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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科66巻8号

2012年07月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・59

Q考えられる疾患は何か?

著者: 猪熊大輔

ページ範囲:P.561 - P.562

症例

 患 者:70歳,男性

主 訴:右足背から内側にかけての自覚症状を伴わない皮疹

既往歴:糖尿病,慢性腎不全,狭心症

家族歴:特記すべきことなし.

現病歴:初診の10年くらい前に右足の内側に皮疹が出現し,その後,徐々に右足背にまで拡大した.

現 症:右足背から内側にかけて,不整形の赤褐色局面と境界不明瞭な褐色斑が散在性に認められた(図1).

今月の症例

抗KS抗体陽性の抗ARS抗体症候群の1例

著者: 山名やよい ,   石黒直子 ,   出雲雄大 ,   濱口儒人 ,   藤本学 ,   加治賢三 ,   川島眞

ページ範囲:P.564 - P.568

要約 38歳,男性.間質性肺炎に対するプレドニゾロン(PSL)を15mg/日に減量中,間質性肺炎の増悪とともに蝶形紅斑が出現した.その他の皮疹,筋・関節症状はなかった.皮疹の病理組織像では真皮全層に浮腫と血管・付属器周囲性にリンパ球,組織球を主体とする炎症細胞浸潤を認めたが,液状変性はなかった.蛍光抗体直接法にて表皮真皮境界部の一部にIgGが沈着していた.抗核抗体は40倍(細胞質型)で,抗DNA抗体,補体に異常はなかった.アルドラーゼ,CKは正常範囲内であったが,蝶形紅斑は皮膚筋炎に伴うものと判断し,免疫沈降法で抗KS抗体を検出したことも合わせ抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体症候群と考えた.PSL 40mg/日に増量し,皮疹,間質性肺炎は軽快している.本抗体陽性例では間質性肺炎が先行し,典型的な皮膚筋炎の症状を呈さない症例が多く,留意する必要がある.

症例報告

抗上皮成長因子受容体抗体薬による長睫毛症の1例

著者: 大森俊 ,   小林美和 ,   中村元信

ページ範囲:P.569 - P.572

要約 68歳,男性.2008年12月,大腸癌(Stage IV)に対しS状結腸切除術および化学療法(FOLFOX6,FOLFIRI療法)が施行された.その後,転移巣の増悪に伴い2010年11月よりセツキシマブ(250mg/m2:2週間ごと)・FOLFIRI併用療法が開始となった.セツキシマブ投与3週間後より皮膚障害として爪囲炎,痤瘡様発疹がみられた.2011年5月からはパニツムマブ(6mg/kg:2週間ごと)・FOLFIRI併用療法に変更となり,その4週間後より睫毛が伸長してきた.経過より抗上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)抗体薬による長睫毛症と診断した.抗EGFR抗体薬による皮膚障害として爪囲炎,痤瘡様発疹は広く知られている.しかし,長睫毛症はまだ認知に乏しいと思われ,周知が必要である.

高度の粘膜症状を伴った多発型固定薬疹の1例

著者: 西村(平井)千尋 ,   五味博子 ,   石井健 ,   早川和人

ページ範囲:P.573 - P.578

要約 41歳,男性.腹痛に対してSG配合顆粒®を内服3時間後に口唇の腫脹が生じ,その後38℃の発熱と口唇・外陰部のびらん,軀幹,四肢に紅斑,紫褐色斑が出現した.問診上,過去に三度鎮痛薬内服後に同様の症状を認め徐々に増悪していることや,毎回同じ部位に皮疹が生じることより自験例を重症の多発型固定薬疹と診断した.プレドニゾロン60mg/日内服で解熱し皮疹は軽快したが粘膜疹の改善がみられず,ステロイドパルス療法により徐々に軽快した.SG配合顆粒®の薬剤リンパ球刺激試験は陽性であり,パッチテストにてSG配合顆粒®とその成分であるアリルイソプロピルアセチル尿素が皮疹部で陽性,無疹部で弱陽性を示した.自験例では,患者が原因薬剤とは気付かずに誘発を繰り返したことで重症化し,高度の粘膜症状を呈したと考えた.

アロプリノールによる中毒性表皮壊死症の1例―原因成分,発症背景についての検討

著者: 眞海芳史 ,   安田文世 ,   森布衣子 ,   木花いづみ

ページ範囲:P.579 - P.583

要約 81歳,女性.既往に高尿酸血症あり.2010年9月からアロプリノール(ケトブン®)の内服を開始していた.同年10月初めから咽頭痛,頭痛,発熱が出現し近医を受診した.その後全身浮腫,爪甲大の紅斑が多発してきたため,当院救急外来を受診した.手掌,足底は弛緩性の巨大な水疱が多発,軀幹,四肢には浸潤を触れる爪甲大までの標的状紅斑が多発していた.両眼瞼は浮腫性で眼周囲にはびらんを呈し眼球結膜の充血があった.口唇,口腔粘膜,舌も全面びらんを呈し,易出血性で開口困難であった.Stevens-Johnson症候群進展型の中毒性表皮壊死症と診断し,ステロイドパルス療法,グロブリン製剤の投与,血漿交換を行い,救命しえたが,後遺症として重度の視力障害が残った.HLAではアロプリノールによる重症薬疹と関係の深いB58が陽性であった.また,薬剤リンパ球刺激試験の結果から本剤の成分組成が自験例の発症に関与している可能性が示唆された.

ガバペンチンによる扁平苔癬型薬疹の1例

著者: 江野澤佳代 ,   荻原護久 ,   藤岡彰 ,   関東裕美 ,   石河晃

ページ範囲:P.584 - P.588

要約 78歳,女性.痙攣発作のため,2009年2月からフェニトイン,3月からガバペンチンの内服を開始した.6月より口唇,その後体幹と四肢に皮疹が出現し,近医にてプレドニゾロン4mgの内服とステロイド外用を行ったが,皮疹は軽快しなかった.薬疹を疑い,9月から中止可能薬剤のガバペンチンのみ中止し,当科を紹介受診した.初診時,体幹,四肢の多彩な紅斑に加え,口唇と口腔内に皮疹を認めた.病理組織所見は,基底層の液状変性,真皮上層のリンパ球を主体とした炎症細胞浸潤を認めたが,好酸球浸潤はみられなかった.内服薬剤を検討し,drug-induced lymphocyte stimulation testを施行したところ,ガバペンチンのみ陽性となり,ガバペンチンによる扁平苔癬型薬疹を考えた.治療はステロイド外用のみで,薬剤中止から6か月で皮疹はすべて色素沈着となり治癒した.ガバペンチンによる薬疹は本邦最初の報告例である.

閉塞性細気管支炎を合併し腫瘍随伴性天疱瘡を疑った扁平苔癬

著者: 丸山美鈴 ,   白方裕司 ,   村上信司 ,   橋本公二

ページ範囲:P.589 - P.592

要約 44歳,女性.初診の3か月前,眼の違和感,口腔内潰瘍に続いて呼吸障害が出現した.当科初診時,口腔内潰瘍,陰部潰瘍,眼球・眼瞼結膜のびらん,充血を認めた.頰粘膜の病理組織像は苔癬型反応を呈し,蛍光抗体直接法,間接法はともに陰性.ELISA法にて抗デスモグレイン1抗体陽性,抗デスモグレイン3抗体偽陽性.免疫ブロット法で,抗プラキン蛋白抗体は陰性であった.全身検索で腫瘍の合併は見つからなかった.ステロイドの全身投与,血漿交換,大量免疫グロブリン投与を行ったが症状は継続した.内科にて,閉塞性細気管支炎と診断され,発症後約2年で呼吸不全のため永眠した.皮膚症状,臨床経過は腫瘍随伴性天疱瘡を疑うものであったが,抗プラキン蛋白抗体陰性,腫瘍の合併がなかったことより,扁平苔癬の診断が妥当と考えた.

冠動脈interventional radiology施行後に生じた難治性放射性皮膚炎の2例

著者: 嘉山智子 ,   藤澤章弘 ,   谷岡未樹 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.593 - P.597

要約 冠動脈interventional radiology(IVR)におけるX線透視により生じた背部の慢性放射性皮膚炎の2症例を報告した.症例1:61歳,男性.13回のIVRを受け13回目の透視時間は405分であった.症例2:79歳,男性.5回のIVRを受け透視時間は不明であったが長時間であった.いずれの症例も背部に四角形の紅斑びらんがみられ,症例1はステロイドやプロスタグランディン製剤など種々の外用剤による保存的加療を行っているが,10年以上の時を経てなお掻痒感が続き難治性のびらんがみられる.症例2は生検施行部位が潰瘍となり2か月後も同部位の上皮化がみられていない.どちらの症例もIVRにより放射線皮膚障害を引き起こす線量の被曝があったと推定される.循環器医と皮膚科医が連携し,慢性放射性皮膚炎の発生の減少および速やかな診断に努めることが重要である.われわれの2症例は背部に四角形の紅斑を生じていることが特徴であり,同様の症状をみた場合にはIVRの既往がないか患者に確認する必要がある.

急性増悪した虚血症状に経皮的血管形成術が奏効した抗リン脂質抗体症候群の1例

著者: 種本紗枝 ,   舩越建 ,   泉映里 ,   平井郁子 ,   橋本玲奈 ,   松原健太郎 ,   尾原秀明 ,   谷川瑛子

ページ範囲:P.599 - P.604

要約 58歳,女性.全身性エリテマトーデス,抗リン脂質抗体症候群に伴う右Ⅰ~Ⅲ趾の壊死あり.胆石精査のため血流改善薬を一時中断したことを契機に急速に右足全趾の壊死が進行し,さらに右下腿に潰瘍を生じた.血管造影にて右前脛骨動脈の50%狭窄,腓骨動脈,後脛骨動脈の完全閉塞を認めた.血流改善薬を再開するも壊死,虚血症状は増悪した.右後脛骨動脈病変に対し経皮的血管形成術(percutaneous transluminal angioplasty:PTA)を行い,血流が改善し,潰瘍は上皮化した.術後8か月を経過したが,再狭窄を認めていない.原病による再狭窄リスクが高いことから,膠原病,血管炎患者の下肢虚血症状に対するPTAの報告は少ない.自験例は,PTAで治療可能な下腿3分枝病変を有し,かつ,内科的治療に抵抗性であり,下肢切断を回避するためには外科的治療が唯一の選択肢であった.下肢の虚血性病変を有する膠原病,血管炎において,PTAによる下肢救済が可能な症例もあると思われた.

好酸球浸潤を伴う持続性紅斑,丘疹を呈した成人Still病の1例

著者: 吉田憲司 ,   小田俊輔 ,   高田裕子 ,   関東裕美 ,   石河晃

ページ範囲:P.605 - P.609

要約 71歳,女性.全身倦怠感,38~39℃台の弛張熱,全身の掻痒を伴う浮腫性紅斑・丘疹と線状紅斑を主訴に受診した.血液検査で白血球,炎症反応上昇と軽度肝機能障害,フェリチン高値を認めた.感染症,悪性腫瘍,膠原病など他疾患を除外し,成人Still病と診断した.入院後,皮疹は発熱と消長を共にせず持続性であり,また,末梢血中好酸球増多を認めた.皮膚生検では表皮上層の個細胞壊死,液状変性,真皮浅層血管周囲性にリンパ球,好中球と多数の好酸球浸潤を認め,当初薬疹を考えた.しかし,薬剤を変更,中止するも皮疹に著変なく,成人Still病に伴う非定型疹と診断した.Persistent papules and plaquesは非定型疹の1つであり,自験例では好酸球増多を伴い特異であった.これまでに自験例と酷似する臨床像を呈し,好酸球増多を伴った成人Still病の報告があり,非定型疹の一亜型である可能性があると考えられる.

末梢血好酸球増多を伴わず,後頭部に生じた木村病の1例

著者: 茶谷彩華 ,   田村舞 ,   山本奈緒 ,   岡部圭介 ,   宇月美和 ,   畑康樹

ページ範囲:P.610 - P.614

要約 56歳,男性.3年前より除々に増大する左後頭部の皮下腫瘤を自覚した.初診時,60×45mm大,圧痛を伴わない弾性硬の皮下腫瘤を認めた.病理組織像にて大小のリンパ濾胞様構造を呈し,濾胞間および内部に好酸球が浸潤していた.リンパ濾胞様構造を構成する細胞に明らかな異型細胞および免疫グロブリン軽鎖のモノクロナリティーを認めず,全身検索でも明らかな他臓器病変はなかった.経過中,末梢血好酸球増多を伴わなかったが,病理組織像のリンパ濾胞様構造,好酸球浸潤所見より木村病と診断した.自験例は後頭部とまれな部位に生じ,経過中,末梢血好酸球増多を伴わなかったことより,単発性に生じ,病理組織像にてリンパ濾胞様構造を呈するCastleman病硝子血管型(孤立性)との鑑別を要した.

無治療で軽快したdiffuse neonatal hemangiomatosisの1例

著者: 伊勢美咲 ,   横山知明 ,   舩越建 ,   髙江雄二郎 ,   永尾圭介 ,   天谷雅行 ,   柴田浩憲

ページ範囲:P.615 - P.619

要約 日齢23,女児.日齢4より紅色丘疹が出現,急速に増大,増加した.初診時,皮膚および口腔粘膜に米粒大までの血管腫が多発し,計398個を数えた.肝内にも血管腫が多発し,門脈肝静脈シャントによる高ガラクトース血症を伴った.心エコーで心不全徴候なく,頭部MRIで異常所見はなかった.病理組織像では真皮上層に血管拡張,血管増生を認め,diffuse neonatal hemangiomatosis(DNH)と診断した.皮膚,粘膜の血管腫は無治療で縮小,減少,高ガラクトース血症も改善し,全身状態も良好である.DNHは臓器病変に伴う全身症状が予後に大きく影響する.治療は一般的にステロイド内服であるが,自験例のように全身状態が良好の場合,無治療での軽快が期待できる.

ケラトアカントーマを伴ったMuir-Torre症候群の1例

著者: 佐藤之恵 ,   大内結 ,   三浦圭子 ,   佐藤友隆

ページ範囲:P.621 - P.626

要約 66歳男性.3か月前より左顔面に腫瘤を自覚した.徐々に増大するため当科を受診した.病理組織学的に低悪性度脂腺癌と診断した.その後も顔面に2か所の皮膚腫瘍が出現したため,切除し,病理組織で低悪性度脂腺癌と脂腺分化のあるケラトアカントーマと診断した.下部内視鏡検査で多発する大腸ポリープを認めた.既往歴に喉頭癌,胃悪性リンパ腫があり,家族歴で兄が,大腸癌に罹患しており,Muir-Torre症候群と診断した.Muir-Torre症候群に生じる皮膚腫瘍の病理組織の特徴について文献的に考察した結果,自験例はその特徴にあてはまっており,また,免疫組織染色法による診断は今後有用だと考えた.

左鎖骨下に生じたsolitary fibrous tumor of the skinの1例

著者: 岡田絵美子 ,   田中京子 ,   稲積豊子 ,   森川貴仁

ページ範囲:P.627 - P.631

要約 48歳,女性.約4年前に左鎖骨下に皮下結節が出現し1年前より増大した.近医初診時,4cm大のドーム状に隆起する可動性良好で弾性硬の皮下結節を認め脂肪腫を疑い摘出された.病理組織学的に,腫瘍は境界明瞭で,短紡錘形ないしは類円形で異型性に乏しい腫瘍細胞が規則性なく配列するpatternless patternと,一部に枝分かれし拡張した小血管の増生を認めた.免疫組織学的に腫瘍細胞はCD34,bcl-2,CD99陽性,デスミン,S100蛋白は陰性だった.以上より自験例をsolitary fibrous tumor of the skinと診断した.隆起性皮膚線維肉腫をはじめとするCD34陽性の紡錘形細胞性腫瘍や平滑筋肉腫との鑑別を要したが,免疫染色でCD34,bcl-2,CD99陽性を示したことが診断の決め手となった.この腫瘍の悪性度はintermediateとされ,局所再発や遠隔転移をする悪性型も存在する.

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)が有効であった悪性黒色腫の1例

著者: 米澤理雄 ,   林雄二郎 ,   鈴木実

ページ範囲:P.633 - P.638

要約 78歳,男性.上顎歯肉・口唇部悪性黒色腫と診断されたが根治術困難であったため,口唇上部の腫瘤を一部姑息的に切除し,術後放射線治療を施行した(計47Gy).その後DAV-Feron療法を1クール施行したが肝障害と熱発のため中断し,以後IFN β 300万単位局注を月1回施行していた.2009年12月より上顎歯肉部の結節が増大し,上顎義歯の動揺により摂食困難になりつつあったため,ホウ素中性子捕捉療法(boron neutron capture therapy:BNCT)を計画した.18F-BPA(boronophenylalanine)PETにて結節部のホウ素集積を評価したところ,集積は良好であり,2010年7月上旬BNCTを施行した.照射1週間後より口唇および口腔内のびらんが出現したものの,3週間で上皮化した.腫瘍は3か月以上にわたり縮小を続けた.BNCTは放射線治療後の再発例にも適応可能であり,腫瘍に選択的かつ十分な線量を照射することができる点で有用な治療法である.

猫咬傷部に生じたMycobacterium chelonaeによる皮下膿瘍

著者: 塩田剛章 ,   小林憲 ,   澤田美月 ,   石崎純子 ,   田中勝

ページ範囲:P.639 - P.642

要約 22歳,女性.職業:トリマー(ペット専門美容師)で,初診の3週間前,勤務中に左前腕を猫に咬まれた.2,3日後より,左前腕に表面発赤を伴い波動を触れる結節を形成し,切開にて血性膿を排出した.病理組織学的所見には真皮に好中球を混じる肉芽腫性細胞浸潤がみられた.膿の鏡検にて抗酸菌が陽性で,小川培地にて膿および皮膚組織より菌の発育を認め,DNA-DNAハイブリダイゼーション法にてMycobacterium chelonaeと同定した.レボフロキサシン投与で症状が遷延したため,クラリスロマイシンに変更し,症状の改善を認めた.猫咬傷でもPasteurella multocida以外に非結核性抗酸菌症などを疑い各種培養をすることが重要である.

臨床統計

順天堂大学皮膚科における円形脱毛症の調査

著者: 小出純子 ,   高木敦 ,   北村奈緒 ,   大月亜希子 ,   込山悦子 ,   池田志斈

ページ範囲:P.643 - P.645

要約 2010年2月~7月の半年間に初診として当科外来受診した円形脱毛症患者397名を対象に調査を行った.男女比は1:1.4で以前と変わらず,臨床学的分類は単発型111人(27.9%)と以前の報告(1993年)と比較し増加した.アトピー性皮膚炎の合併は46人(11.6%)で,以前の報告と変わりはなかった.血清IgEやthymus and activation-regulated chemokine(TARC)値においては高値を示すものは少なく,病勢と病型の指標にはならなかった.

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欧文目次

ページ範囲:P.559 - P.559

文献紹介 MonoMAC症候群の免疫異常のメカニズムについて

著者: 足立剛也

ページ範囲:P.604 - P.604

 免疫細胞への抗原提示を司る樹状細胞は,免疫反応を調節する多くの役割を担っており,樹状細胞欠損マウスにおいては体重減少,脾腫,リンパ節腫脹,消化管炎などの重篤な自己免疫症状を呈することが知られている.

 今回著者らは,同じように樹状細胞欠損を呈するhuman counterpartを探索し,単球減少などの血球減少,非定型抗酸菌感染症などを特徴とする患者群を見つけた.これがthe syndrome of monocytopenia, B and NK cell lymphopenia and mycobacterial, fungal and viral infections,いわゆるMonoMAC症候群である.著者らはこの患者群の免疫学的解析を行った.

文献紹介 未治療進行期悪性黒色腫に対するイピリムマブ併用ダカルバジン療法の効果

著者: 福田理紗

ページ範囲:P.614 - P.614

 悪性黒色腫を含む担癌患者は免疫抑制状態にあり,そのため自己の免疫が腫瘍を十分に攻撃できないことが明らかになっている.イピリムマブは,腫瘍が出すサイトカインにより発現したT細胞抑制レセプターであるCTLA-4を阻害することによってT細胞の働きを活性化し,免疫抑制を解除する働きをもつ.すなわち,腫瘍免疫の抑制状態を解除する薬剤である.今回,ダカルバジンとイピリムマブの併用療法が,ダカルバジン単剤投与に対し,未治療の悪性黒色腫の全生存期間を改善するかについて第Ⅲ相臨床試験を行った.

 臨床試験は,未治療で測定可能病変を有する病期ⅢまたはⅣの悪性黒色腫の患者502例を対象とし,ダカルバジン+イピリムマブ群は250人,ダカルバジン+プラセボ群は252人に無作為に割り付けられた.薬剤は1,4,7,10週に投与し,その後は22週まで3週おきに投与を行った.結果は,イピリムマブ群は全生存期間が平均11.2か月であったのに対し,プラセボ群は9.1か月と,全生存期間の改善を示した.1年生存率はイピリムマブ群が47.3%,プラセボ群が36.3%であり,2年生存率は28.5%,17.9%,3年生存率は20.8%,12.2%といずれもイピリムマブ群で良好であり,完全奏効,部分奏効の平均期間もイピリムマブ群19.3か月,プラセボ群8.1か月と有意差を認めた.副作用としてはダカルバジン+イピリムマブ群はイピリムマブ単独投与と比較し,肝機能障害の頻度が高かった.これは,ダカルバジンとの併用が原因と考えられる.イピリムマブ群で頻度の高い副作用は肝機能障害,下痢,皮膚症状(掻痒,発赤)であり,そのなかでも肝機能障害が最も頻度が高かった.また,イピリムマブ,ダカルバジン単独投与時の副作用以外の新たな副作用は観察されなかった.

書評 ―編:塩原哲夫,宮地良樹,渡辺晋一,佐藤伸一―今日の皮膚疾患治療指針 第4版

著者: 橋本公二

ページ範囲:P.632 - P.632

 従来,皮膚科診療においては,診断と治療を比べると,診断に多くの比重が置かれていた.これは,ある意味では当然で,正確な診断ができなければ正しい治療ができないことは自明である.また,皮膚の病変が視診,触診などの理学的診断で精微な診断が可能であることなども,大きな要因であったと考えられる.しかし,皮膚科専門医制度が整備され,皮膚科医の診断能力が向上し,また,治療薬,治療法の急速な進展に伴い,皮膚科においても治療が大きくクローズアップされるようになってきた.その理由の1つとして,基礎研究の進展が治療薬の開発に結び付くようになったことが挙げられるであろう.その象徴的存在が,乾癬治療における生物学的製剤の登場ともいえる.このような「診断」から「治療」の時代への移り変わりへの期待を担って出版されたのが,本書『今日の皮膚疾患治療指針』である.

 本書は,「プライマリケアのための鑑別診断のポイント」「皮膚科の主な検査法」「皮膚科の主な治療法」の3章の総論に加え,「湿疹・皮膚炎,痒疹,掻痒症,紅皮症」から始まる32章の各論から構成されている.まず,「プライマリケアのための鑑別診断のポイント」で気付くのは,鑑別診断表がきわめて簡潔で,また,各論の参照ページが記載されているため,非常に使いやすいことである.さらに,多くの鮮明な臨床写真を使用し,プライマリケア医あるいは皮膚科研修医にも適したものとなっている.「皮膚科の主な治療法」では,多くの項目で患者説明のポイントが加えられており,皮膚科専門医にとっても有用なヒントとなろう.各論では,その治療をなぜ選択するのかという視点から病態と診断の解説がなされており,治療法が理解しやすくなるように工夫されている.さらに,皮膚科領域では,多くの疾患でガイドラインが策定され,治療法もガイドラインに基づいたものが求められている.ガイドラインそのものの解説はしばしば無味乾燥になりがちであるが,本書では図譜などを用いてガイドラインのポイントを簡潔に解説しており,きわめて理解しやすいものとなっている.また,ほとんどすべてのガイドラインを網羅しており,本書を手元に置くことでガイドラインの簡易版を備えている安心感を持てると言っても過言ではなかろう.

お知らせ 第7回ハンセン病の医療充実に向けた講習会

ページ範囲:P.648 - P.648

会  期 2012年10月21日(日) 10:00~16:00

会  場 マルホ株式会社 本社8F会議室

     〠531-0071 大阪市北区中津1-5-22

次号予告

ページ範囲:P.649 - P.649

投稿規定

ページ範囲:P.650 - P.651

あとがき

著者: 伊藤雅章

ページ範囲:P.652 - P.652

 私事ですが,先日,第37回日本香粧品学会(東京)で会頭を務めました.約600名の参加があり,盛会だったと思います.この学会は,安田利顕先生が創設され,代々,主に皮膚科教授が会頭を務めてきていますが,学会運営には主に香粧品メーカーの技術者・研究者の方々が中心になり,会員も多くはその方々です.なぜか皮膚科医の会員数や参加者が以前より少なくなっている印象です.そのせいか,皮膚科関連学会のうちでも,少し変わった雰囲気です.さて,香粧品というと,医薬品ではないので,皮膚科医は少し軽視する傾向があり,また,トラブルがなければそれで良いというくらいに考えがちではないでしょうか.しかしながら,香粧品開発の技術の進歩は目覚しく,例えば,ナノ粒子は皮膚に外用するだけで皮膚内,さらには全身への外来物質の移送をきわめて容易にしています.この技術は素晴らしいものではありますが,一方,恐ろしさや不安も禁じえません.従来の香粧品は,皮膚表面や角質に留まって目的を果たし,せいぜい表皮に作用して美白効果を発揮するという具合でしたが,生体内へ何でも,どこまでも入れられるようでは危険です.しかも,粒子自体の生体への影響も未知の状況です.ここには薬学者の方々のみならず,やはり医学者,特に皮膚科学者が開発や試験に関与して,医学的見地から香粧品の検証に当たるべきかと思います.皮膚科医は,日常,化粧品や洗浄剤などによる皮膚トラブルの症例を数多く診ていますが,すべて問題が起こってからの対応でしかありません.最近の大事件である旧「茶のしずく石鹸」による小麦アナフィラキシーはその最たる事例です.香粧品学会では,香粧品に関するガイドラインを作成し,効能・効果・安全性などを検証することを進めていますが,そこには皮膚科医が大きく関与すべきかと思います.『臨床皮膚科』の読者のほとんどは皮膚科医と思いますが,皮膚科医は臨床のみならず,香粧品や美容分野へも大きく貢献すべきと思います.

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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