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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科66巻13号

2012年12月発行

文献概要

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あとがき

著者: 石河晃

所属機関:

ページ範囲:P.1120 - P.1120

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 今般,欧米の皮膚科関係学術雑誌においては症例報告が掲載されることがどんどん少なくなっています.これは国際雑誌がインパクトファクター(impact factor:IF)という,掲載論文が何回他の論文に引用されたかをもとに算出される定数によって評価されることが最大の要因と思われます.すなわち論文内容に一定以上の新規性がなければ,後に引用される可能性は低く,きわめて珍しい症例,診断に苦慮した教訓的な症例の報告などはIF計算の分母(論文掲載数)を増やす要因にこそなれ,IFの分子(引用回数)を増やすには役に立たないと考えられてしまうからです.IFの高い雑誌には良い論文が集まり,研究者も執筆した論文掲載誌のIFの合計により評価されているのが現状です.この風潮に反対する動きもあり,IF以外の評価尺度も考えられてはいますが,IFはいまだに最も普及した雑誌の「偏差値」です.

 では症例報告にはどんな意義があるのでしょうか.もちろん新しい治療法,新しい診断方法,新しい疾患概念など,新規性があればすばらしい.そこまでの新規性のない症例はどうでしょう.このような症例報告は読者が皮膚科診療の疑似体験をすることにより皮膚科医としての経験値を上げることに意義があると考えています.したがって,典型的ではあるが非常に稀で通常なかなか経験できない症例,稀ではないが非典型的で診断に苦慮した症例,典型的症例で診断は容易であったが想定外の経過をたどった症例,意外なものが原因であった症例などはとてもよい対象です.これらの症例には必ずその症例を通して勉強させられたことがあるはずですので,これをぜひ,臨場感をもって記述していただきたいと思います.一方で,自分の主張を展開することに一生懸命になりすぎると,診断の精度を高めることを忘れがちなのでご注意を.『多発性~の単発例』,『△への分化を伴った~症例』,『○○が奏効した~症例』.キャッチーなタイトルですがその診断(~)は本当でしょうか? 診断根拠を明確にし,考えうる鑑別診断を丁寧に否定していなければそのままでは掲載は困難です.読者の皆様の経験値を上げるような症例の投稿をお待ちしております.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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