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特集 最近のトピックス2013 Clinical Dermatology 2013 2.皮膚疾患の病態
腸性肢端皮膚炎の発症メカニズム
著者: 川村龍吉1
所属機関: 1山梨大学医学部皮膚科学講座
ページ範囲:P.35 - P.39
文献購入ページに移動要約 先天的な亜鉛欠乏症に伴う皮膚炎,すなわち腸性肢端皮膚炎の発症メカニズムは長らく不明であった.亜鉛欠乏は細胞性免疫ならびに液性免疫を著明に低下させるため,これまで亜鉛欠乏に伴う皮膚炎は何らかの感染症により引き起こされると推測されてきた.しかし,最近この皮膚炎の本態が実は一次刺激性接触皮膚炎であることが示唆された.亜鉛が欠乏すると,一次刺激物質との接触により炎症起因物質:アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate:ATP)が表皮細胞から多量に放出される一方,ATP不活化作用を有するCD39分子を発現する表皮内Langerhans細胞が著明に減少する.このため,亜鉛欠乏症では一次刺激物質によって大量の細胞外ATPが表皮内で誘導され,一次刺激性接触皮膚炎が惹起される.すなわち,亜鉛欠乏患者の口囲や外陰部,四肢末端に生じる皮膚炎は,それぞれ食べ物やし尿,生活環境物質などにより引き起こされた一次刺激性接触皮膚炎であると考えられる.
参考文献
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