ,徐々に増大してきた.初診時,左大陰唇に径3×3×5cm大の淡紅色~淡黄色,有茎性,乳頭状の特異的な形態を示す腫瘤が認められた.PET検査でSUVmax 6.6と高値を示した.基部より数mm離して外科的に切除し,病理組織学的に検討した結果,巨大尖圭コンジローマと診断した.術後10か月経過したが再発は認めていない.通常の尖圭コンジローマに比べ,巨大化する症例ではより高齢発症の傾向が認められる.巨大化の要因としては,下痢などの慢性の刺激,不潔な衛生状態,免疫抑制状態などが挙げられる.

切除範囲の決定にマッピングバイオプシーを用いた鼻部基底細胞癌の1例

著者: 若林祐輔 ,   貫野賢 ,   寺田美奈子 ,   小森敏史 ,   浅井純 ,   竹中秀也 ,   加藤則人 ,   森原潔

ページ範囲:P.1075 - P.1078

要約 81歳,男性.右鼻翼部の米粒大黒色結節を主訴に受診した.前医の皮膚生検の結果は,基底細胞癌であった.ダーモスコピーでは黒色結節周囲に樹枝状血管拡張や白色局面などの所見が観察された.当初,結節部より5mmのマージンをとって切除したが断端陽性であった.再度手術を施行したが,切除断端の陽性を繰り返し,最終的に切除範囲の同定にマッピングバイオプシーを用い,計6回の手術を要した.本症例のように,日本人においても基底細胞癌はまれに無~低色素性に病変を形成し,黒色結節の周囲に広範囲の無~低色素性病変を形成する症例では,境界が不明瞭なため切除範囲の決定に苦慮することがある.マッピングバイオプシーはこのような症例において,有効な手段の1つであると考えた.

Desmoplastic malignant melanomaの1例

著者: 加藤潤史 ,   田口理史 ,   寺本由紀子 ,   山本明史

ページ範囲:P.1079 - P.1083

要約 58歳,男性.左胸部に生来よりあった黒色斑が徐々に増大し受診した.左前胸部に51×32mm大,不整形の紅色~褐色~黒色斑をみる.超音波検査では腫瘍内部にサンゴ状に分岐した血流所見を認め悪性を疑う像であった.ダーモスコピー像で,atypical pigment netowork,blue-white structures,regression structure,linear-irregular vessels,milky-redを認め,悪性黒色腫を疑い切除した.病理組織像では,真皮全層~皮下脂肪組織にかけて異型性のある紡錘形の核をもつ腫瘍細胞が,胞巣を形成せず,びまん性に浸潤していた.膠原線維や血管の増生もみられた.免疫組織化学染色では,S100蛋白,ビメンチンは胞巣部,紡錘形の腫瘍細胞部ともに陽性であったが,HMB-45,melanAでは表皮~真皮浅層の胞巣を形成する腫瘍細胞が陽性で,紡錘形の腫瘍部は陰性であった.以上からdesmoplastic malignant melanomaと診断した.本腫瘍は稀な悪性黒色腫の一亜型である.そのためダーモスコピー所見の報告は非常に少ないが,膠原線維の増生が多いため,regression structureは本腫瘍に特徴的なダーモスコープの所見と考えられる.

Primary cutaneous CD4 small/medium-sized pleomorphic T-cell lymphomaの1例

著者: 伊藤路子 ,   青木見佳子 ,   黒澤真澄 ,   新井栄一 ,   川名誠司

ページ範囲:P.1085 - P.1088

要約 45歳,女性.1か月前より自覚症状のない紅色結節が出現し徐々に増大した.当該部位に外傷,虫刺症の既往はない.初診時左手関節屈側に12×8mm大,表面に鱗屑が付着する境界明瞭で弾性硬の紅色結節を認め,全摘した.病理組織像では,表皮直下~真皮下層に小型から中型の核異型のあるリンパ球が広汎に浸潤していた.浸潤細胞は,CD3,CD4が陽性でCD8も一部陽性であった.正常のCD4/8比(0.6~2.9)に比較してCD4が優位であった.またPCR法にてTCR-γの遺伝子再構成を認め,primary cutaneous small/medium-sized pleomorphic T-cell lymphoma(WHO-EORTC)と診断した.全身検索では他臓器に浸潤を認めず,全摘後に電子線を36Gy照射した.1995~2008年の報告例54例の検討で,部位は四肢が最も多く,治療は外科的切除,放射線照射が多かった.一般的には予後は良好だが,この疾患には3亜型があるとされ今後も定期的な経過観察を要する.

血管免疫芽球性T細胞リンパ腫に対する同種末梢血幹細胞移植後に出現した多発エクリン汗孔腫の1例

著者: 島本紀子 ,   松村由美 ,   谷崎英昭 ,   谷岡未樹 ,   是枝哲 ,   高橋健造 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.1089 - P.1092

要約 63歳,男性.血管免疫芽球性T細胞リンパ腫に対する化学療法および自己末梢血幹細胞移植の治療歴がある.発症6年後に2回目の再発をきたしたため,化学療法の後,骨髄非破壊的同種末梢血幹細胞移植を行い寛解に至った.移植の数か月後からの8年間に全身に計12か所の紅色結節が次々に出現したため切除し,病理学的所見からエクリン汗孔腫と診断した.エクリン汗孔腫は良性の皮膚付属器腫瘍で,ほとんどが単発である.6個以上のエクリン汗孔腫が多発した報告は過去に7例あり,そのうち3例には放射線照射歴があり,いずれも放射線照射部位に発症している.自験例も同種末梢血幹細胞移植の前処置として全身放射線照射を施行しており,放射線照射との関連性が想起される.

治療

乾癬に対するインフリキシマブの国内臨床試験サブ解析によるシクロスポリンからの切り替え時の有効性と安全性

著者: 鳥居秀嗣 ,   中川秀己 ,  

ページ範囲:P.1093 - P.1097

要約 日本皮膚科学会生物学的製剤検討委員会で作成された「乾癬における生物学的製剤の使用指針および安全対策マニュアル」では,TNF-α阻害薬とシクロスポリンとの併用は原則として行うべきでないと規定されている.TNF-α阻害薬を導入する場合にはシクロスポリンを中止せざるを得ないが,その際の有効性,安全性については十分に検証されていない.そこで,インフリキシマブの国内臨床試験結果をサブ解析し,シクロスポリンからインフリキシマブへ切り替えた際の有効性,安全性について検証した.その結果,シクロスポリン投与中止後のwash out期間を設けた場合と設けない場合のいずれにおいても,インフリキシマブは導入初期からPASIを悪化させることなく速やかな改善効果を示すことが確認された.これはインフリキシマブの効果発現の速さによるものと考えられ,シクロスポリンからインフリキシマブへ切り替える際にみられる症状悪化の懸念が少ないことが示唆された.

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欧文目次

ページ範囲:P.1017 - P.1017

文献紹介 男性型脱毛におけるデュタステリド0.5mg/日投与の効果,安全性,および忍容性についてのランダム化,二重盲検,プラセボ対照,第Ⅲ相試験

著者: 平井郁子

ページ範囲:P.1063 - P.1063

 男性型脱毛症(male pattern hair loss:MPHL)は,遺伝的背景を持つ男性に思春期以降に始まり,前頭部から頭頂部にかけての毛包のミニチュア化,軟毛化を経て外観的に特有のパターンの薄毛を呈する現象のことである.ヒトの皮膚,脂腺系,毛包には5α-reductase(5αR)が存在する.これはtestosteroneをさらに活性の高いdihydrotestosterone(DHT)に変換するために必要な還元酵素である.酵素反応産物であるDHTはMPHLにおける軟毛化現象の発症に大きく関与している.5αRには2つのisoenzymeがあり,typeⅠは頭皮を含む全身の皮膚に分布し,typeⅡは毛包および前立腺に局在する.現在MPHLの治療薬として推奨されているfinasterideが5αR typeⅡの阻害剤であるのに対し,dutasterideはtypeⅠ,Ⅱの二重阻害剤で,前立腺肥大症の治療薬として開発された.dutasterideはfinasterideと比較してtypeⅡ5αRに対しては約3倍,typeⅠ5αRに対しては約100倍の阻害活性を示し,MPHLにおいてもその効果が期待されてきた.2006年のMPHLにおけるdutasteride第Ⅱ相試験では,dutasterideは用量依存的にDHTを抑制し,0.5mg/日投与は12週,24週の期間においてfinasteride 5mg/日に相当する増毛効果を示すと報告されている.本論文では,dutasteride 0.5mg/日内服の効果,安全性および忍容性を検討するために,ランダム化,二重盲検,プラセボ対照,第Ⅲ相試験を行った.18~49歳のMPHLの男性148名をdutasteride 0.5mg/日群73名,プラセボ群75名にランダム化し,6か月間の投与期間と4か月間の追跡期間を設定した.治療薬投与前(ベースライン)と3,6,10か月後の,hair counts,被験者の自己評価,および治験担当医師による写真を用いた評価でdutasteride群において有意に増毛効果を認めた.また,有害事象の発現率は両群とも同程度であり,治験薬との関連性ありと判断された有害事象の多くが性機能系の事象であったが,両群間に有意差はみられなかった.今後,さらに長期間におけるdutasterideの効果が評価され,MPHLに対するdutasrerideの有効性が確立されることが期待される.

文献紹介 DIHS/DRESSにおけるウイルス特異的T細胞の関与

著者: 足立剛也

ページ範囲:P.1083 - P.1083

 薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)は,欧州ではdrug reaction with eosinophilia and systemic symptoms(DRESS)として提唱されているが,その診断基準にはDIHSに特徴的とされるヘルペス属ウイルス再活性化の項目が含まれていない.この論文では,フランスのグループがDRESS患者40人を対象に,ウイルスとの関連を含めて検討を行った.

 DRESS患者においては,急性期におけるT細胞の増加,活性化が認められ,特に細胞障害性CD8陽性T細胞において,サイトカイン(IFNγ,TNFα,IL-2)の産生が上昇し,重症例においてより顕著であった.発症後3か月の時点でもこのサイトカイン産生は遷延しており,DIHS/DRESSにおいて遷延する臨床症状と相関する結果が得られた.

投稿規定

ページ範囲:P.1098 - P.1098

次号予告

ページ範囲:P.1100 - P.1100

あとがき

著者: 瀧川雅浩

ページ範囲:P.1102 - P.1102

 今年は,実に,自然が猛威をふるった年で,地震,津波,水害など自然災害が多発しました.自然災害と言っても,人災的な要素が多々あるわけです.しかし,実際は,さまざまな要因によりその要素の1つ1つを消していくことができなかった,その結果,自然災害が特殊な様相を帯びた,ということだろうと思います.さて,現在,国立大学法人では,病院の耐震補強工事が進行しています.国はおおよそ30年経ったコンクリート建物について改修工事を行うようです.1年に2~3大学病院の改修工事を始めるとなると,未来永劫に,毎年どこかの大学病院が耐震補強されていることになります.浜松医科大学附属病院も,2009年に新しい入院病棟ができました.免震構造になっているため,東海地震に十分耐えうるということです.現在それに続いて,外来棟の耐震補強・改修工事がスタートしました.外来診療をやりながら,つまり,居ながら工事なので,騒音・振動に耐えながら業務をしています.問題は,電気,水が配管されているところを工事しなければならないことで,想定外の人災が発生するかもしれません.まず,火災が一番心配なので,着工前に,京都の愛宕神社の「火迺要慎(ひのようじん)」と書かれた火伏札(ほとんどと言ってよいほど京都の家庭の台所に貼られている)をお参りがてら手に入れ,貼っています.着工間もなく,スプリンクラー破損のずぶぬれ事故が2回起きました.これはいかん! 水の神様を鎮めなくてはと,調べたところ,京都貴船神社が水の神様ということで,お札を追加しました.ついでに,電気もというわけで調べてみると,京都嵐山法輪寺の境内に電電宮があり,祀っている神様の名は電電明神.近いうちにお参りしようと思っています.とにもかくにも,無事工事が終わるように,神頼みしかありません.それにしても,京都にはありとあらゆる神様が御座しますね.

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P. - P.

臨床皮膚科 第65巻 事項索引

ページ範囲:P. - P.

臨床皮膚科 第65巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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