臨床皮膚科66巻9号

2012年08月発行

症例報告

高齢者の急性型成人T細胞性白血病/リンパ腫の1例

著者： 臼田佳世¹ 神戸有希¹

所属機関： ¹社会医療法人財団石心会狭山病院皮膚科

ページ範囲：P.691 - P.694

要約　92歳，女性．1か月前より全身に掻痒のある小淡紅色斑が多発し受診．末梢血中に核に切れ込みを持つリンパ球が出現していた．抗HTLV-1抗体陽性で，末梢血のサザンブロット解析にてHTLV-1プロウイルスのモノクローナルな組み込みを認め，超高齢者における成人T細胞性白血病/リンパ腫(adult T cell leukemia/lymphoma:ATL/L)と診断した．ATL/LはHTLV-1の感染が原因であり，その感染経路として母乳感染が最も多いとされているが，自験例においては人工栄養保育で生育しており，その他の感染経路の可能性があった．また，92歳という高齢で発症した原因としても水平感染の可能性が考えられたので文献的考察を加え報告する．

参考文献

1) 木下研一郎：成人T細胞白血病・リンパ腫，新興医学出版社，p55, 2003

2) 天野正宏，他：Derma 80:49, 2003

3) 田島和雄：総合臨床 53:2038, 2004

4) 広瀬かおる，他：癌の臨床 47:341, 2001

5) 村松正実，他(監)：ATL:ATLとAIDS，南光堂，p35, 1994