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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科67巻12号

2013年11月発行

文献概要

症例報告

Scedosporium apiospermumによる深在性真菌症の1例

著者: 木村摩耶1 宮本亨1 徳田佳之2 矢口貴志3

所属機関: 1津山中央病院皮膚科 2津山中央病院内科 3千葉大学真菌医学研究センター

ページ範囲:P.1002 - P.1006

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要約 83歳,男性.6年前より多発関節炎であるRS3PE症候群(remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema:対称性滑膜炎)に対しステロイドの加療が開始され現在ベタメタゾン1mg/日の内服をしていた.明らかな外傷の既往はないが,1週間前に右手背の紅色丘疹に気づいた.当科受診時,右手関節背側に鱗屑と黒色痂皮を伴う米粒大から母指頭大の紅色丘疹と周囲の腫脹を認めた.皮膚病理組織像ではHE染色にて真皮内に膿瘍が形成され,Grocott染色陽性の菌要素を認めた.真菌培養でみられたコロニーは白色綿毛状から淡褐色を呈し,分生子の形状は分生子柄とその先端に卵円形をした分生子が観察された.この形態学的な特徴とrDNAのITS領域の塩基配列からScedosporium apiospermumと同定した.右手背以外の皮膚や他臓器への真菌感染を疑わせる所見は認めなかった.イトラコナゾール100mg/日の内服を開始したが,2週間後より誤嚥性肺炎を繰り返し,呼吸状態の悪化により2か月後永眠された.Scedosporium apiospermumは,自然界に広く分布する土壌菌で,免疫低下患者には時に肺炎,髄膜炎などを起こすことがある.自験例では迅速な菌同定ができ,イトラコナゾールが有効であったと考えられた.

参考文献

1) 船曳正英,他:皮膚病診療 31:439, 2009
2) 幸福知也:臨床と微生物 38:569, 2011
3) 武市浩美,他:医学検査 50:1568, 2001
4) 井上千津子,他:皮膚臨床 39:962, 1997
5) 古西 満,他:感染症学雑誌 82:82, 2007
6) 武市浩美,他:医学検査 50:1568, 2001
7) 辻  学,他:日医真菌会誌 51(S1):71, 2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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