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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科66巻1号

2012年01月発行

文献概要

今月の症例

進行大腸癌患者にセツキシマブ投与中に生じたradiation recall dermatitis

著者: 西村(平井)千尋1 五味博子1 石井健1 早川和人1 東郷剛一2

所属機関: 1帝京大学ちば総合医療センター皮膚科 2帝京大学ちば総合医療センター第三内科

ページ範囲:P.14 - P.18

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要約 59歳,男性.進行大腸癌に対して7か月前からセツキシマブを週1回継続的に投与された.約3か月前から頸部・左腋窩リンパ節転移に対し,左頸部・左腋窩,右頸部の順で各々45Gyでの放射線治療を開始した.照射中,照射野に異常は認めなかったが,照射終了2~3週後より左頸部・左腋窩に照射部一致性の発赤,びらんが出現し,その後右頸部にも拡大した.皮疹は照射時期の順に(左頸部・左腋窩→右頸部)消退し,セツキシマブの再投与にても再発はみられなかった.照射中には皮疹を認めず照射終了2~3週後に照射部に一致して皮膚炎を認めたこと,またセツキシマブ以外に薬剤投与はないことから,自験例をセツキシマブによるradiation recall dermatitis(RRD)と診断した.分子標的薬によるRRDの報告は海外で4例のみと少ないが,今後増加することが予想される.RRDは,放射線照射終了後に投与された薬剤により惹起される急性皮膚炎であり,その機序として,照射部位における局所免疫反応が関与している可能性がある.また,原因薬剤の継続投与が症状の増悪因子となるとは一概には言えず,臨床現場においては当該科の主治医および患者と相談のうえ,治療方針を決定するべきである.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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