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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科66巻8号

2012年07月発行

文献概要

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あとがき

著者: 伊藤雅章

所属機関:

ページ範囲:P.652 - P.652

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 私事ですが,先日,第37回日本香粧品学会(東京)で会頭を務めました.約600名の参加があり,盛会だったと思います.この学会は,安田利顕先生が創設され,代々,主に皮膚科教授が会頭を務めてきていますが,学会運営には主に香粧品メーカーの技術者・研究者の方々が中心になり,会員も多くはその方々です.なぜか皮膚科医の会員数や参加者が以前より少なくなっている印象です.そのせいか,皮膚科関連学会のうちでも,少し変わった雰囲気です.さて,香粧品というと,医薬品ではないので,皮膚科医は少し軽視する傾向があり,また,トラブルがなければそれで良いというくらいに考えがちではないでしょうか.しかしながら,香粧品開発の技術の進歩は目覚しく,例えば,ナノ粒子は皮膚に外用するだけで皮膚内,さらには全身への外来物質の移送をきわめて容易にしています.この技術は素晴らしいものではありますが,一方,恐ろしさや不安も禁じえません.従来の香粧品は,皮膚表面や角質に留まって目的を果たし,せいぜい表皮に作用して美白効果を発揮するという具合でしたが,生体内へ何でも,どこまでも入れられるようでは危険です.しかも,粒子自体の生体への影響も未知の状況です.ここには薬学者の方々のみならず,やはり医学者,特に皮膚科学者が開発や試験に関与して,医学的見地から香粧品の検証に当たるべきかと思います.皮膚科医は,日常,化粧品や洗浄剤などによる皮膚トラブルの症例を数多く診ていますが,すべて問題が起こってからの対応でしかありません.最近の大事件である旧「茶のしずく石鹸」による小麦アナフィラキシーはその最たる事例です.香粧品学会では,香粧品に関するガイドラインを作成し,効能・効果・安全性などを検証することを進めていますが,そこには皮膚科医が大きく関与すべきかと思います.『臨床皮膚科』の読者のほとんどは皮膚科医と思いますが,皮膚科医は臨床のみならず,香粧品や美容分野へも大きく貢献すべきと思います.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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