文献詳細
症例報告
文献概要
要約 39歳,男性.先天性水頭症の既往があった.2年前より左側頭部に黒色斑が出現した.増大し,出血も伴うようになったため受診した.初診時左側頭部に,径3cm,高さ1cmの表面の大部分はびらんし,辺縁は部分的に黒色調の広基有茎性腫瘤を認めた.病理組織像は基底細胞癌であった.他にも頭部,顔面に基底細胞癌が多発していた.掌蹠に小陥凹,顎骨囊腫,二分肋骨,大脳鎌の石灰化などを認めたため,母斑性基底細胞癌症候群(nevoid basal cell carcinoma syndrome:NBCCS)と診断した.家族に同症状はなかった.特にNBCCSで基底細胞癌が巨大化しやすいとはいわれていないが,自験例では発育が早いと推測された.自験例のように巨大化することを防ぐためには,早期の診断と治療が重要である.若年者のNBCCS患者の診断の契機となる受診理由は,多発性顎骨囊腫が多い.多発性顎骨囊腫を有する患者に基底細胞癌を認めた場合には,掌蹠小陥凹,奇形に留意する必要がある.
参考文献
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