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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科68巻11号

2014年10月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・86

Q考えられる疾患は何か?

著者: 椛沢未佳子

ページ範囲:P.845 - P.846

症例

患 者:78歳,男性

主 訴:発熱,全身の多発結節,全身のリンパ節腫脹

既往歴:40歳頃より高血圧

家族歴:特記すべきことなし.

現病歴:初診の9か月前,背部に掻痒を伴う拇指頭大までの淡紅色斑が出現し全身に拡大した.紅斑は一部辺縁に粟粒大の小膿疱が連圏状に配列するものもみられた.某医でプレドニゾロンを内服し一時軽快したが,20mg以下に減量すると症状が再燃することを繰り返していた.初診2か月前より腰部に結節が出現し顔面・背部に拡大し,38℃を超える発熱を連日認めるようになった.

現 症:顔面・四肢・体幹に孤立性で小豆大から鶉卵大までの浸潤を伴う隆起性の暗赤色結節が多発していた(図1a,b).結節の多くは表面平滑であったが,一部中央が壊死し厚い痂皮を付着するものもみられた.

マイオピニオン

皮膚科における他科との連携

著者: 飯塚一

ページ範囲:P.848 - P.849

 自分は,旭川医科大学で,28年間,皮膚科の教授を務め,この春,退任した.地方の大学の場合,研修医が,他大学から参入することは,比較的まれであり,したがって,28年も教授をやっていると,例えば外来で,他科からの紹介患者について医師同士でやりとりをする場合,相手の大部分が自分の教え子という状況になる.そんななかで,他科に所属する彼らから,自分は測り知れないほど多くのことを学んだ.

 周知のように,皮疹は誰にでも見えるはずのものであるが,見れども見えずということは,永久に変わらぬ真理である.これは,臨床の現場で体験させるのが,一番,説得力があり,ポリクリで具体例を見せながら教えていくと,結果的に学生は,皮疹に隠された驚くべき量の情報を実感し,専門としての皮膚科に対して,それなりの敬意を払って卒業していく.その結果,彼らは,医師になった後も,皮疹について相談してくるのである.

症例報告

カメムシにより生じた足底橙色色素斑

著者: 泉谷一裕

ページ範囲:P.851 - P.856

要約 9〜65歳の男性4名,女性1名の足底に無症候性橙色色素斑が認められた.8mm大の色素斑を認めるもの,小さな色素斑を散在性に多数認められる症例があった.現症では炎症所見は認められなかった.皮膚に色素斑を生じ,春と秋に好発するため,臀部や頰部で報告されているカメムシ皮膚炎との関連性を推察した.しかしながら,これまでカメムシが及ぼす足底の変化を調べた報告は全くなかった.そこで,マルカメムシ,クサギカメムシの2種を足底で踏む皮膚試験を施行し,その皮膚の変化を観察した.クサギカメムシでは試験開始5分以内に自験例と同様の橙色色素斑が出現し,2週間で完全に消退した.試験経過中カメムシ皮膚炎とは異なり,炎症所見は全く認めなかった.以上より,自験例の色素斑はカメムシにより生じた足底橙色色素斑と判断した.治療は不要で2週間以内に自然消退する.

骨盤骨折に対する経カテーテル的動脈塞栓術後に褥瘡に類似した臀筋壊死を生じた2例

著者: 須原紫 ,   松原真由美 ,   佐藤彰洋 ,   榊原章浩

ページ範囲:P.857 - P.862

要約 症例1:77歳,男性.はしごから転落し骨盤を骨折した.骨盤内出血のため,両側の内腸骨動脈に対して経カテーテル的動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:TAE)が施行された.TAE後5日目に右殿部に紫斑が出現し,褥瘡の疑いで当科へ紹介されたが,その後紫斑は黒色壊死となり,デブリードマンにて臀筋に至る壊死を認めた.症例2:80歳,男性.交通事故で骨盤を骨折した.骨盤内出血のため両側の内腸骨動脈に対してTAEが施行されたが,4日後より両側臀部に紫斑とびらんが出現し,当科へ紹介された.紫斑は急速に黒色壊死となり,臀筋に至る壊死を認めた.骨盤内出血を止血するためのTAEにより救命率は向上しているが,時にTAE後に臀筋壊死,皮膚壊死を合併することがある.褥瘡として皮膚科へ紹介されることも多く,このような合併症を熟知することで適切な対応が可能になると考えた.

結節性紅斑を合併した肉芽腫性乳腺炎の1例

著者: 梅本淳一 ,   大澤研子 ,   竹上智浩 ,   池澤優子

ページ範囲:P.863 - P.868

要約 38歳,女性.右乳房外側に発赤,硬結が出現した.その後同部位に膿瘍形成し,乳癌を疑われ,針生検が施行されたが悪性所見はなく,排膿ドレナージで経過観察されていた.その後右下腿に圧痛を伴う紅斑を自覚し,当科受診し,同部位の皮膚生検にて結節性紅斑と診断した.乳房の硬結部から施行した針生検の病理組織を再評価した結果,肉芽腫性乳腺炎と診断した.消炎鎮痛薬内服にて結節性紅斑は改善するも右乳房の膿瘍は拡大した.そこで,プレドニゾロン20mg/日の内服を開始したところ,膿瘍は徐々に消退し,瘻孔も上皮化傾向を呈した.現在プレドニゾロンを5mg以下まで漸減し,再燃はみられない.結節性紅斑と肉芽腫性乳腺炎の合併例は比較的稀ではあるが報告は散見されている.自験例では両疾患の発症機序に,感染症に伴う免疫アレルギー反応の関与が示唆された.

三叉神経第2枝領域の帯状疱疹治癒後に顔面神経麻痺を発症した1例

著者: 山上優奈 ,   遠藤雄一郎 ,   藤澤章弘 ,   谷岡未樹 ,   椛島健治 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.869 - P.872

要約 64歳,男性.2012年11月中頃より左眼瞼周囲にピリピリとした表在性疼痛が出現し,その後同部位に紅斑が出現した.近医で,左三叉神経第2枝領域の帯状疱疹と診断され,第2病日に当科を受診し,入院した.ビクロックス®(アシクロビル)750mg/日を計7日間点滴投与し,左下眼瞼〜頰部,鼻翼にあった紅暈を伴う水疱は痂皮化したが,左顔面は浮腫が強かった.退院後の第10病日より左顔面に違和感が出現し,第16病日には左口角の低下と左鼻唇溝の消失が著明になった.帯状疱疹に伴う左顔面神経麻痺の診断で計9日間のプレドニゾロン投与を行ったところ,治療開始前には柳原法で4/40点であったが,治療1か月後には38点まで改善して麻痺は消失した.皮疹と顔面神経麻痺の出現時期はさまざまであり,皮疹に遅れて麻痺症状が出現することもあるため,三叉神経領域の帯状疱疹や顔面神経麻痺の部分症状がある症例では注意深いフォローを要すると考えた.

単純ヘルペスウイルスの再活性化による口腔内・食道潰瘍を呈した薬剤性過敏症症候群の1例

著者: 森本亜里 ,   舩越建 ,   福島彩乃 ,   久保亮治 ,   海老原全 ,   林田哲 ,   真杉洋平 ,   亀山香織 ,   永尾圭介

ページ範囲:P.873 - P.878

要約 59歳,女性.乳癌脳転移摘出術後,ゾニサミドを開始した40日後より膝に紅斑が出現し全身に拡大した.初診時,38℃の発熱,顔面の潮紅・腫脹,全身に半米粒大までの紅斑の多発,頰粘膜びらんを認めた.頸部・鼠径部リンパ節腫脹,白血球11,100/μl,好酸球36%,肝酵素はAST 102IU/l,ALT 97IU/lと上昇し,ゾニサミドによる薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)と診断し,プレドニゾロン(PSL)60mg/日を開始した.一旦軽快したが発症16日目に発熱,皮疹,口腔内びらんが再燃し,肝酵素値もAST 97IU/ml,ALT 117IU/mlと増悪した.DIHSの2峰目と判断しPSL同量を継続したが口唇・歯肉びらんのみが遷延した.発症25日目に舌潰瘍が多発し,食道潰瘍を認めた.舌・食道の生検組織像で核内封入体を認め,免疫組織染色で単純ヘルペスウイルス(herpes simplex syndrome:HSV)陽性であった.発症30日目ヒトヘルペスウイルス6型(human herpes virus-6:HHV-6)の抗体価上昇およびゾニサミドの薬剤リンパ球刺激試験陽性化がみられた.HSVはHHV-6とともにDIHSの病態に関与するヘルペスウイルス科の1つと考えた.

硬化性萎縮性苔癬様の病理組織像を示したgeneralized morpheaの1例

著者: 村田紗葵子 ,   石黒直子 ,   前田梓 ,   川島眞

ページ範囲:P.879 - P.883

要約 42歳,女性.5年前から胸腹部に鶏卵大までの褐色斑が出現した.徐々に,軀幹,四肢へ増数拡大し,癒合して局面を形成し,一部では皮膚硬化を伴った.1年前から局面の一部に光沢を認め,白色結節も混じてきた.硬化局面からの皮膚生検像では,真皮全層から脂肪織にかけて膠原線維の増生を認めた.硬化局面内の白色結節部では表皮は萎縮し,真皮浅層の浮腫と表皮真皮境界部では裂隙を形成していた.抗核抗体640倍,抗ss-DNA IgG抗体117AU/ml,補体低下がみられた.以上より,硬化性萎縮性苔癬様の病理組織像を示したgeneralized morpheaと診断した.プレドニゾロン20mg/日を2か月内服し,皮膚硬化が軽快するとともに白色結節も平坦化した.Morpheaの進行期の病変では時に硬化性萎縮性苔癬様の病理組織所見を伴うことに留意する必要があると考えた.

小児の鼻根部右側に生じた血管平滑筋腫の1例

著者: 前久保理恵 ,   成田幸代 ,   持田耕介 ,   中山文子 ,   瀬戸山充

ページ範囲:P.885 - P.888

要約 10歳,女児.右鼻根部に約1cm大,弾性硬で可動性不良の無痛性皮下結節が出現し受診した.MRIにてT1ならびにT2強調画像で灰白質とほぼ同程度の信号を示し,造影検査ではやや不均一に増強される腫瘍であった.腫瘍発生部位や,MRI画像より皮様囊腫を疑い,切除術を施行した.しかし病理組織所見では,葉巻状の核をもつ紡錐形の細胞の増生と,1層の内皮細胞で構成されている裂隙状の血管腔が散在し,血管腔を取り囲んで線維束が放射状に増殖していた.腫瘍細胞は免疫染色にてα-SMAとHHF-35で陽性,CD34,S100蛋白は陰性であり,血管平滑筋腫(solid type)と診断した.術後2年経過現在,再発は認めていない.過去の報告も含め検討したところ,小児では成人と異なり頭頸部に好発し,無痛性であることも多く,腫瘍サイズも大きい傾向がみられた.疼痛症状は必ずしも当てはまらず,小児の無症状の皮下結節は,血管平滑筋腫も念頭に置く必要がある.

1型糖尿病を伴う慢性皮膚粘膜カンジダ症に口唇の有棘細胞癌を生じた1例

著者: 楠葉展大 ,   辻花光二郎 ,   涌田あすか ,   鬼頭昭彦 ,   十一英子

ページ範囲:P.889 - P.893

要約 43歳,男性.小学生時に難治性の口腔内カンジダ症を発症し,26歳で家族歴のない1型糖尿病を発症した.2005年初診時,口腔粘膜,舌に白苔の付着がみられ,慢性皮膚粘膜カンジダ症と診断し抗真菌薬内服治療をしたが効果が乏しかった.2006年9月ころより右下口唇に白色局面が出現した.生検で有棘細胞癌と診断し切除術を施行した.その後,イトラコナゾール液(イトリゾール内用液®)に変更したところ一時著明に改善したが,徐々に舌が硬化し,病理組織および臨床所見から白板症と診断した.自験例は幼少期発症の口腔内カンジダ症に1型糖尿病を合併しており,自己免疫性多腺性内分泌不全症・カンジダ症・外胚葉性ジストロフィー(autoimmune polyendocrinopathy-candidiasis-ectodermal dystrophy:APECED)を疑った.慢性皮膚粘膜カンジダ症では自験例のように比較的若年で悪性腫瘍を発症することがあり,そのことを念頭に注意深く観察し,早期発見することが重要と考えた.

背部に生じたらせん腺癌の1例

著者: 本田真一朗 ,   藤井紀和 ,   高橋聡文 ,   加藤威 ,   藤本徳毅 ,   田中俊宏 ,   河野晶子

ページ範囲:P.894 - P.898

要約 63歳,女性.5年前より右背部に5cm大の皮下腫瘤を自覚し,徐々に増大したため近医を受診し切除術を受けた.病理組織検査で悪性腫瘍を疑われ当科を受診した.病理組織像は核異型の強い領域と核異型のみられない領域がみられた.後者の領域では2種類の腫瘍細胞が索状または管腔状に増生し好塩基性の小型細胞が外側に好酸性の細胞が中心にみられ,らせん腺腫に相当すると考えた.前者の領域では好塩基性の異型細胞が密に増生し,p53のびまん性の染色とKi-67の標識率の上昇がみられた.以上から,らせん腺腫より生じたらせん腺癌と診断し追加切除した.自験例ではらせん腺癌の部分にp53の過剰発現がみられ,らせん腺腫の悪性化において必須のステップである可能性が考えられた.

広範囲な硬化局面を呈した皮膚原発アポクリン腺癌の1例

著者: 伊東可寛 ,   小林孝志 ,   白樫祐介 ,   五味博子 ,   山崎一人 ,   石田康生 ,   早川和人

ページ範囲:P.899 - P.904

要約 82歳,男性.15年前に左腋窩の皮膚腫瘍を切除し,リンパ節を郭清した.半年前より左頸部の皮膚が硬化し拡大したため当院を受診した.左頸部から左腋窩,左胸背部にかけて境界明瞭な板状の硬化局面を認めた.病理組織所見では,好酸性胞体と腫大した核を有する腫瘍細胞が真皮全層で一列に配列しつつ索状増殖する低分化型腺癌であった.免疫組織化学染色でGCDFP-15,CK7,アンドロゲン受容体は陽性,CK20は陰性,エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体は弱陽性であった.全身検索では骨,胃への転移の他,癌性胸膜炎による胸水貯留を認めた.腫瘍内に乳腺組織,他臓器に原発巣を認めず,断頭分泌像はみられないものの発生部位および免疫組織化学的染色の結果から,多発転移を伴った低分化型皮膚原発アポクリン腺癌と診断した.自験例は切除後15年経過して再発し,急速に拡大する硬化局面および多発転移を呈した稀な症例と考えた.

治療関連骨髄異形成症候群を発症した進行期悪性黒色腫の1例

著者: 吉田憲司 ,   伊藤崇 ,   和泉春香 ,   石河晃

ページ範囲:P.905 - P.910

要約 85歳,男性.2005年に左第5趾悪性黒色腫,左鼠径リンパ節転移(StageIIIB)の診断で,原発巣切除と左鼠径リンパ節郭清を施行した.術後は月1回,IFN-β 300万IU/回皮下注を原発巣周囲と左鼠径部に1年9か月間行った.術後6年目に肝転移が出現し,DAV療法(DTIC 120mg/m2 day 1〜5点滴静注,ACNU 60mg/m2 day 1側管静注,VCR 0.6mg/m2 day 1側管静注)を5クール施行したところ腫瘍最大径は60%縮小し部分寛解となった.しかし,DAV療法終了1年3か月後に進行性の貧血(Hb 5.9g/dl)と血小板減少(13.4×104/μl)があり,末梢血に芽球(1%)が出現した.del(5q),-7,del(12p)の複雑型染色体異常とアルキル化剤(DTIC 3,040mg,ACNU 340mg)使用後であることから治療関連骨髄異形成症候群と診断された.発症から2か月後に多臓器不全で死亡した.副作用として頻度は低いものの,アルキル化剤を含む化学療法に伴う血球減少が遷延するときは治療関連白血病/骨髄異形成症候群を考える必要がある.

Random skin biopsyにて診断に至ったintravascular large B-cell lymphomaの1例

著者: 佐藤さゆり ,   加賀谷真起子 ,   高橋博之 ,   岩崎博 ,   後藤田裕子

ページ範囲:P.911 - P.914

要約 69歳,男性.38℃台の発熱と全身倦怠感で当院血液内科を受診した.末梢血でCRP 6.83mg/dl,sIL-2R 2,520U/mlと上昇しGaシンチグラフィで両肺野にびまん性の集積亢進を認めたが,CT上はリンパ節腫脹や肺病変は存在しなかった.Intravascular large B-cell lymphomaが疑われ当科を紹介された.両側上肢,大腿および左右腹部の計6か所からrandom skin biopsyを施行した.皮膚病理組織所見で真皮深層から皮下脂肪組織の血管内にCD20および79a陽性の異型リンパ球を認め,intravascular large B-cell lymphomaと診断した.本疾患は診断された時点で進行例が多く,早期の診断が必要となる.Random skin biopsyは複数検体を採取する点で患者へ侵襲があるが,早期診断ならびに治療開始の点で有用と考えられた.

臨床統計

新潟大学皮膚科における過去10年間の水疱性類天疱瘡の統計的観察

著者: 松尾淑江 ,   丸山涼子 ,   苅谷直之 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.915 - P.919

要約 2003年1月〜2012年10月の10年間における当科の水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid:BP)患者は男62例,女63例の計125例で,発症年齢は35〜94歳,平均発症年齢は男71.8歳,女75.2歳,全体では73.6歳であった.全年齢を通じて皮疹は多彩で,多くは全身に緊満性水疱と浮腫性紅斑を認めた.掻痒は89.6%と高率に認め,口腔粘膜疹は20.0%に合併した.悪性腫瘍の合併率は11.2%であったが,悪性腫瘍合併例は男女ともすべて70〜90歳台の高齢者であり,BPと悪性腫瘍の合併については偶発的一致の可能性を考えた.治療としては副腎皮質ステロイドの内服を用いた例が76.8%にのぼり,多くはステロイドによく反応するが,シクロスポリンの併用を必要とした難治群が4.8%認められた.本検討では発症年齢による臨床像や治療反応性の違いはなく,またBP180 ELISAの導入前後でBPの治療反応性に有意差は認められなかった.

欧文目次

ページ範囲:P.843 - P.843

文献紹介 Nfatc1は毛包幹細胞の老化現象に関与する

著者: 福山雅大

ページ範囲:P.883 - P.883

 加齢とともに毛髪は減少する.その根底にあるメカニズムについて検討した研究報告である.

 まず,生後2か月の若齢マウスと24か月の高齢マウスの毛周期を比較すると,後者は前者と比べて休止期毛が長く,成長期が短縮していた.表面マーカーを用いて若齢,高齢それぞれのマウスから毛包幹細胞を分離したところ,幹細胞の数は加齢による明らかな減少はないものの,コロニー形成能は高齢マウスの幹細胞で低下しており,加齢による幹細胞の機能障害が示唆された.

文献紹介 細菌・古細菌が持つ獲得免疫システム−CRISPR/Cas

著者: 佐藤美聡

ページ範囲:P.904 - P.904

 細菌などの微生物は,ウイルス(ファージ)感染への対抗手段として,侵入したファージのDNA配列の一部を自らのゲノムに組み込み,その相補配列をガイドとして用いて,再度感染したファージを特異的に認識し破壊する,いわゆる獲得免疫として働く免疫システムCRISPR/Casシステムを保有している.CRISPRとは“Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat”の略で,リピートと呼ばれる短いパリンドローム配列とスペーサーと呼ばれる配列が交互に繰り返されたDNA配列のことである.CRISPRの近傍には,Cas(CRISPR-associated)蛋白ファミリーをコードする遺伝子群が存在する.

 ファージなどの外因性のDNAが挿入されると,Cas複合体は外因性のDNAを認識し,CRISPR座に新しいリピートスペーサーユニットを結合させる.CRISPRのリピートスペーサー配列はpre crRNA(CRISPR-RNA)に転写され,Cas蛋白の複合体によって成熟crRNAにプロセッシングされる.Casと成熟crRNAとの複合体が形成され,crRNAが侵入したファージDNAを特異的に認識するガイドとして働き,侵入したDNAにCas/成熟crRNA複合体が特異的に結合すると,侵入者を分解する.つまり,CRISPR領域のスペーサー配列がファージのDNA配列の一部と同一であれば,細菌は外来性DNAやそこから転写されたRNAを認識し切断できるため,そのファージに耐性となる.スペーサー部分と同一の配列を持つファージには耐性であるが,そこに数塩基の変異が入ったファージに対しては耐性を発揮できないことから,配列特異的に働く獲得免疫システムであることが明らかとなった.

お知らせ 第38回皮膚脈管・膠原病研究会

ページ範囲:P.920 - P.920

会  期:2015年1月23日(金),24日(土)

会  場:国際医療福祉大学三田病院三田ホール(東京都港区)

次号予告

ページ範囲:P.921 - P.921

投稿規定

ページ範囲:P.922 - P.923

あとがき

著者: 伊藤雅章

ページ範囲:P.924 - P.924

 投稿論文の書き方について,編集委員会からのお願いです.今回は,特に『要約』と『はじめに』についてです.論文の『要約』とは何でしょうか? これは,論文本体とは独立したもので,論文全体をまとめたものです.読者がまずは読んで論文の概要が把握できるように,また,中医誌に載る『要約』であることを考えるべきです.特に,『考按』のポイント,あるいは大切なmessageが『要約』に書かれていない原稿が目立ちます.『要約』の最後が「…について報告した」,「…について考案した」などでは困ります.論文は単に症例を報告するだけではありません.報告により,どのような医学的意義があるのか,何が新知見なのか,主要な論旨は何か,結語は,など『考按』で論議した重要なポイントを『要約』の最後に簡潔に入れてください.それと,『要約』は字数制限がありますが,科学論文ですので,正しい文章を書きましょう.学会抄録のような「体言止め」はやめてください.また,投稿規定には書いていませんが,本誌には『要約』のスタイルがあります.これまでに掲載された論文を参照してください.さて,『はじめに』ですが,これは『要約』ではありません.本文の冒頭であり,報告する目的や背景を説明し,読者が論文を読む指針になるようにしてください.ただし,著者の勝手な言い分や推測ではなく,きちんと文献を引用して,科学的な背景を紹介してください.ときに『考按』の内容のような長々とした内容を書いている原稿がありますが,あくまでもイントロですので,詳しいことは『考按』でお願いします.ついでですが,略語を使う場合は,本文で初めてその語が出現するところで「フルスペル(略語)」を記述して,以降は略語のみを使用します.ただし,『要約』は本文ではありませんので,そこで使った略語でも本文ではあらためて「フルスペル」を示す必要があります.また,一度しか使わない語の略語は不要です.最後に,『考按』で文献引用が不十分な原稿もときどき見受けます.科学的根拠やエビデンスをもとに考按するのは当然で,それらの文献をしっかり引用すべきですが,あたかも一般論のように,あるいは著者の意見であるかのように書いてあることがあります.特に後者の場合,他人の論文を「盗用」したことにもなりかねませんので注意してください.

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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