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Derm.2013
記録写真のデジタル化に思う
著者: 小野一郎1
所属機関: 1札幌医科大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.46 - P.46
文献購入ページに移動 最近の学会がすべてプロジェクターの映写となり,当然の帰結として皮膚病変の記録はもとよりダーモスコープや病理組織の画像の記録もすべてデジタルカメラで行われるようになってきました.デジタル化の洗礼の前(たった10年ほど前までですが),つまりフィルムでの記録しかなかった時代と比較すれば整理が楽になり,しかも高品位の画像を即時にコンピューターの上で比較できることからその利便性は計り知れないものがあります(毎週のようなスライド整理から解放されたのはほんの昨日のような気がしますが――).ただし,私が日頃感じているいくつかの考えていただくべき点があることを書かせて頂きたいと思います.まずはそのグレードの点です.スマートフォンや携帯電話でもそこそこの写真が撮れるようにはなりましたが以前のフィルムで照明(ストロボ)をきちんと当てて,かつ露出やフォーカスが正確に合った写真のグレードを越えるデジタル写真を記録するためには技術進歩の著しい現在でもそれなりの出費(機材費)と技術の習得が必要であるという点(特にレンズと照明)です.あまりにも安易に撮影できるので,質の低い写真や何を撮りたいのかがわからないような写真がやたら多くなりがちな点などです.日頃から若い先生にお願いしていることはできるだけ良い機材を入手し,常日頃から世界で初めての症例を撮影しているという緊張の気持ちを持って撮影して下さいということです.それとデジタルデータになってもう1点良くなったことは,1枚しかないオリジナルが紛失してしまうと取り返しができなかったものが,限りなくコピーが可能となった点でもあります.これは良い面ですが,逆に個人情報の管理面から大変に神経を使う必要がある点も留意していかなければなりません.今後さらに高品位の写真が安価な機材でも撮れる時代となるとは思いますが,忘れてはいけないのは「その時点で最高の画質の写真記録を疾患の状態を後日正確に把握できるように残す」ということに尽きるように思います.既に各社から最高画質で記録の残せる大変にリーズナブルな価格の機器が多数発売されており,技術的にもほぼ完成されてきていると感じています.これから皮膚科学を志す若い先生たちには改めて良い機材で撮った写真で議論したり,症例の経過を見て,学びスキルアップすることを心がけて頂きたいと思います.当然のことながら学会発表はもとより,投稿論文に掲載するための記録としてもいわゆる「コンデジ」の写真では不十分です.
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