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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科66巻12号

2012年11月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・63

Q考えられる疾患は何か?

著者: 伊藤友章

ページ範囲:P.937 - P.938

症例

患 者:80歳,男性.職種:農業従事者

主 訴:左大腿部,臀部の鱗屑を伴う紅斑

既往歴:1992年:胃潰瘍

家族歴:特記すべきことなし.

現病歴:50年前より左大腿部にわずかにかゆみを伴う紫紅色斑が出現したが放置していた.その後,紅斑は臀部と左下腿に拡大したため受診した.

現 症:左腰部から臀部,左大腿部,左下腿にかけて75×50cmの辺縁やや隆起性の境界明瞭な角化性紅斑局面を認めた.この局面は萎縮性の部分と鱗屑を伴う紅色疣状部分が混在していた(図1a,b).

症例報告

茶のしずく石鹸®以外の加水分解小麦含有石鹸を使用していた患者にみられた小麦アレルギーの1例

著者: 山本祐理子 ,   服部淳子 ,   峠岡理沙 ,   益田浩司 ,   千貫祐子 ,   森田栄伸 ,   加藤則人

ページ範囲:P.940 - P.943

要約 43歳,女性.2009年より加水分解小麦含有の美容石鹸(サヴォンアンベリール®,株式会社コスメナチュラルズ)を使用していた.2011年1月頃より洗顔後の顔面の掻痒感を自覚したが,使用を継続していた.同年3月に食パンを摂取し,歩行約1時間半後に,眼瞼浮腫や呼吸困難感が出現した.抗原特異的IgE検査ではIgE(RAST)小麦19.50UA/ml,グルテン28.90UA/ml,ω-5グリアジン0.48UA/mlであった.プリックテストでは加水分解小麦(グルパール19S)0.01%で陽性であった.食パン55g負荷による運動誘発試験は陰性であったが,小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの可能性が高いと考えた.小麦アレルギーの感作経路として石鹸に含有される加水分解小麦が疑われた.加水分解小麦による小麦アレルギーは茶のしずく石鹸®以外でも生じうるため注意が必要である.

ピルフェニドンによる光線過敏症の2例

著者: 仙崎聖子 ,   広瀬憲志 ,   石上剛史 ,   村尾和俊 ,   久保宜明 ,   西岡安彦

ページ範囲:P.945 - P.948

要約 症例1:67歳,男性.特発性肺線維症の治験に参加しピルフェニドン(ピレスパ®,600mg/日,3×毎食後)の内服開始約2か月半後に項部から両側頸部,前胸部,手背に紅斑が出現した.症例2:75歳,男性.特発性肺線維症にてピルフェニドン600mg/日の内服を開始,内服量は徐々に増量した.約2か月半後,1,800mg/日内服中に顔面全体,頸部全周,前胸部,両側前腕から手背に浸潤の強いびまん性の紅斑が生じた.特徴的な皮疹の分布と日光への曝露歴より両症例ともピルフェニドンによる光線過敏症と診断した.ピルフェニドンの内服を,前者は継続,後者は一時的に休薬し遮光の徹底と抗ヒスタミン剤の内服,ステロイド外用にて皮疹は軽快した.ピルフェニドンは基本的には光毒性を引き起こし,約半数に光線過敏を生じるため注意を要する.

デュタステリドによる女性化乳房の2例

著者: 林光葉 ,   小林光 ,   伊東慶悟 ,   谷戸克己 ,   石地尚興 ,   上出良一 ,   中川秀己

ページ範囲:P.949 - P.954

要約 症例1:72歳,男性.初診の3か月前より前立腺肥大症に対しデュタステリド0.5mg/日の内服を開始した.その2か月後から両側乳頭部に疼痛が出現し,初診時両側乳輪部に有痛性の皮下硬結を認めた.超音波検査で両側乳頭直下に円盤状の低エコー像を認め,女性化乳房を疑った.内服中止し,約1週間で乳頭部の疼痛は軽減した.病理組織像では乳管上皮の増生や断頭分泌を伴うアポクリン化生を認めた.症例2:83歳,男性.初診の3か月前より前立腺肥大症に対しデュタステリド0.5mg/日の内服を開始した.その1か月後から両側乳頭部に硬結が出現し,初診時両側乳輪部に有痛性の皮下硬結を認めた.超音波検査で円盤状の低エコー像を認め,女性化乳房を疑った.内服中止後約1週間で乳頭部の疼痛は軽減したが,皮下硬結は4か月後も残存していた.病理組織像では乳管上皮の増生を認めた.5α還元酵素阻害剤の副作用としての女性化乳房は広く認識されるべきである.

マイコプラズマ感染の関与が考えられた皮膚型結節性多発動脈炎―当教室症例の検討

著者: 牛込悠紀子 ,   水川良子 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.955 - P.959

要約 20歳,女性.咳嗽出現の約2か月後に両下腿に皮疹が出現し当科を受診した.血液検査所見と病理組織所見より,皮膚型結節性多発動脈炎(cutaneous polyarteritis nodosa:CPN)と診断した.下肢安静のみにて第50病日に軽快した.初診時のマイコプラズマ抗体IgMは陽性,PA 160倍,CF 32倍と上昇していた.あわせて,その後の抗体価の有意な変動より,マイコプラズマ感染が誘因となったCPNと考えられた.マイコプラズマによるCPNの臨床的特徴を明らかにするために,当教室のCPN症例をマイコプラズマIgM陽性群と陰性群に分けて比較検討した.陽性群は若年発症で夏季に発症しやすく,比較的軽症であった.陽性群のうち,感冒症状が先行した症例は1例のみであった.マイコプラズマ感染はCPNの誘因となりうるが,感冒症状に乏しく見逃されている可能性がある.

眼底綿花様白斑を合併した全身性エリテマトーデスの1例―眼合併症と疾患活動性との関連性に関する検討

著者: 杉生真帆 ,   青山裕美 ,   梶田藍 ,   竹島千夏 ,   濱田利久 ,   松尾俊彦 ,   赤塚俊文 ,   岩月啓氏

ページ範囲:P.960 - P.964

要約 24歳,女性.両頬の蝶形紅斑と抗核抗体陽性により精査加療目的で当院を受診した.他臓器病変は認めなかった.全身性エリテマトーデス(systemic lupns erythematosus:SLE)と診断しステロイド治療を開始した.順調にテーパリングを行っていたが,治療開始から4か月後に突然眼のかすみと視力低下を自覚し,眼底に綿花様白斑を認めSLE網膜症と診断された.このとき,皮膚症状は改善し血液データの変動もなかった.SLEのさまざまな眼合併症は,通常はSLEの病勢と一致して出現するが,過去9年間の当院のSLE患者の眼合併症の検討では,必ずしも皮膚症状や血液検査データにおけるSLEの病勢とは一致していなかった.SLEの眼合併症を皮疹や臨床検査値などから予測することは困難だが,放置していれば重篤な視力障害につながる危険が高く,注意すべき合併症である.

Churg-Strauss症候群の多発単神経炎に対し,免疫グロブリン大量静注療法が有効であった1例

著者: 渡辺さゆり ,   岡本崇 ,   安藤典子 ,   原田和俊 ,   川村龍吉 ,   柴垣直孝 ,   島田眞路

ページ範囲:P.965 - P.968

要約 57歳,男性.2006年に気管支喘息を発症した.2009年10月より両下肢の痺れ,疼痛がみられ,11月より両下腿に紫斑,血疱,潰瘍が出現した.末梢血で好酸球の著明な上昇(白血球分画:39%)を認めた.病理組織学的所見にて,好酸球の組織内浸潤がみられたことから,Churg-Strauss症候群(Churg-Strauss syndrome:CSS)と診断した.ステロイド加療にて皮疹は速やかに消退したが,多発単神経炎が残存した.ステロイド抵抗性の多発単神経炎に対し,免疫グロブリン大量静注療法(400mg/kg/日,5日間)を試みたところ,痺れや疼痛の著明な改善を認めた.今後,ステロイド抵抗性の末梢神経障害を有するCSS患者には,免疫グロブリン大量静注療法を考慮すべきと考える.

成人型全身性肥満細胞症の1例

著者: 内山明彦 ,   須藤麻梨子 ,   長谷川道子 ,   永井弥生 ,   石川治

ページ範囲:P.969 - P.973

要約 32歳,男性.初診4年前より背部に褐色斑が出現し次第に増数した.初診時,全身に半米粒大までの淡紅褐色斑,丘疹が多発し,Darier徴候陽性であった.生検病理組織像では真皮上層に胞体内に好塩基性の顆粒を持ち,トルイジンブルー染色で異染性を示す細胞が多数浸潤していた.全身精査を行ったところ,消化管粘膜に肥満細胞の浸潤がみられ,全身性肥満細胞症と診断した.成人発症例に多く認めるc-kit遺伝子異常はなかった.自験例では全身症状は伴わなかったが,今後さまざまな臓器症状を呈する可能性があり,注意深く経過観察する必要があると考えた.

PETで集積像を呈した色素性エクリン汗孔腫の1例

著者: 林裕嘉 ,   小林憲 ,   石崎純子 ,   田中勝 ,   山田泰史 ,   林光俊 ,   町田治彦 ,   藤林真理子

ページ範囲:P.974 - P.978

要約 72歳,男性.初診約10年前より徐々に増大した左側腹部の結節.2011年7月呼吸不全で当院内科に入院し,当科を受診した.現症:左側腹部に28×25mm大,表面淡紅色調と黒褐色調の有茎性結節が存在した.ダーモスコピーでは淡紅色の背景に白色網目構造,一部多発性色素沈着がみられた.エクリン汗孔腫と診断し手術は後日としたが,呼吸不全の原因が肺癌と判明し,内科で各種画像検査が施行された.PET/CTで同結節に集積像を認め,皮膚転移が疑われ再度当科依頼,切除し組織学的に検討した.HE染色でcuticular cell,poroid cellからなる腫瘍であり,エクリン汗孔腫と診断した.FDG-PETは,FDGを使用し悪性腫瘍を判定する検査であるが,FDGは一部の皮膚良性腫瘍や炎症性疾患でも集積する.PETで集積像を呈しても,必ずしも悪性疾患でないことを認識する必要がある.

太田母斑の雪状炭酸圧抵療法後に生じた多発性基底細胞癌の1例

著者: 尾藤三佳 ,   和田誠 ,   益田浩司 ,   竹中秀也 ,   加藤則人

ページ範囲:P.979 - P.983

要約 62歳,女性.生下時より右頰部に太田母斑があり,4歳頃から7歳の期間に右頰部全体に週1回の雪状炭酸圧抵療法を施行された.約6年前より右頰部に爪甲大の黒色結節が出現した.放置していたところ徐々に拡大してきたため,2009年3月当科を受診した.初診時,右頰部の太田母斑上に,中央に16×10mmの潰瘍を伴う28.5×16mmの灰黒色結節を認めた.また右頰外側と右内眼角,右鼻翼部に数mmの黒色小結節を認めた.臨床的に基底細胞癌を疑い,右頰部の太田母斑上の灰黒色結節と右内眼角の黒色小結節より皮膚生検を行ったところいずれも基底細胞癌と診断した.また右側顔面の真皮全層に膠原線維の増生と肥厚を伴っていたため雪状炭酸圧抵療法後の瘢痕に生じた多発性の基底細胞癌と考えた.

多発性骨髄腫に伴った続発性皮膚形質細胞腫の2例

著者: 林良太 ,   高塚純子 ,   竹之内辰也 ,   五十嵐夏恵 ,   廣瀬貴之 ,   今井洋介 ,   石黒卓朗 ,   張高明 ,   根本啓一

ページ範囲:P.985 - P.988

要約 症例1:66歳,男性.左上腕骨初発のIgA-λ型多発性骨髄腫.レナリドミド25mg/日内服による治療中に両下肢に紅色結節が多発し,血行転移による続発性皮膚形質細胞腫と診断した.ボルテゾミブ(2mg),デキサメタゾン(20mg)大量療法で皮疹は消失し寛解状態であったが,サイトメガロウイルス肺炎により皮疹出現後9か月で死亡した.症例2:78歳,女性.左上腕骨病変で発症した非分泌型の多発性骨髄腫.上腕骨切除創周囲に紅色結節が多発し,骨病変からの直接浸潤による続発性皮膚形質細胞腫と診断した.自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(メルファラン100mg/m2)によって皮疹は速やかに消失したが,皮疹出現後3か月で死亡した.多発性骨髄腫の皮膚転移は稀で,出現後の予後は不良であるとされている.しかし,新規分子標的薬の導入に伴って今後は予後因子としての位置付けも大きく変動していく可能性がある.

白癬疹を伴ったTrichophyton tonsuransによるケルスス禿瘡の1例

著者: 高村さおり ,   吉田沙知子 ,   伊崎誠一 ,   寺木祐一

ページ範囲:P.989 - P.992

要約 8歳,男児.防具を使用する空手歴がある.初診の2か月前より左頭部の脱毛が出現し,ステロイドおよび抗真菌薬外用で治療されていたが,頭部の皮疹は拡大し,発熱とともに全身に掻痒性丘疹が多発した.頭部毛髪のKOH検鏡では糸状菌は陰性であった.病巣毛の真菌培養では,巨大培養で表面白色,裏面黄褐色調のコロニー形成と,スライドカルチャーで菌糸の側方にゴマ粒様の小分生子を認めた.塩酸テルビナフィン内服により頭部の皮疹は徐々に改善,またステロイド外用の併用により全身の掻痒性丘疹は速やかに消退した.以上より,白癬疹を伴ったTrichophyton tonsuransによるケルスス禿瘡と診断した.自験例では頭部の広い範囲に強い炎症反応を伴った病変がみられたため,T. tonsuransに対する遅延型反応が誘導され,白癬疹が生じたと考えた.

モルモットから感染したArthroderma benhamiaeによる体部白癬の姉妹例

著者: 小林博人 ,   竹田公信 ,   安澤数史 ,   望月隆 ,   石崎宏

ページ範囲:P.993 - P.998

要約 症例1:27歳,女性.5年前からモルモットを飼育している.初診半年前に新たにモルモットを1匹購入した.そのモルモットに脱毛病巣が出現した.初診の3週前,左前腕に紅斑が生じて受診,ステロイド薬を外用していたところ,20日後の再診時には皮疹が拡大しており,直接鏡検で真菌陽性であったため,体部白癬と診断した.抗真菌薬の8週間の外用で治癒したが,2か月後,左上肢に紅斑の新生があり,抗真菌薬の内服を行った.症例2:25歳,女性(症例1の妹).姉の受診の10か月後,右下顎と右下腿に落屑性紅斑を認めた.直接鏡検陽性で体部白癬と診断し,抗真菌薬の8週間の外用で治癒.症例1,2,モルモットから分離された菌は交配試験でArthroderma benhamiae Americano-Euro-pean race(-)株と同定した.ITS領域のPCR-RFLP法でもA. benhamiae Americano-European raceのタイプ株と同一のパターンを示した.本菌の家族内発生は時期を隔てて生じ,症例1の治療時に動物の治療が行われていれば症例2の発症は防げたかもしれない.

B群β溶血性連鎖球菌が検出された壊死性筋膜炎の1例

著者: 吉方佑美恵 ,   菊池荘太 ,   松尾光馬 ,   石地尚興 ,   中川秀己

ページ範囲:P.999 - P.1003

要約 50歳,男性.35歳時より2型糖尿病を指摘されていたが,5年前より糖尿病治療薬内服を自己中断していた.初診の5日前より右足背部に疼痛を伴う紅斑が出現した.近医を受診し,シプロフロキサシン500mg/日を処方されたが紅斑は急激に拡大し,一部に水疱が出現したため当科を受診した.激痛を伴い採血でWBC 14.5×103/μl,CRP 29.64mg/dlと炎症反応が高値なこと,CTでは全周性の軟部組織の腫脹が認められたため,壊死性筋膜炎と診断しデブリードマンを施行した.創部からはB群β溶血性連鎖球菌(以下,B群連鎖球菌)が検出された.アンピシリン/スルバクタム3g×4/日の投与を開始した.術後24日目で分層植皮術を行い創部は上皮化した.糖尿病合併者の壊死性筋膜炎は,進行は緩除なことが多いが重篤になりうるため,診断,治療が遅れないように,注意を要する.

BCG接種後に生じた皮膚腺病の1例

著者: 西田圭吾 ,   杉山亜希子 ,   長縄真帆 ,   満間照之

ページ範囲:P.1005 - P.1008

要約 8か月,男児.生後4か月時に左上腕にBCG接種を受けた.接種1か月後より左腋窩に赤色の結節を認め,約4か月後に自壊排膿した.病理組織学的に乾酪壊死を伴う類上皮細胞性肉芽腫を認め,その周囲にはLanghans型巨細胞が浸潤していた.Ziehl-Neelsen染色では抗酸菌は陰性であった.穿刺液のPCR法結核菌検査は陰性であったが,穿刺液の抗酸菌培養にてコロニーの形成を認め,PCR法にてMycobacterium tuberculosis complexと同定した.さらに,遺伝子解析によりウシ型結核菌(Mycobacterium bovis BCG)であることを確認した.クオンティフェロン検査は陰性であった.臨床所見と併せてBCG接種による皮膚腺病と診断した.イソニアジド10mg/kgを4か月経口投与し結節は縮小,瘢痕化した.結核予防法の改正に伴い乳児への接種機会が増え,BCGの副反応の報告例が増えており,今後も注意する必要がある.

全身性エリテマトーデス患者に生じたmetastatic tuberculous abscessの1例

著者: 清水裕希 ,   水野麻衣 ,   坂井浩志 ,   調裕次

ページ範囲:P.1009 - P.1013

要約 70歳,女性.44歳時に全身性エリテマトーデスを発症しプレドニゾロン5~15mg/日で加療中である.左前腕に発赤,疼痛を伴った硬結が出現し,その後右第2・4指の発赤,腫脹もみられるようになった.前腕の紅斑部の生検で真皮全層および皮下組織にリンパ球,組織球を中心とする細胞浸潤,類上皮細胞肉芽腫,壊死,膿瘍が認められた.抗菌剤,抗真菌剤,プレドニゾロン増量にて加療したが奏効しなかった.クオンティフェロン試験陽性,組織からの培養,PCR法にて結核菌が証明された.Ziehl-neelsen染色で組織に抗酸菌を認め,metastatic tuberculous abscessと診断した.本疾患は免疫不全患者でみられる真性皮膚結核の1つで,しばしば他の感染症と誤診され診断が遅れることがある.SLE患者のような免疫不全患者で多発性の発赤や硬結をみたときには本疾患を考慮する必要がある.

治療

NiTi形状記憶合金製矯正器具による巻き爪の治療

著者: 林美穂 ,   高橋英至 ,   張本敦子

ページ範囲:P.1015 - P.1020

要約 今回われわれは形状記憶合金(NiTi)を用いたステント状の矯正器具による巻き爪の治療を行い良好な結果を得た.形状記憶合金(NiTi)は医療用材料としての安全性が確認されているが加工性が悪く,今回初めて矯正器具を作成することができた.矯正器具は爪甲遊離縁を上下から挟みこむようにして装着するため従来の巻き爪治療法と比較しても簡便,低侵襲である.今後の巻き爪治療の新たな選択肢としてきわめて有用であると考えたのでここに報告する.

これすぽんでんす

「左臀部に生じた単発型表在性皮膚脂肪腫性母斑の1例」(臨皮66:235, 2012)の診断名について/診断名の疑義に対する回答/編集委員会からのコメント

著者: 乃木田俊辰 ,   川島眞 ,   平林恵 ,   帆足俊彦 ,   渡辺晋一

ページ範囲:P.1022 - P.1023

 平林ら1)の症例報告「左臀部に生じた単発型表在性皮膚脂肪腫性母斑の1例」について,私見を述べさせていただきます.

 本邦教科書の表在性皮膚脂肪腫性母斑の臨床写真を調べると,『皮膚科学』第9版(大塚藤男)2)では,古典型の多発性結節局面の臨床像を提示し,『標準皮膚科学』第9版(瀧川雅浩編)3)では,単発型を提示しており,教科書でも,いまだに古典型と単発型を同一疾患として記述され,疾患概念が混乱している.

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欧文目次

ページ範囲:P.935 - P.935

文献紹介 IVIgはCD22を介してBCRシグナルを調整し,ヒトB細胞のアポトーシスを誘導する

著者: 種本紗枝

ページ範囲:P.968 - P.968

 IVIgは川崎病,ギランバレー症候群,特発性血小板減少性紫斑病などの治療に使われているが,作用機序については詳細がわかっていない.B細胞にはB細胞レセプター(B-cell receptor:BCR)からのシグナルを制御するレセプター(例:CD22)が存在している.この論文ではヒトB細胞を用いてIVIgがBCRシグナルとB細胞アポトーシスにどのように関与しているかを検証している.

 まず,リンパ腫細胞株,末梢血中B細胞,扁桃腺B細胞に,IVIgを加えて培養したところ,IVIgが濃度および時間依存的にB細胞のアポトーシスを引き起こすことが示唆された.さらに,IVIgをFITCで,CD22をTRITCで標識しB細胞上での局在を調べた実験では,B細胞上のCD22とIVIgの局在が一致しており,特にシアル酸修飾型のIgG syalated IVIg(IVIg SA+)が,CD22に作用してB細胞のアポトーシスを誘導していることが示唆された.また,B細胞を抗IgM抗体でコートされたビーズで活性化させ,IVIgと培養すると,BCRシグナル経路上の分子であるSHP-1の発現が誘導された.SHP-1はBCRからの活性化シグナル伝達分子であり,IVIgがCD22を介してSHP-1を誘導する機序が解明された.さらに,本論文ではIVIgが細胞周期(特にG1期)に関係するp38,ERK1,p27,caspase3/9のリン酸化を引き起こし,結果,B細胞のアポトーシスを誘導することが示されている.

書評 ―編:日本フットケア学会―フットケア 基礎的知識から専門的技術まで 第2版

著者: 佐藤エキ子

ページ範囲:P.1014 - P.1014

 2006年の初版から満を持して,『フットケア 第2版』が出版されました.本書はまさにフットケアに必要な情報(製品)のすべてが網羅(品揃え)されている“フットケアの総合商社”と言ってもよいでしょう.それだけ内容が充実しているのです.例えば,フットケアの基礎知識・診断をはじめ,検査・評価法,専門的ケア,治療技術,ライフステージに合わせたケアや靴の選び方,そして社会的支援の活用方法まで,それぞれの専門家によってわかりやすく解説されています.本書一冊でフットケア初心者の読者も,明日からのフットケアが楽しく実践できること間違いなしです.

 さて,私事で恐縮ですが,私がフットケアの重要性を認識したのは今から28年前の1984年でした.当時,私は米国のETスクールでETナース(現在の皮膚・排泄ケア認定看護師の前身)の研修をしていました.そこで初めて“フットケア”の概念とハウツーを学びました.それまではフットケアと言えば,まずは足浴と爪切りを思い浮かべたものですが,フットケアは局所管理だけではなく,慢性疾患の管理を含む全身管理が必要であるということに気付かされました.

書評 ―編:岡田 定,堀之内秀仁,藤井健夫―あなたへの医師キャリアガイダンス

著者: 市村公一

ページ範囲:P.1021 - P.1021

 この本は聖路加国際病院の,年代もさまざまな50名のOB・OGの先生方が,医師を志した理由から学生時代の思い出,研修病院を決めた経緯,実際に経験した研修の感想,その後の進路を決めた理由と現職への思い,そして最後に後輩へのアドバイスを書かれたものを,医学部卒業年次の若い方順にまとめられたものだ.こうした本が商品として成り立つこと自体,「聖路加」のブランド力の証であろうが,そのブランド力を育て,維持発展させてこられたのが,ここに登場される先生方ご自身でもあろう.

 私は卒後研修必修化前の2003年,当時の研修実態を探ろうと全国25ヶ所の病院を回り,『臨床研修の現在』(医学書院)という本にまとめたが,その際最初に訪問した聖路加国際病院の様子は今も鮮明に記憶している.循環器,呼吸器,内分泌などさまざまな疾患の患者を集めた混合病棟を3年目のレジデントをリーダーにきっちりした屋根瓦式のチームで診る.その体制はもちろんだが,看護師や薬剤師も交えた毎朝のミーティングや,知識と技能の伝授の場として充実した回診など,まさに理想的な研修の場だと感じたものだった.あの厳しく充実したトレーニングで鍛えられたからこそ,ここに登場される先生方の今があるのだとも思う.

次号予告

ページ範囲:P.1025 - P.1025

投稿規定

ページ範囲:P.1026 - P.1027

あとがき

著者: 瀧川雅浩

ページ範囲:P.1028 - P.1028

 小さいときから絵を描くことが好きで,家中あちこちに絵の落書きをするので,困った母親が「ここに好きなように描きなさい.他は駄目です」と,小さな押し入れの壁をくれました.一日中,そこで,絵を描いていたようです.そういうわけで,今でも時々絵を描きます.浜松に着任した頃,東部支部総会(山田瑞穂会頭)のArt展示コーナーに数枚の絵を出品しました.その中で,「American Dream」と題してハンバーガーとアメリカ国旗を描いた絵はSteve Katz先生にえらく気に入ってもらいました.最近では,旧宝塚線廃線跡に孫たちとピクニックに行き,大変楽しかったものですから,その風景を何枚か絵にし,文章もつけて,絵本を作りました.ところで,母親は90歳で元気にしているのですが,その母親が「こどものときに描いた絵が出てきたよ」と,紙袋に入った絵をドッサと手渡してくれました.数年前のことです.すべて4,5歳から小学校低学年の間に描いた絵で,ほとんどがクレパス仕立て,数えてみると,40枚近くあります.幼稚園生になった頃から3年間,芦屋に在住だった伊藤継郎画伯の絵画教室に通いました.絵を描いていると,伊藤先生が「ここは,こういう色でぬりなさい」とか,「影はこういう風につけましょう」と,いろいろ教えていただいたことを覚えています.出てきた絵はその頃に描いたものがほとんどでした.このたび病院外来棟改修で,病院長室など管理部がある4階が新装になりました.ただ,壁が白で,いかにも殺風景.そうだ,この絵をディスプレイしようと思い立ちました.エレベーターを挟んで,勝手にEast Wing,West Wingと名付け,ギャラリーたきがわができあがりました.お気に入りの30点ほどを展示しています.ギャラリー入場料は無料です.おひまなときに,いつでもどうぞ!

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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