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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科65巻6号

2011年05月発行

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あとがき フリーアクセス

著者: 石河晃

ページ範囲:P.462 - P.462

文献概要

 いつかは来ると恐れていた大地震が3月11日,東日本を襲い,想定をはるかに越える津波により大変な被害を出しました.被災された皆様には心より哀悼の意を表します.この東日本大震災によって福島第一原発は,今なお,放射性物質を自然界に放出し,沈静化のめどすら立っていない状況です.大型漁船がビルの上に打ち上げられ,線路が飴細工のように曲がっている姿を目の当たりにすると,自然のエネルギーの猛威に比してわれわれの謳歌してきた文化の脆弱性を感じずにはいられません.原発が被災したことによって,被曝の危険にさらされ,また,通勤の足が奪われ,暖房,炊事,風呂焚きまでもがままならなくなります.これはわれわれがエネルギーに関して多様性を失いかけていたことへの警鐘でもあります.物流のグローバル化は小売店の在庫削減に大いに役立ちましたが,震災後の物不足は驚くばかりです.生物多様性の重要性は近年話題となっていましたが,文化の多様性を保つことはあまり重要視されていませんでした.情報のグローバリゼーションが進む世の中では,1つの発見や情報は瞬く間に世界中に広まり,次なる発明を生む原動力となっており,間違いなく人類の進歩に貢献してきました.しかし,有事の携帯電話システムの破綻は情報ツールの多様性が欠如している脆さをさらけ出しました.公衆電話の存在に感謝した人は何十万人もいると思います.多様性を保つことは非効率的ではありますが,危機の際にはむしろ強みにもなりえるものであり,決して蔑ろにしてはいけないものであることを再認識しました.数万個の遺伝子しか持たない人類は何兆種類もの抗体を作る巧みな仕組みを持っています.文化においてもグローバル化を進めつつ多様性を大切にすることも真剣に考えるときかもしれません.

 追伸

 2011年1月から「臨床皮膚科」編集委員に加えていただきました.どうぞ宜しくお願いいたします.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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