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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科66巻9号

2012年08月発行

文献概要

症例報告

ネオアジュバント療法が奏効した多発リンパ節転移を伴った臀部Merkel細胞癌の1例

著者: 森志朋1 櫻井英一1 前田文彦1 高橋和宏1 赤坂俊英1 川崎雄一郎2

所属機関: 1岩手医科大学皮膚科学教室 2岩手県立二戸病院外科

ページ範囲:P.711 - P.716

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要約 72歳,男性.初診の約2か月前より右鼠径部の腫脹を自覚し近医を受診しCTを施行された.右内腸骨リンパ節腫脹があり外科に紹介された.リンパ節生検でMerkel細胞癌が疑われ当科を紹介受診した.臀部に皮下腫瘤があり,病理組織像は小型の異型な円形細胞からなり,免疫染色所見でサイトケラチン20,NSE,クロモグラニンAが陽性で,電顕所見でdense core granuleを有する分泌顆粒を認めMerkel細胞癌と診断した.PET-CTで両肺門集積,左総腸骨動脈分岐部,右鼠径・外腸骨動静脈周囲にリンパ節腫大があり広範なリンパ節郭清は困難と判断し,腫瘤切除とネオアジュバント療法としてシクロホスファミド・硫酸ビンクリスチン・塩酸ドキソルビシンによる多剤化学療法(CAV療法)を施行したところ,リンパ節はすべて縮小した.その後,鼠径リンパ節郭清術と放射線化学療法を施行した.さらにCAV療法を9クール行い,再発,転移なく経過している.自験例のように初診時既に原発巣の切除やリンパ節郭清術が困難な症例に対しては,ネオアジュバント療法および放射線療法,化学療法がきわめて有効であると思われる.

参考文献

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8) 栗村理恵,他:臨皮 50:635, 1996

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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