icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科66巻13号

2012年12月発行

文献概要

症例報告

ソラフェニブによるびまん性色素脱失の黒人男性例

著者: 高坂美帆1 谷戸克己1 太田有史2 上出良一1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学附属第三病院皮膚科学講座 2東京慈恵会医科大学附属病院皮膚科学講座

ページ範囲:P.1043 - P.1046

文献購入ページに移動
要約 フォトスキンタイプVIの45歳,黒人男性.腎細胞癌の脳転移,肺転移に対して2010年9月よりソラフェニブ(ネクサバール®)1回400mg 1日2回経口投与が開始された.内服開始10日後より全身の皮膚色の淡色化を自覚するようになった.ソラフェニブによるびまん性色素脱失と考えた.手足症候群も出現した.手足症候群はステロイド外用にて軽快した.ソラフェニブは12か月間内服したが腫瘍増大傾向のため中止された.皮膚の色調は内服終了後,徐々に回復した.ソラフェニブが,メラニン合成に関与するc-KITを阻害することで,皮膚の色素脱失が生じたと考えた.現在,海外では他のマルチキナーゼ阻害剤であるイマチニブ,スニチニブでの色素脱失の報告はあるが,ソラフェニブでの報告はまれである.本症例はマルチキナーゼ阻害剤がメラノサイトに与える影響や,c-KITの果たす役割を考えるうえで重要であると思われた.

参考文献

1) 大江秀一,他:日皮会誌 120:2015, 2010
2) 松本玲子,他:臨皮 65:127, 2011
3) 牛込悠紀子,他:臨皮 65:106, 2011
4) Spritz RA:J Invest Dermatol 103(Suppl):137S, 1994
5) 玉置邦彦(編):最新皮膚科学大系,第8巻,中山書店,p2, p151, 2002
6) Cario-André M, et al:Br J Dermatol 155:493, 2006
7) Tsao AS, et al:Cancer 98:2483, 2003
8) Grossman WJ, Wilson DB:J Pediatr Hematol Oncol 26:214, 2004
9) Hartmann JT, Kanz L:Arch Dermatol 144:1525, 2008
10) Rosenbaum SE, et al:Support Care Cancer 16:557, 2008
11) Lee WJ, et al:Br J Dermatol 161:1045, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?