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あとがき
著者: 渡辺晋一
所属機関:
ページ範囲:P.740 - P.740
文献購入ページに移動 最近テレビ番組に出演したが,その番組のおかげで,日本中から患者が殺到し,皮膚科の売り上げは上がったが,私自身の給料は上がらず,大変忙しい毎日である.今さらテレビに出たことを後悔しても始まらない.ところで全国から来院した患者の内訳は,メンタルな問題の患者,今の医学の治療では完治が困難な疾患もいたが,最も多かったのは不適切治療のため,良くならない湿疹・皮膚炎患者であった.そしてその全例がステロイドを保湿剤などで薄めて使用している患者で,なかには保湿剤を使用してからステロイドを混ぜたものを重層するように指導されている患者もいた.外用薬は直接皮膚に使用して薬効を発揮するものである.最近はディフェリンの外用前にも保湿剤を外用するなど,常識破りの治療法が蔓延している(日本では保湿剤がニキビ治療薬になっている!).アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)患者に対しては,皮膚の炎症を抑えることができる強さのステロイドを直接皮膚に外用することによって,1~2週間後には劇的に皮疹が軽快し,驚くほど患者さんから感謝される.その後はステロイドのランクを下げたり,外用回数を減らし,無治療の状態にもなっている.もちろんAD患者は,夏季とか冬季に再燃することはあるが,そのときの治療も容易で,1~2週間の治療ですむ.確かに掻破によって結節性痒疹になったものは,掻破行動をやめない限り良くならないが,湿疹病変の治療は簡単である.また顔面の湿疹病変の治療もプロトピックによって簡単となった.ステロイドの強いものから弱いものへのステップダウン法は内服ばかりでなく,外用でも当たり前の投与方法であるが,ステロイドを薄めて使用する治療法が日本で蔓延している.専門家(?)がそのように指導しているのか,メーカーの差し金か,あるいは簡単に良くなっては病院の収入が減るためなのかよくわからない.日本皮膚科学会はこの事実をどうとらえているのであろうか.最近の日本皮膚科学会が行った定点調査によると,日本では60歳以上のAD患者がAD患者全体の10%以上を占めるという.これも世界の常識とは異なるデータである.実際この間当科を訪れた65歳の患者は近医皮膚科で6年間ADということで治療を受けていたが,降圧剤による光線過敏症であった.
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