icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科65巻8号

2011年07月発行

文献概要

症例報告

右前胸部と左前腕の皮弁ドナー部に転移増殖を認めた右頰部原発Merkel細胞癌の1例

著者: 澤田昌樹1 榊原章浩1 杉浦一充1 横田憲二1 松本高明1 亀井譲2 藤本保志3 長坂徹郎4 富田靖1 秋山真志1

所属機関: 1名古屋大学医学部皮膚科 2名古屋大学医学部形成外科 3名古屋大学医学部耳鼻科 4名古屋大学病院病理部

ページ範囲:P.624 - P.628

文献購入ページに移動
要約 75歳,女性.既往に濾胞性リンパ腫.初診約2か月前,右下顎部に指頭大の紅色結節が出現した.近医受診し生検でMerkel細胞癌が疑われ,当院を紹介された.初診時,右頰部に33×43mmの皮下硬結とその中央に22×32mmのドーム状紅色結節を認めた.摘出術,再建術,右頸部リンパ節郭清術を施行した.摘出リンパ節はすべて腫瘍細胞陽性であり,頸部に残存リンパ節転移があると考え,術後より放射線照射を開始した.術後2か月目から両頸部腫脹と,前胸部deltopectoral皮弁ドナー部と左前腕部遊離皮弁ドナー部に指頭大紅色結節が出現し,生検にてMerkel細胞癌転移と診断した.CTにて多発肝転移も認めベプシド+パラプラチン療法を開始したが,3コース目でprogressive diseaseとなり中止し,その約1か月後に永眠した.皮弁ドナー部に沿った皮膚転移は,既に全身に非肉眼的に転移していた腫瘍細胞が,皮弁作成時の侵襲に対する創傷治癒機構の影響を受け増殖をきたした可能性があると考えた.

参考文献

1) Agelli M, et al:J Am Acad Dermatol 49:832, 2003
2) 中村智之,片野晴隆:ウイルス 59:37, 2009
3) 小野友道:Ⅱ. Merkel細胞癌,金原出版,p157, 2005
4) Longo MI, et al:Arch Dermatol 139:1587, 2003
5) Gould VE, et al:Lab Invest 52:334, 1985
6) 成澤 寛:癌と化学療法 37:634, 2010
7) FengH, et al:Science 319:1096, 2008
8) 日本皮膚悪性腫瘍学会(編).皮膚悪性腫瘍取扱い規約,2版,金原出版,p91, 2010
9) 藤原作平:西日皮膚 70:55, 2008
10) Brunner M, et al:Mod Pathol 21:876, 2008
11) Fernandez-Figueras MT, et al:Mod Pathol 20:90, 2007
12) Becker JC, et al:Cell Mol Life Sci 66:1, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?