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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科67巻13号

2013年12月発行

文献概要

マイオピニオン

皮膚科を取り巻く環境と皮膚科専門医制度

著者: 石河晃1

所属機関: 1東邦大学医学部皮膚科学講座(大森)

ページ範囲:P.1026 - P.1027

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 私は皮膚科専門医制度に試験が導入される前に専門医を取得した最後の世代である.講習会を受講し,学会発表,論文発表を行い一定の点数を満たせば専門医資格をいただけた.しかし,専門医を持っていたからといって給料が上がるわけでもなく,役には立たないが持っていないと恥ずかしいもの,という程度の認識しかなかった.その自分が皮膚科専門医制度の仕組み作りに関わるようになるとは予想しえなかったが,2017年から開始される第三者機関による新しい専門医認定制度全体の方向性を知るに至り,専門医制度が皮膚科全体に与える影響を憂慮するようになった.新制度の大枠は基本診療科18科に総合診療専門医を加えた19領域を基本領域専門医とし,「専門知識と技術を備え社会から信頼され,患者さんに安全で標準的な医療を提供できる」専門医を育成することが詠われている.そのために,主研修施設と関連研修施設が一体となって専門医研修プログラムを策定し,カリキュラムを終了したものが試験を受け,専門医を取得する仕組みとなる.研修プログラムも専門医試験も第三者機構が認定することとなるが,実際の運用は皮膚科学会が行うことになるので,実質的にはそれほど大きな制度の変化はないように思える.しかし,研修プログラムには専攻医(専門医取得を目指す医師の正式名称)の募集定員を記載することが義務づけられる.そしてプログラムは第三者機関が認定する.これはすなわち皮膚科専門医を日本で何人作るか,第三者機構が最終的に認定する権限を握るものであり,皮膚科を含めすべての科はこの部分で首輪をはめられることとなる.国民に必要とされる専門医をどのように作り,皮膚科医の必要性を訴えてゆくか,真剣に考える必要がある.

 皮膚科専門医は一定の診療レベルを担保し,専門医としてのidentityを維持することが必要であることは言うまでもない.しかし,専門医の認定レベルをどこに設定するかは,非常に難しい問題である.レベルを高くし,人数を絞れば専門家としてのニーズは間違いなく高まる.しかし,頭数が減ることにより,病院内や医師会,社会への発信力は弱まるであろう.また,診断困難症例や重症例,難治症例は少人数の専門医に集まるにもかかわらず,診療報酬が非専門医のそれと同じでは疲弊するばかりである.一方,専門医認定レベルをどんどん下げれば頭数は増えるが,皮膚科専門医のニーズも反比例して下がることとなる.ニーズが下がれば専門医数を削れ,となるのは当然の流れであろう.総合診療医等の非皮膚科専門医との差別化を明確にし,高いレベルの診療を維持することにより,皮膚科医のニーズを高め,かつ,数を維持することが重要である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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