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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科68巻12号

2014年11月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・87

Q考えられる疾患は何か?

著者: 有川順子

ページ範囲:P.931 - P.932

症例

患 者:58歳,女性(東京都在住)

主 訴:左胸下の潰瘍と紅斑

家族歴・既往歴:特記すべきことはない.

現病歴:別荘のある千葉県安房郡天津小湊町の山林内を清掃した.3日後より39℃台の発熱,全身倦怠感,筋痛と乾性咳が出現し,5日後より胸部に皮疹が出現したため当科を紹介され受診した.

現 症:左乳房下に,痂皮が付着した米粒大の潰瘍を認め,周囲に紅暈を伴っていた.潰瘍を中心とする胸部には,掻痒など自覚症状を伴わない母指頭大までの淡紅色斑が散在していた(図1).意識は清明であったが,体温は38.5℃,左腋窩に空豆大のリンパ節を触知した.

マイオピニオン

若い皮膚科医への提言「視野を広げよう!」

著者: 清水宏

ページ範囲:P.934 - P.935

 皮膚科医となってから35年,「光陰矢のごとし」の思いはある.最近の皮膚科学の進歩は驚くほど早く,私が研修医になった頃の35年前とは大違いである.経験を積めば積むほど強く感じることがある.それは「人生は一度しかない,夢は大きいほど良い」ということである.私たち皮膚科医は皮膚科学のプロである.皮膚科の世界で極めたいなら,「日本一になろう」などと江戸時代の武将のような小さい夢は持たず,若い人にはどんな小さな分野でも良いから,その分野の「世界一」を目指してほしい.たとえ夢がかなわなくとも,大きな夢に向かって挑戦するほうが,人生いろいろな意味でより楽しいはずだ.

原著

尋常性乾癬の治療効果が治療の評価と満足度に与える影響

著者: 遠藤雄一郎 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.936 - P.942

要約 乾癬患者の治療と現在の重症度が,患者満足度と新たな治療の志向性にどのように影響しているかをアンケート調査によって定量的に検討した.特に,生物学的製剤使用者とそれ以外とで治療の実態と意識が異なるかについて着目した.当院の外来に通院する尋常性乾癬患者の生物学的製剤の使用者44人と未使用者12人,計56人を対象に,2012年12月からの期間に,郵送法自記式質問紙を用いて調査して,28人から回答を得た(回収率50%).従来治療を受けている患者(20人)より,生物学的製剤で治療されている患者(8人)のほうが治療満足度とQOLが高い傾向にあった.また,従来治療を受けている患者では,症状の改善や可視性が治療満足度とQOLに関連した.しかし,それら要因は新規治療の志向とは関連がなかった.生物学的製剤により高い満足度とQOL,症状の改善が達成されており,患者の支えとなっている現状が示唆された.

症例報告

右前腕に限局した再発性環状紅斑様乾癬の1例

著者: 土橋人士 ,   長谷川敏男 ,   秋山俊洋 ,   込山悦子 ,   池田志斈

ページ範囲:P.943 - P.946

要約 33歳,女性.1年前より右前腕に紅斑が出現し,ステロイド外用,抗真菌剤外用などを行ったが出没を繰り返していた.初診時,発熱などの全身症状はなく,辺縁に襟飾り状の鱗屑,痂疲が付着し,粟粒大膿疱を伴う環状の紅斑が右前腕に存在していた.膿疱は無菌性で,真菌も検出されなかった.病理組織像では角層下膿疱と,表皮内に好中球浸潤を伴った海綿状態がみられた.臨床像,病理組織所見より右前腕に限局した再発性環状紅斑様乾癬と診断した.診断後,ビタミンD3軟膏,ステロイド軟膏の外用とターゲット型エキシマライト照射併用にて経過観察中である.再発性環状紅斑様乾癬で,自験例のように皮疹が限局している症例は非常に稀である.限局した皮疹が経過中に汎発化した報告例もあるため,今後慎重に経過を観察する必要がある.

小児に生じた皮下型環状肉芽腫の1例

著者: 長縄真帆 ,   早川彰紀 ,   柴田章貴 ,   満間照之

ページ範囲:P.947 - P.949

要約 3歳,男児.初診6か月前より後頭部に可動性ある複数の皮下結節が出現したため当科を受診した.初診時,後頭部に可動性のある小指頭大までの皮下結節を数か所認めた.血液検査では異常はなく,頭部CTにて後頭部皮下に孤立性病変を認めた.生検による病理組織診断では,軽度の炎症所見を認めるのみで確定診断には至らなかった.経過観察中に結節が5個までに増え,痛みを伴ってきたため,家族の希望もありすべての結節を全身麻酔下に摘出した.全摘標本の病理組織診断では,真皮に膠原線維の類壊死とそれを取り囲むように組織球とリンパ球が浸潤し柵状に配列し浸潤しており,皮下型環状肉芽腫と診断した.その後,再発を認めない.皮下型環状肉芽腫は臨床像からの診断が困難であり,環状疹を伴わないことも半数以上あり,確定診断には病理組織学的診断が必要であった.当疾患は小児に多いため,小児に皮下結節が生じた際には環状肉芽腫も念頭に置く必要がある.

抗リン脂質抗体症候群を併発した男性全身性エリテマトーデスの1例

著者: 森志朋 ,   影下雄一 ,   佐藤隆亮 ,   高橋和宏 ,   赤坂俊英 ,   小林仁

ページ範囲:P.951 - P.956

要約 49歳,男性.2001年より近医で混合性結合組織病と診断され通院していた.2012年6月に多発性脳梗塞を発症し当院神経内科で入院加療した.10月より手足を主体に角化性落屑性紅斑が出現し,疼痛も伴うため当科を受診した.血液検査では汎血球減少,抗核抗体,抗ds-DNA抗体,RNP抗体,抗カルジオリピン抗体陽性で蛋白尿,血尿もみられた.病理組織検査では角質増殖,表皮突起の不規則な延長,基底層の液状変性,表皮内細胞浸潤と血管腔にフィブリン栓形成を認めた.11月に全身倦怠感が出現し体動困難となり入院した.抗リン脂質抗体症候群を伴うSLEの急性増悪と診断しステロイドパルス療法や免疫グロブリン療法などを施行し全身症状,皮疹とも改善していたが,2013年7月に急性心臓死した.自験例のごとく急激に出現した角化性皮疹の出現を診た場合は早急な全身精査が必要であると考える.

耳垂に生じた毛母腫の2例

著者: 池田真希 ,   伊東孝通 ,   栗原雄一 ,   内博史 ,   師井洋一 ,   古江増隆

ページ範囲:P.957 - P.960

要約 症例1:46歳,女性.右耳垂に径3.2cmの暗赤色調の皮膚に覆われた,骨様硬の皮下腫瘤を認めた.症例2:3歳,男児.左耳垂に径0.5cmの硬い紅色の皮下結節を認めた.2症例とも病理組織学的に好塩基性細胞と陰影細胞の増殖から成る腫瘍を認め,毛母腫と診断した.耳垂に生じた毛母腫の報告は稀だが,この部位に生じた原因の1つとして,外的刺激が考えられた.毛母腫は日常診療でよく遭遇する良性腫瘍であるが,硬い皮下腫瘍を診たら耳垂であっても鑑別診断の1つとして念頭に置くべきと考える.

合併母斑(combined nevus)の1例

著者: 五木田麻里 ,   小猿恒志 ,   仲田かおり ,   堀川達弥

ページ範囲:P.961 - P.965

要約 62歳,女性.5〜6年前に鼻尖部に無症候性の黒褐色斑が出現し増大してきた.受診時,鼻尖部中央に径4mmの黒褐色斑を認め,ダーモスコピーでは色素ネットワークはなく,不整形で灰黒色から白色調の不均一な色素沈着を認めた.病理組織学的には真皮浅層に母斑細胞が巣状に増殖し,真皮浅層から深層にかけてメラニン顆粒を有する紡錘形のメラノサイトが大型のメラノファージを伴って増殖していた.増殖している母斑細胞やメラノサイトに異型性はなく,真皮内母斑と青色母斑からなる合併母斑と診断した.合併母斑の本邦報告例は少ないがメラノサイト系の母斑全体の約1%を占めるとの報告もある.合併母斑は臨床像やダーモスコピー所見,病理組織学的所見のいずれでも悪性黒色腫との鑑別を要することがあり,合併母斑という病型を認識することは大切である.

後頭部のossifying fibromyxoid tumorの1例

著者: 島佳世 ,   渡邊憲

ページ範囲:P.967 - P.970

要約 67歳,男性.20年程前から出現した左後頭部の皮下結節を主訴に受診した.径32mm大で,半球状に隆起し,骨様硬に触れ,皮膚との癒着はなく,下床との可動性はなかった.頭部CT上石灰化を認め,頭蓋骨との連続性はなかった.全摘し,肉眼的に充実性かつ硬い球状の白色の結節であった.病理組織学的には膠原線維間に類円形の核を有する腫瘍細胞が多結節状,分葉状に増殖していた.腫瘍細胞の異型は軽度で,核分裂像は3/10HPFであった.EMA,S100蛋白,デスミン,広域サイトケラチンはすべて陰性で,ビメンチンのみが陽性だった.また,腫瘍中心性の成熟骨の形成を認めた.骨組織には異型性はなく,ossifying fibromyxoid tumorと診断した.Ossifying fibromyxoid tumorの本邦報告例で腫瘍中心性の骨形成の報告がないのは,辺縁の骨形成が特徴の腫瘍のために注目されていなかった可能性がある.

帝王切開の手術瘢痕部に生じた異所性子宮内膜症の1例

著者: 丸山彩乃 ,   早石佳奈 ,   水野麻衣 ,   吉良正浩 ,   福田健児 ,   大橋寛嗣

ページ範囲:P.971 - P.973

要約 33歳,女性.2006年に帝王切開の既往があった.2012年5月上旬に下腹部に疼痛を伴う皮下腫瘤を自覚した.近医産婦人科を受診したところ,腹部エコーにて帝王切開の手術瘢痕下に皮下腫瘤を認め,2012年7月中旬当科を紹介受診し,造影CTにて帝王切開の手術瘢痕下に径16mm大の境界不明瞭な皮下腫瘤を認め局所麻酔下にて切除した.病理組織学的には,増生した膠原線維内に子宮内膜組織に類似した1層の円柱上皮からなる管腔構造を多数認め,帝王切開の手術瘢痕部に生じた異所性子宮内膜症と診断した.術後再発は認めていない.帝王切開の手術瘢痕部に皮下腫瘤を認める場合には,異所性子宮内膜症も念頭に置く必要がある.

センチネルリンパ節に転移を認めた下腿エクリン汗孔癌の1例

著者: 伊東可寛 ,   小林孝志 ,   白樫祐介 ,   五味博子 ,   福積聡 ,   藤井博史 ,   早川和人

ページ範囲:P.974 - P.978

要約 76歳,男性.約30年前から左下腿に爪甲大の扁平隆起性赤褐色局面を自覚し,3年前より急速に増大したため受診した.初診時,左下腿内側にびらんを伴う易出血性の径約5cmの広基性紅色腫瘤を認めた.病理組織所見は淡染性で多角形の胞体を有するporoid cell様の異型細胞と,好酸性で大型のcuticular cell様の異型細胞で構成される大小の充実性胞巣が真皮内で帯状に吻合して増殖し,細胞質内や細胞間に管腔様構造を呈しておりエクリン汗孔癌と診断した.PET-CTで明らかな転移巣を認めなかった.腫瘍辺縁より1cm離して拡大切除,色素法・蛍光法併用によるセンチネルリンパ節生検を施行した.大伏在静脈外側にセンチネルリンパ節を同定して摘出し,転移を認め,リンパ節郭清術を施行した.画像所見でリンパ節転移所見を認めない場合でも,積極的なセンチネルリンパ節生検が有用であると考えた.

メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患の1例

著者: 神野直子 ,   石黒直子 ,   川島眞 ,   菊池亮太 ,   花岡成典 ,   山中寿

ページ範囲:P.979 - P.984

要約 72歳,女性.関節リウマチがあり,6年前からメトトレキサート(MTX)12.5mg/週を開始され,コントロールされていた.2012年4月からCRPが7.27mg/dlまで上昇し,10月上旬から発熱と胸部CTにて肺に多発性の結節影を認めたため,10月下旬からMTXを中止した.同時期より両下腿にコイン大の結節が出現した.病理組織像では,真皮下層から皮下脂肪織の膠原線維および一部の血管壁に強い変性像があり,CD20陽性Bリンパ球の浸潤を認めた.さらにその外方にはCD3,CD8陽性Tリンパ球が浸潤していた.CD20陽性Bリンパ球にほぼ一致してLMP-1染色,EBER in situ hybridizationで陽性所見を認めた.血液検査ではsIL-2R 1,650U/ml,血中EBウイルスDNA値7.3×10コピー/106 cellsと上昇していたが,MTX中止後,肺の結節影,下腿の結節の軽快とともに,正常範囲内に復した.以上よりMTX関連リンパ増殖性疾患と診断した.免疫抑制状態の患者で肺や皮膚に結節を認めた場合は本症の可能性も考慮すべきと考えた.

皮膚型成人T細胞性リンパ腫/白血病(ATLL)の1例

著者: 高野哲郎 ,   森田美穂 ,   佐藤勘治 ,   饗場伸作 ,   金子聡 ,   梶浦智嗣 ,   田中真里

ページ範囲:P.985 - P.990

要約 48歳,女性.鹿児島県出身.幼少期より慢性湿疹として治療を受けていた.1994年頃より皮疹が増悪し,2011年9月から頸部,体幹,四肢に褐色局面が出現した.病理組織検査にて異型リンパ球の表皮向性があり,免疫染色でこれら細胞はCD3,CD4,CD5陽性であった.末梢血に異型リンパ球の出現はみられなかった.臨床検査所見上,末梢血の抗human T-cell lymphoma/leukemia virus, type 1(HTLV-1)抗体陽性であり,皮膚生検組織のサザンブロッド法にてHTLV-1 proviral virus DNAのモノクローナルな増加を認めた.各種画像検査で異常なく,皮膚所見のみを呈する皮膚型成人T細胞性リンパ腫/白血病と診断した.慢性湿疹としての経過中であったがより浸潤の強い皮疹が出現したため,2度の皮膚生検,および抗体検査により,皮膚型ATLLと診断した.治療はPUVA療法を選択し経過は良好である.これまでの臨床症例を総合的に検討した結果,長期の経過を辿る皮膚型ATLLに対し急性転化に注意し観察を要すると考える.

左鼠径部皮膚腺病の1例

著者: 小野与里子 ,   石川理穂 ,   市川元司

ページ範囲:P.991 - P.995

要約 87歳,男性.16歳時,肺結核症の既往あり.左鼠径部に熱感に乏しい皮膚腫瘤が出現し,徐々に増大した.精査の結果,精巣結核が認められた.皮膚生検組織では結核病変は認められず,非特異的な炎症所見のみであったが,生検組織からの培養,PCRなどにて結核菌(Mycobacterium tuberculosis)が検出された.精巣病変と皮膚病変が連続していたため,皮膚腺病と診断し,諸検査では肺の活動性結核はなかった.高齢のため,ピラジナミドを除く3剤併用抗結核剤療法にて治癒した.自験例は鼠径部という稀少な部位の皮膚腺病である.炎症所見に乏しい膿瘍形成を認めた場合,特に高齢者では,生検の結果によらず,結核症の可能性を念頭に置き,精査する必要があると考えた.

膜性糸球体腎炎を合併したCronkhite-Canada症候群の1例

著者: 中野純二 ,   浅海千秋 ,   斎藤満

ページ範囲:P.997 - P.1000

要約 80歳,男性.脱毛,爪甲変形,下痢を主訴に受診した.上下部消化管内視鏡検査にて消化管ポリポーシスを認め,Cronkhite-Canada症候群と診断した.プレドニゾロン40mg/日の内服にて消化器症状は改善,脱毛,爪甲変形も軽快,プレドニゾロンを漸減,中止した.その6か月後全身の浮腫,低蛋白血症,蛋白尿が出現した.蛋白漏出性胃腸症は認められず,腎生検にて糸球体上皮細胞直下の基底膜に顆粒状にIgGが沈着した膜性糸球体腎炎が認められ,膜性腎症によるネフローゼ症候群と診断された.再度プレドニゾロン30mg/日内服を開始したが,低蛋白血症が改善せず右心不全にて永眠した.Cronkhite-Canada症候群と膜性糸球体腎炎の合併例の報告は少ないが共通した免疫異常が存在する可能性があり,重要な合併症の1つとして注意する必要がある.

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欧文目次

ページ範囲:P.929 - P.929

文献紹介 胞性線維症患者の腸管幹細胞オルガノイドにおけるCRISPR/Cas9によるCFTRの機能的修復

著者: 深田彩子

ページ範囲:P.956 - P.956

 囊胞性線維症(cystic fibrosis:CF)はCl-チャネルをコードするCFTRの変異による常染色体劣性遺伝疾患で,白人に多い.症状は膵線維化,消化吸収障害,呼吸器感染症などであり,根本的な治療法はいまだない.

 本研究チームはこれまでに,成人の腸管由来の幹細胞から腸管上皮オルガノイドを作り出すことに成功している.腸管上皮オルガノイドは上皮細胞シートによって作られた中空の球状構造で,自己複製するLgr5陽性幹細胞と分化した各種細胞が絨毛様構造を取る,いわば「ミニ腸管」である.本研究では,CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子編集によりCF患者由来の腸管幹細胞において遺伝子変異を修復し,CFTRチャネルが機能回復した腸管上皮オルガノイドの作成に成功した.

文献紹介 ヒトiPS細胞を用いたヒト毛包幹細胞の作製

著者: 福田桂太郎

ページ範囲:P.990 - P.990

 毛幹の立毛筋付着部であるバルジ部に存在する上皮幹細胞(EpSCs)は,毛包幹細胞とも呼ばれ,毛包のみならず脂腺や表皮を再生する能力を有し,毛髪疾患や難治性の創傷に対する再生医療への利用が期待されている.EpSCsの細胞表面にCD200,ITGA6が発現していることが明らかとなり,現在セルソーターを用いてEpScを単離することが可能となったが,EpSCsをES細胞やiPS細胞から作り出すことはできていない.

 著者らは,ヒトiPS細胞(hiPSCs)を上皮幹細胞様細胞,そしてケラチノサイトへと分化させる従来の培養法を改良し上皮成長因子(EGF)を加えることで,培養11〜18日目に認めるCD200陽性,ITGA6陽性の上皮幹細胞様細胞の割合を従来の方法よりも大幅に増やすことに成功した.この細胞集団(hiPSC-EpSCs)は,CD200陰性,ITGA6陽性の上皮幹細胞様細胞と比較して,高いコロニー形成能を示し,ヒトEpSCsで発現するサイトケラチン15(KRT15)が高発現していた.またhiPSC-EpSCsは,マイクロアレイ解析にて,ヒトEpSCsと類似した遺伝子発現プロファイルをもつことがわかった.

書評 —監修:福井次矢 編:小松康宏,渡邉裕司—Pocket Drugs 2014

著者: 大内尉義

ページ範囲:P.1001 - P.1001

 福井次矢先生が監修され,小松康宏先生,渡邉裕司先生お二人の編集と,臨床疫学,臨床内科学,臨床薬理学を専門とされるお三方の手による『Pocket Drugs 2014』は,現在,わが国の臨床現場において使用されているほぼすべての医薬品の効能,適応,用量・用法,副作用や禁忌等の注意事項など,薬物療法に関する最新の知識をまとめたものである.言うまでもなく,薬物治療は医療の中心であり,すべての医師は現行の薬剤について精通しておく必要がある.本書はその手助けをする目的で編纂されている.

 本書の最大の特徴は,その名の通りポケットに入るサイズの中に,個々の医薬品に関する情報が満載されていることであるが,多忙な外来,入院診療の場で使われる本書のようなreference bookは,必要な情報に素早くアクセスできることがきわめて重要であり,本書はそのためにさまざまな工夫がされている.4色刷りのカラフルな紙面は,項目による色使いが統一されていてわかりやすいだけでなく,見ていて楽しい.索引も事項索引,薬剤索引が充実していて目的の薬剤へのアクセスが容易である.また,各章の冒頭に,そのジャンルの薬剤の特徴,作用機序などの総論的事項がわかりやすく記載されているのも本書の有用性を高めている.さらに,その中に,ガイドラインにおけるその薬剤の位置付けとエビデンスが記載されており,また個々の薬剤の最後にも「治療戦略」として〈evidence〉の項があり,エビデンスを重視する編集の特徴がよく表れている.薬剤の写真付きであること,薬価が記載されていることも有用で,さまざまな点で大変よく工夫されている.

次号予告

ページ範囲:P.1005 - P.1005

投稿規定

ページ範囲:P.1006 - P.1007

あとがき

著者: 渡辺晋一

ページ範囲:P.1008 - P.1008

 久しぶりに乾癬学会に参加した.相変わらず,生物製剤が華やかで,今後さらなる生物製剤が上市されるという.メトトレキサート(MTX)でコントロールされる重症乾癬患者が少なくないにもかかわらず,生物製剤である.確かに生物製剤のおかげで,皮膚科の売り上げが伸び,病院の科長会でも肩身の狭い思いをしなくなった.しかしこれらの医療費の多くは税金で賄われている.日本では乾癬にシクロスポリン(Cys)が使用されているが,毎年講義をしているバンコクの国立皮膚科研究所で,アラブ首長国連邦の先生から「確かにCysは乾癬に有効であるが,やめるとすぐに再発する.その結果内服が長期に及び,腎障害などの副作用が出る.しかも値段が高い.どうしてCysを使うのか?」と質問されたことがある.では彼らは何を使うかというとMTXで,副作用はほとんどないという.帰国後このことを日本のオピニオンリーダーに言うと,日本人は外国人と違って肝炎が多く,肝生検をしなければならないからと言う.本当かなと思って,日本のリウマチの専門家に聞いたところ,MTXはほとんど副作用がなく,肝生検など全く必要がないと言っていた.ただし稀に間質性肺炎を起こすので,時々胸部X線を撮ったほうがよいが,MTXによる間質性肺炎はステロイドの内服が著効するので,心配することはないと教えられた.また最近皮膚科の専門家からMTXはリンパ腫を引き起こすから,危険だという話を聞く.確かにMTXの長期内服により,MTX関連リンパ増殖性疾患が生ずることがあるが,MTXの投与を中止すると自然によくなる.このことを知らない皮膚科の重鎮は少なくなく,リンパ腫と診断されて抗癌剤治療を受けると死亡することもある.米国の乾癬のガイドラインでは,Cysは重症で免疫不全がない乾癬患者が対象となるが,さらに少なくとも1つ以上の全身療法を行って無効である患者が適用となっている.また副作用のため,1年以上連続してCysを使用すべきではないと記載されている.それにもかかわらず,日本ではMTXの使用を阻止する抵抗勢力が多い.利益相反のためにMTX導入に反対しているのであれば,患者に対する背信行為である.ようやく日本皮膚科学会の一部の先生の努力により,MTXが公知申請される運びとなり,喜ばしいことである.

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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