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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科67巻5号

2013年04月発行

文献概要

Derm.2013

よく泳ぐものは溺れる

著者: 小川文秀1

所属機関: 1長崎大学病院皮膚科・アレルギー科

ページ範囲:P.103 - P.103

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 膠原病外来を担当していることもあり紹介を受けることも多い.以前,中学生の女児が全身性強皮症疑いで紹介されてきた.幼少時からしもやけが続いており,Raynaud症状も認めているとのことであった.手指腫脹はありそうだけれども若く一見すると栄養状態の良好な健康そうな女児であるため,まあそんなものかなあと判断していた.抗核抗体は320倍であるものの,抗セントロメア抗体や抗トポイソメラーゼI抗体,そのほか膠原病を思わせるような抗体も特に認めていなかった.全身性強皮症でよく認められる爪上皮出血点は確認できず,指尖潰瘍や指尖瘢痕などもなかった.関節痛や筋肉痛はあるというものの,筋原性酵素も一度だけしか上昇しておらず運動などの影響などが考えられ,関節痛もそれほど強くなく移動性であった.しかも,受診時には母親がいつも一緒であったが,診察時には患者さん本人と漫才のような掛け合いを繰り広げていた.胸焼けはすることがたまにあるけど,食べすぎたかなぁなどと親子ではしゃいでいる感じであった.受験前ということもあり,関節痛や筋肉痛も不定愁訴のようなものではないかと判断し,一時終診とし,新たに症状が出現したら再診するようにしようかと考えていた.が,念のため免疫沈降法で確認したところ,抗hUBF(NOR90)抗体が陽性であった.抗hUBF抗体陽性の強皮症は,中年女性が多いが小児例もされ,比較的軽症に多く内臓合併症は少なく関節痛を認めることが多いとされている.

 今回の症例も振り返ると報告例にかなり一致した点が多い.1つ1つの症状を検討すると強皮症に一致するのだが軽症でもあり,患者さんの印象に振り回されてしまった結果であった.今後は慢心せずに丁寧な診察を心がけるようにしたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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