icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科66巻10号

2012年09月発行

文献概要

症例報告

褥瘡と誤認されていた左臀部線維粘液肉腫の1例

著者: 矢嶋萌1 上田美帆1 佐藤真美1 遠藤雄一郎1 谷崎英昭1 藤澤章弘1 谷岡未樹1 宮地良樹1

所属機関: 1京都大学大学院医学研究科皮膚科

ページ範囲:P.788 - P.792

文献購入ページに移動
要約 85歳,女性.2010年7月,当院他科入院時に看護師によって左臀部に3cm程度の皮膚病変を指摘された.担当医師に報告のうえ「肉芽良好な褥瘡」として対処された.皮膚科へのコンサルトはなかった.半年後に11cmにまで増大した腫瘤となり,大量出血をきたして当科を受診した.腫瘤は易出血性の辺縁不整な隆起性病変で,表面はびらん,色調は暗赤色であり,悪臭が著明であった.左鼠径部には9cm大のリンパ節転移も認めた.原発巣の組織像は,真皮乳頭層から皮下脂肪織まで異型の強い紡錘形細胞の浸潤性増殖を認め,粘液産生を伴って,奇怪な核を持った細胞と多角の異型細胞が多数出現していた.さらに免疫染色はビメンチンのみ陽性であり,病理診断は線維粘液肉腫であった.自験例では,看護師が肉芽良好な褥瘡と誤認したこと,担当医が皮膚科にコンサルトせず,そのまま経過したこと,経過がフォローされなかったことが重なり,線維粘液肉腫が褥瘡と誤認されていた.院内の褥瘡の管理にはさらなる啓発活動と適切な管理体制が必要である.

参考文献

1) 永井弥生:褥瘡会誌 13:1, 2011
2) 上原啓志,他:皮膚臨床 46:567, 2004
3) 三浦秀彦:北海道外科雑誌 53:90, 2008
4) 曽我部陽子:臨皮 54:829, 2000
5) 瀬川郁雄:西日皮膚 60:401, 1998
6) 笹岡竜次:皮膚臨床 36:283, 1994
7) 村上敬之:新潟整形外科研究会会誌 24:53, 2008
8) 山田智晃:東北整形災害外科紀要 32:201, 1988
9) Clarke LE, et al:J Cutan Pathol 35:935, 2008
10) 前田充秀,他:診断病理 22:284, 2005
11) Sanfilippo R, et al:Ann Surg Oncol 18:720, 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?