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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科67巻9号

2013年08月発行

文献概要

症例報告

タクロリムス軟膏が奏効した形質細胞性口唇炎の1例

著者: 吉良正浩1 丸山彩乃1 早石佳奈1 水野麻衣1

所属機関: 1市立池田病院皮膚科

ページ範囲:P.667 - P.670

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要約 72歳,男性.初診の3か月前より下口唇にびらんが出現した.複数の皮膚科を受診し,ステロイド外用剤,抗生剤含有軟膏により加療されたが軽快なく,出血,痛みが強いため当科を受診した.下口唇は全体的にやや腫脹し,中央から右側にかけて出血・血痂を伴うびらんを認めた.病理組織学的には,表皮が欠損しており,真皮上層から中層にかけて形質細胞が稠密に浸潤していた.辺縁の表皮が残存している部位では,液状変性や表皮角化細胞の異型性などは認めなかった.免疫染色ではκ鎖およびλ鎖陽性形質細胞が混在しており,多クローン性であった.口唇に生じた開口部形質細胞症と考え,形質細胞性口唇炎と診断した.タクロリムス軟膏を連日外用したところ,3週間後にはびらんの大部分が上皮化し,6週間後には完全に治癒した.外用による刺激感などの副作用は全く認めなかった.タクロリムス軟膏外用終了後6か月経過した時点では再発を認めていない.形質細胞性口唇炎は比較的まれな疾患であり,症例の蓄積がいまだ不十分ではあるが,タクロリムス軟膏外用は治療の第一選択肢として試みられても良いと考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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