臨床皮膚科66巻5号

2012年04月発行

特集 最近のトピックス2012　Clinical Dermatology 2012 5．皮膚科医のための臨床トピックス

フィナステリドの男性型脱毛に対する効果に体毛の濃さは関係するか？

著者： 稲冨徹¹ 福地君朗¹ 三上正憲² 小松崎早子³

所属機関： ¹日本大学医学部皮膚科 ²三上皮膚科クリニック ³開智学園

ページ範囲：P.161 - P.163

要約　背景：フィナステリド(プロペシア^®)はテストステロンがジヒドロテストステロンに変換されるのを阻害することで，男性型脱毛(androgenic alopecia:AGA)に対し有効性を示す．方法：フィナステリド内服歴が6か月以上の成人男性AGA患者34例を対象に，内服による頭毛，体毛の変化についてアンケート調査した．結果：平均年齢は44歳，フィナステリドの平均内服期間は1mg/日×18か月であった．体毛が濃いと感じているのは対象患者群の50%に当たる17例であり，濃い部位は下腿や髭が多かった．AGAへの効果は，やや改善以上が全体で34例中21例，62%だった．やや改善以上の比率を体毛の濃さによって比較すると，濃い群では15/17例(88%)だったのに対し，薄い群では6/17例(35%)と有意差をもって濃い群でフィナステリドの有効性が高かった．フィナステリド内服によって体毛への影響を感じた患者はいなかった．結語：AGA患者の約半数は髭やすね毛が濃く，またそれらの体の濃いほうがフィナステリドのAGAに対する有効性が高い．

参考文献

1) Andersson S:Eur J Dermatol 11:293, 2001

2) Stough DB, et al:Eur J Dermatol 12:32, 2002

3) Inadomi T:Int Dermatol (submitted)

4) 川島　眞，他：臨皮 60:521, 2006

5) Kaufman KD, et al:J Am Acad Dermatol 39:578, 1998

6) 宮倉　崇，他：日皮会誌 118:213, 2008

7) Camacho FM, et al:Br J Dermatol 158:1121, 2008

8) Russell DW, et al:Annu Rev Biochem 63:25, 1994