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Derm.2013
疾患の捉え方―見方を変えると違ったものが見えてくる
著者: 石黒直子1
所属機関: 1東京女子医科大学皮膚科
ページ範囲:P.39 - P.39
文献購入ページに移動 皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)は,基本的には同じ皮膚症状を呈しながら,種々のタイプに分かれることがわかっていた.年齢分布では小児と成人の二峰性であり,合併症では間質性肺炎(interstitial pneumonia:IP)を伴う群と悪性腫瘍を伴う群がある.IPでは急速に進行し予後不良の症例と治療に対する反応が良好な症例がある.筋症状がなく皮膚症状が主体の例もみられる.そのなかにも急速進行性IPを伴う症例と合併症のない軽症例がある.これまでわれわれは上記のすべての可能性を考慮し,精査,治療を行ってきたが,急速進行性IPを合併する場合にはその進行の速さになすすべもない状況に追い込まれることがあり,症例によりなぜこれほどまでに異なる経過を辿るのか疑問でもあった.近年,多数の筋炎特異抗体が判明し,DM/多発筋炎の8割でそのどれかの抗体が陽性になるとされ,その臨床的相違点も明らかになってきた.当科2008~2010年のDM患者についても,金沢大学皮膚科で免疫沈降法を行って頂いたところ,20例中11例(55%)で抗体が陽性であり,その内訳は多岐にわたり臨床的相違点もみられた.皮膚症状,検査所見ともに“灰色”と思われる症例で,抗体の検出により診断と治療に一定の指針が与えられたものもある.最近思うに,「皮膚症状は何かを反映して起こる1つの現象に過ぎない」ということである.すなわち,誘因・契機は種々あれど,障害部位が近ければ表現型は類似するということ.臨床的にまとめられた群が必ずしも1つの病因によるとは限らないということは既にあり,多形滲出性紅斑(erythema exudativum multiforme:EEM)はその代表的な疾患である.最近では急速進行性IPを合併するDMでは発症にウイルス感染の関与も推測されている.原因から考えると“○○感染症”ということになり,治療に関する新しい知見も出てくるのかもしれない.各々の筋炎特異抗体の発症機転における役割もしくは裏付けは今後明らかになってくると思うが,DMもEEMと同様に考えることのできる疾患群なのかもしれない.いずれにせよ,筋炎特異抗体の検索が,疾患の病型や予後を予測するうえでいかに重要であるかを認識した数年間であったと思い返している.
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