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特集 最近のトピックス2011 Clinical Dermatology 2011 2.皮膚疾患の病態
ステムセル・エイジング(幹細胞の老化)
著者: 奥山隆平1
所属機関: 1信州大学医学部皮膚科
ページ範囲:P.44 - P.48
文献購入ページに移動要約 組織が恒常性を維持するためには,各組織に存在する幹細胞(ステムセル)が安定して存在することが重要である.幹細胞は自己複製能を持つ未分化な細胞で,当初その増殖能は無制限であると考えられていた.しかし近年,幹細胞の増殖能にも制限があり,細胞分裂を起こすたびに老化(エイジング)が生じる場合のあることがわかってきた.幹細胞に生じる老化が,ステムセル・エイジングである.細胞の分裂回数を制限するテロメアの短縮という現象が,深く関与している.皮膚においては,表皮幹細胞においてテロメアが短縮してくると,必要時に幹細胞がニッチから移動できなくなることが観察されている.また,色素幹細胞においては,老化に伴って幹細胞数が減少し枯渇してしまうことが報告されている.ステムセル・エイジングの詳細はまだ解明が始まったばかりであるが,組織の老化に直結する事象であり,生体の老化にも深く関わる生命現象である.
参考文献
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