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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科68巻13号

2014年12月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・88

Q考えられる疾患は何か?

著者: 島田浩光

ページ範囲:P.1015 - P.1016

症例
患 者:17歳,男性,高校柔道部員
主 訴:被髪頭部の紅斑,鱗屑,膿疱
家族歴・既往歴:特記すべき事項なし.
現病歴:初診の約半年前より後頭部の類円形紅斑が出現した.その後軀幹にも同様の紅斑が出現した.近医にて加療され,軀幹の紅斑は軽快したが後頭部は増悪し,膿疱も出現してきた.
現 症:後頭部から右側頭部を中心に数mm程度の小紅斑と紅色丘疹,膿疱が混在して存在し,表面には鱗屑,痂皮が付着していた.病変部には易抜毛性がみられた(図1).

マイオピニオン

今年の教室の目標から

著者: 秀道広

ページ範囲:P.1018 - P.1019

 1. はじめに
 私の教室では,毎年1月に全員が1年の振り返りと抱負を発表することにしている.病院からは売り上げや患者数増加のプレッシャーは重く,大学人としては研究費獲得のための論文の数とインパクトファクターが否応なく問われ続ける.いずれも数値という,客観的にして明確な評価による動機付けの方法であり,競争社会のなかでは優れた仕組みであろう.しかし,それらに追われるあまり,方便であったものが目標となり,いつのまにか本来大切にすべきものであったはずのものが彼方に潰えてしまいかねない.われわれは,程度の差はあれ厳しい競争と努力を経て活動している有能な技能集団であり,誰にでもできることではない高度な課題に取り組んでいることは間違いない.年に一度の発表は,各自が隘路に陥らないため,教授以下全員が自らを総括し,できたことについては讃え合い,皆の前で目標を表明することで決意を新たにする営みである.主宰者である私は,自身の総括と抱負に加え,年ごとの教室の目標を設定することにしている.表1に示す教室の目指す仕事と教室員の信条は,そのような過程のなかで形成された,いわば教室の憲章である.

症例報告

発汗低下を訴えた4例の温熱発汗試験の結果について

著者: 田中登希子 ,   林良太 ,   松尾淑江 ,   丸山涼子 ,   五十嵐可奈子 ,   苅谷直之 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.1020 - P.1024

要約 2012年に発汗低下を主訴に当科を受診した4例に対し温熱発汗試験を施行した.2例は発汗を認めず,特発性後天性全身性無汗症(idiopathic acquired generalized anhidorosis:IAGA)と診断した.残る2例は正常に発汗を認め,1例はコリン性蕁麻疹と診断し,もう1例は皮膚科的に異常を認めず,各種自己抗体も陰性であった.以上の4例と過去に当科で温熱発汗試験を施行した19例を併せ,発汗低下を訴える症例の検討を行った.約半数の症例で正常発汗を認め,原疾患は主にコリン性蕁麻疹,アトピー性皮膚炎であった.皮膚科的に異常を認めない症例も存在し,内科・精神科疾患等の原因検索を要する症例もあると考えられた.発汗低下を認めた症例の多くはIAGAであり,ステロイドパルス療法施行例は大部分の症例で軽快した.発汗低下を主訴とする場合,まずは積極的に温熱発汗試験を実施すべきである.

成人後に顕在化したびまん性真性静脈拡張症の1例

著者: 大田玲奈 ,   稲福和宏 ,   押川由佳

ページ範囲:P.1025 - P.1030

要約 39歳,男性.初診10年前より鼠径部に軟腫瘤を自覚し,徐々に増加したため切除を希望し受診した.初診時,ドーム状常色軟腫瘍とエコーにて皮下腫瘍を計6個認め,臨床検査で血小板9.5×104/μl,プラスミノーゲン55%,トリグリセリド1,977mg/dlを認めた.腸骨部腫瘍の切開で腫瘍から静脈性の出血を認め,小豆大の結石を有する囊腫を摘出した.病理組織像では蛇行・拡張した奇形血管を認め,血管壁は内膜の菲薄化と外膜の肥厚が混在していた.MRIにて臀部,大腿の筋層内と皮下にT1低信号,T2高信号,不均一な造影効果を示す類円形や管状の腫瘍を多数認めた.CTでは,脾臓に血管腫を疑う多発腫瘍がみられた.これらの所見より広範囲の皮下・深部筋肉内に静脈奇形を生じるびまん性真性静脈拡張症と診断した.本症は進行性の経過を辿るため長期にわたる経過観察と症状に応じた治療が必要となる.

サラゾスルファピリジン(サラゾピリン®)によるdrug-induced hypersensitivity syndromeの1例

著者: 伊東由美子 ,   小川浩平 ,   森戸啓統 ,   大黒奈津子 ,   福本隆也 ,   小林信彦 ,   浅田秀夫

ページ範囲:P.1031 - P.1035

要約 64歳,女性.前医で非特異的腸炎に対してサラゾスルファピリジンの内服を開始した.内服32日目に発熱,33日目に全身に紅斑が出現したため内服を中止した.紅斑の改善を認めず,肝機能障害もみられたため精査加療目的で発症10日目に当院に転院した.転院時,紅皮症を呈し,顔面の浮腫と口囲の落屑および口唇の腫脹を認めた.頸部リンパ節腫脹があり,血液検査では好酸球増多を伴う白血球増多がみられた.Drug-induced hypersensitivity syndromeを考え,プレドニゾロン40mgの内服を開始した.症状は一旦改善したが,発症15日目に発熱,18日目にはASTおよびALTの再上昇,血小板減少を認め,ヒトヘルペスウイルス6型DNAを検出した.プレドニゾロンを60mgに増量したところ症状は軽快し,以後プレドニゾロンを漸減したが症状の再燃はなく,発症49日目に退院した.リンパ球刺激試験の結果から,サラゾスルファピリジンの分解産物が原因の可能性が高いと考えた.

Nuchal type fibromaの2例

著者: 石川裕子 ,   吉田憲司 ,   岩瀬七恵 ,   関東裕美 ,   石河晃

ページ範囲:P.1037 - P.1043

要約 症例1:67歳,男性.糖尿病の既往歴あり.後頸部の皮下腫瘤で受診した.後頸部正中に15mm大の弾性硬,可動性良好で境界不明瞭な皮下腫瘤を認めた.空腹時血糖113mg/dl.症例2:42歳,男性.既往歴は特にない.右耳後部の皮下腫瘤で受診した.23×16mm大の弾性やや硬,境界不明瞭な皮下腫瘤であり,超音波検査で周囲の皮膚と同エコーの皮膚肥厚像を認めた.病理組織所見は,2症例ともに真皮から脂肪組織にわたり境界不明瞭,不規則で太い膠原線維束が増生していた.腫瘍底部で膠原線維に取り囲まれた島状の脂肪組織と神経組織を認めた.免疫染色ではα-平滑筋アクチン陰性,CD34およびCD99陽性であった.以上より自験例はnuchal type fibromaと診断した.本疾患の報告は少なく稀な疾患とされているが,今回短期間に2症例を経験した.疾患の認知度が低いため,脂肪腫,瘢痕,浮腫性硬化症として見過ごされている可能性がある.

耳介に生じた血管平滑筋腫の1例

著者: 鴇田真海 ,   川瀬正昭 ,   中川秀己 ,   林淳也

ページ範囲:P.1045 - P.1048

要約 33歳,男性.初診の5年前より,左耳介前面に自覚症状のない紅色丘疹が出現した.その後,増大傾向を認めたため,当科を受診した.初診時,左耳介前面に12×15mm大,表面に血管拡張を伴う暗紅色の半球状に隆起する弾性軟の腫瘤を認めた.自発痛,圧痛はなく,下床の軟骨との可動性は不良であった.病理組織像では真皮内に被膜に覆われた結節を認めた.一部には裂隙状の血管の増生と,間質に紡錐形核を有する腫瘍細胞が増生していた.これら細胞はMasson染色で赤染し,免疫染色でデスミン,α-SMAが陽性であった.組織型は森本らの分類による静脈型の血管平滑筋腫と考えた.耳介部は結合織が疎であり,直下に軟骨があるという特徴から,赤色から紫色を呈し,外方向に突出する臨床をとることが多い.また,組織型では静脈型の頻度が高く,疼痛を伴わない傾向がみられる.耳介部にこのような特徴を有する腫瘤を認める場合,血管平滑筋腫を疑う必要がある.

CK20染色が診断に有用であった脂腺母斑に合併した毛芽腫の1例

著者: 江上将平 ,   野村尚志 ,   笠井弘子 ,   横山知明 ,   藤本篤嗣 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.1049 - P.1053

要約 72歳,男性.幼少時より認める後頭部の常色隆起性局面内に黒色斑の新生を指摘され当院を受診した.臨床像より脂腺母斑上に生じた基底細胞癌を疑い全切除した.病理組織像にて表皮より連続する基底細胞様細胞から構成される腫瘍胞巣を認め,表在型の基底細胞癌(basal cell carcinoma:BCC)を疑わせたが,一部で毛芽様構造を認め,CK20が陽性であったことから毛芽腫と診断した.脂腺母斑は二次的にBCCを主とする種々の悪性腫瘍が発生すると報告されていたが,近年の病理組織像検討では過去に報告された続発性のBCCの多くは毛芽腫であったと結論づけられている.BCCとの鑑別にCK20染色が有用とされており,自験例でも診断の一助となった.

リンパ腫様丘疹症の1例

著者: 山本悠飛 ,   佐々木哲雄 ,   鈴木亜希 ,   竹下芳裕 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.1055 - P.1058

要約 37歳,女性.32歳頃より四肢,軀幹に掻痒のない丘疹が出没した.37歳時,掻痒を伴うようになり,当科を紹介初診した.抗アレルギー剤内服,ステロイド外用剤にて掻痒は改善し,一時皮疹は消退した.その後も再発を認めた際には同様の加療を行っていた.42歳の再診時には軀幹,上肢に掻痒のない米粒大の淡紅色丘疹が散在していた.皮膚生検にて真皮上層から中層に小型から中型の異型リンパ球や組織球が主体で,一部にクロマチンに富む大型異型細胞を混ずる稠密な細胞浸潤を認めた.大型異型細胞はCD30陽性で,リンパ腫様丘疹症と診断した.血液,CT検査で異常はなかった.皮疹は自然消退し,2年半以上,再燃を認めない.初診から確定診断まで5年を要し,適切な時期での皮膚生検が必要であった.本疾患は基本的には良性の経過をとるが,CD30陽性未分化大細胞リンパ腫などの悪性リンパ腫との鑑別,進展,併発例の報告もあり,今後の注意深い観察が重要である.

多発皮下結節を呈したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の1例

著者: 山田陽三 ,   尾藤利憲 ,   小谷晋平 ,   小倉香奈子 ,   錦織千佳子

ページ範囲:P.1059 - P.1063

要約 76歳,男性.初診時全身に多発した皮下結節を呈し,病理組織学的にCD20,CD79a,MUM1,Bcl-2,Bcl-6陽性の腫瘍細胞が脂肪織に限局してみられた.また,LDHの上昇(352IU/l),精査にて骨,リンパ節病変を認めたことより,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫,Ann Arbor分類Ⅳ期(International Prognostic Index:high risk群)と診断した.著明な心機能低下(左室駆出率25%)を合併しており,低用量のエトポシド内服治療(25〜50mg/日)を選択し,皮下結節は縮小傾向を示し,ある程度の効果を得たが,心室細動により永眠した.過去の報告において皮膚原発のものは組織学的に脂肪織に限局して病変を認めるものはなく,自験例も精査にて骨,リンパ節病変があったことより,皮膚以外の臓器に原発したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と考えた.

Cubital bursitisの1例

著者: 倉石夏紀 ,   田村敦志

ページ範囲:P.1064 - P.1066

要約 76歳,女性.初診の約1か月前より出現し比較的急速に増大する左肘窩の皮下腫瘤を主訴に受診した.初診時,左肘窩に60×50mmの弾性硬,囊腫状に触知する皮下腫瘤があった.MRIではT1強調画像で上腕骨の屈側に筋肉と等信号,T2強調画像で高信号の占拠性病変が,上腕二頭筋腱を取り囲むようにみられた.穿刺により黄色調で漿液性の液体が吸引され,画像所見と合わせてcubital bursitisと診断した.肘頭滑液包炎はよく知られているが,滑液包炎の肘窩発生例は少なく,皮膚科領域での報告は稀である.肘窩の腫瘤の鑑別疾患の1つとして皮膚科医も認識しておく必要がある.

骨髄異形成症候群患者に生じた皮下Mycobacterium kansasii感染症の1例

著者: 丸田直樹 ,   登谷晶美 ,   中溝聡 ,   中川雄仁 ,   谷岡未樹

ページ範囲:P.1067 - P.1071

要約 73歳,男性.血液内科で骨髄異形成症候群の治療中であり,約半年前から副腎皮質ステロイドの全身投与がされていた.2週間前より,発熱および右胸腹部の発赤,腫脹が出現し,蜂窩織炎として抗生剤や抗真菌薬が投与されたが改善しないため,当科に紹介された.生検病理組織所見では,真皮深層から皮下脂肪織にリンパ球,好中球,組織球からなる著明な炎症細胞浸潤と,一部に類上皮細胞肉芽腫の形成を認め,生検組織の抗酸菌培養でMycobacterium kansasiiが同定された.各種検査にて他臓器病変を認めず,自験例を皮下M. kansasii感染症と診断した.リファンピシンを含む5剤併用療法を行ったところ,速やかに軽快した.M. kansasiiは肺感染症を起こすのが一般的で,皮膚科領域での報告は稀だが,免疫抑制状態にある患者で,感染症が疑われる場合には,早期から抗酸菌の検索もすべきであると考えた.

難治性潰瘍を形成した皮膚Mycobacterium abscessus感染症の1例

著者: 松本玲子 ,   園部博子 ,   瀧玲子 ,   本田えり子 ,   戸田憲一 ,   田中麗沙 ,   齊藤晋 ,   鈴木義久

ページ範囲:P.1073 - P.1076

要約 52歳,男性.左大腿部の圧痛を伴う約5cmの強い浸潤を触れる紅斑を主訴に受診した.蜂窩織炎と診断し塩酸セフカペン・ピボキシルを処方したが自己中断した.1か月後の再診時には紅斑は11×8cmに拡大し,CRPは1.7mg/dlと軽度上昇していた.波動部位の穿刺にて橙色半透明の内溶液が吸引され,培養にてMycobacterium abscessusが検出された.紅斑の中央部は自壊しポケットを有する潰瘍を形成した.レボフロキサシン400mg/日およびクラリスロマイシン500mg/日の内服,病変部全摘術の併用にて治療した.切除標本の病理組織学的検査では,多核巨細胞を伴う類上皮細胞肉芽腫を認めた.抗菌剤は術後2か月まで,計4か月間投与した.術後1年経過するが再発を認めていない.感染源は自宅温泉水である可能性が示唆された.水を介した皮膚感染症にはM. abscessus感染症も鑑別に挙げる必要がある.

ステロイド内服にて軽快せず,歯性病巣の除去が奏効した肉芽腫性口唇炎の1例

著者: 西村(平井)千尋 ,   河野通良 ,   高橋愼一 ,   薮下雅子 ,   浮地賢一郎 ,   片倉朗 ,   田中陽一 ,   加藤友衛

ページ範囲:P.1077 - P.1081

要約 52歳,女性.1年前より上口唇左側に持続性の腫脹を自覚し,前医にてプレドニゾロンやベシル酸ベポタスチン,トラネキサム酸による内服治療を行うも軽快しなかった.当科初診時,上口唇左側は腫脹し鼻唇溝付近にかけて発赤を伴っていた.血液検査上異常なく,生検病理組織像では粘膜固有層上層の浮腫と類上皮肉芽腫を認めた.以上より肉芽腫性口唇炎(cheilitis granulomatosa:CG)と診断した.パノラマX線写真で下顎左側第2大臼歯に根尖病巣を認め,根尖病巣治療により初診7か月後に口唇の腫脹は著明に改善した.CGの発症機序は不明な点が多く,治療法も確立していない.しかし,CGでは半数以上の症例で歯性病巣が関与しているとの報告もあり,自験例のようにまず根尖病巣などの歯性病巣の検索・治療を行うことが重要であると考えた.

治療

乾癬におけるウステキヌマブの使用指針

著者: 五十嵐敦之 ,   大槻マミ太郎 ,   川田暁 ,   佐伯秀久 ,   佐野栄紀 ,   照井正 ,   根本治 ,   森田明理 ,   中川秀己

ページ範囲:P.1083 - P.1089

要約 ヒトIL-12/23p40に対するヒトIgG1κモノクローナル抗体製剤であるウステキヌマブ(ステラーラ®45mg皮下注シリンジ)は,2011年1月に乾癬(尋常性乾癬,関節症性乾癬)の適応を取得した.ウステキヌマブを含む生物学的製剤の使用にあたっては,日本皮膚科学会・生物学的製剤検討委員会が作成した「乾癬における生物学的製剤の使用指針および安全対策マニュアル(2011年版)」の遵守と,安全かつ適正に使用されることが求められている.今回,同マニュアルの内容をもとに,国内外で新たに得られたウステキヌマブの有効性および安全性に関する知見を踏まえて,「乾癬におけるウステキヌマブの使用指針」としてまとめた.本剤はTNF-α阻害薬同様の安全性への配慮が求められ,また十分な治療効果が得られるまで時間を要する場合があるが,継続投与での効果の持続は良好であり,利便性の高い薬剤と考えられる.

印象記

第11回日独皮膚科学会(11th Meeting of the German-Japanese Society of Dermatology 2014 in Heidelberg)に参加して

著者: 中島喜美子

ページ範囲:P.1090 - P.1092

 こんな穏やかで楽しそうな笑顔の並ぶ学会写真があるだろうか.2014年6月11〜14日,ハイデルベルクで開催された第11回日独皮膚科学会(11th Meeting of the German-Japanese Society of Dermatology 2014 in Heidelberg)の集合写真である.
 学会前にミュンヘン大学に留学中の荒川明子先生を訪ねた.ミュンヘン大学皮膚科は500床を超す病床を持っていたが,現在は外来治療への移行とともに縮小し,それでも約150床の規模と由緒ある長い歴史をもつ大教室だった.2年に一度ドイツ皮膚科総会を,総会がない年には国際皮膚科の夏の学校を開催し,世界中の皮膚科医に学びと交流の場を提供しているという.Thomas Ruzicka教授の回診につかせていただいた.フロアーごとに皮膚科医チームが構成され,Ruzicka教授は1人1人の患者さんを時間をかけて診察され,若い先生方と長いdiscussionをされていた.Joerg C. Prinz教授にもお会いすることができた.20年以上前から乾癬研究を道一筋に続けてこられ,毎日乾癬外来をされているPrinz教授の乾癬の話しは尽きることがなかった.質の高い臨床に裏打ちされた質の高い研究をされているPrinz教授を心から尊敬していると,荒川先生は話してくれた.

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欧文目次

ページ範囲:P.1013 - P.1013

文献紹介 皮膚炎症部への食物抗原の曝露はthymic stromal lymphopoieti(TSLP)と好塩球を介して腸管における食物アレルギー反応を引き起こす

著者: 熊谷宜子

ページ範囲:P.1043 - P.1043

 食物アレルギーは,原因アレルゲンを経口摂取することで発症する即時型アレルギーである.近年,皮膚における食物アレルゲンの抗原感作が,食物アレルギー発症の原因として重要視されている.しかし,実際に皮膚での抗原感作がどのような免疫学的機序で成立しているのかという点は完全には理解されていない.本論文ではビタミンD誘導体を用いて惹起した皮膚炎マウスの病変部皮膚における抗原感作の機序を,分子レベルで解析した.まず皮膚炎を惹起したマウスの皮膚に卵白アルブミン(ovalbumin:OVA)を曝露させ感作を成立させた後に,OVAを経口摂取させると腸管に肥満細胞の浸潤を伴うアレルギー反応が観察できた.同時に皮膚組織でのthymic stromal lymphopoietin(TSLP)の発現増加,抗原特異的なTh2サイトカインの産生,抗原特異的なIgEの上昇を認めた.一方,TSLPノックアウトマウスや好塩基球欠損マウスでは皮膚の炎症の程度が軽減し,引き続き生じる腸管アレルギー症状を含めた一連の表現型が観察されなかった.以上より,バリアが破壊された皮膚からの経皮的な抗原感作はTSLPと好塩基球を介した反応によって引き起こされており,炎症皮膚からの抗減感作が腸管食物アレルギーの機序に必要であることを示した.また,TSLPの産生や好塩基球の機能を抑制させることで,腸管アレルギーが軽減される可能性が示唆された.

文献紹介 経口免疫寛容はマクロファージから樹状細胞へギャップ結合を介して食餌抗原を受け渡すことによって成立する

著者: 足立剛也

ページ範囲:P.1053 - P.1053

 全体表面を覆うバリア臓器である腸管や皮膚は,さまざまな外来物に対しての活発な免疫応答が行われる免疫臓器でもある.ここでは外来異物を除去するための反応だけでなく,特定の抗原については過剰な免疫反応を抑制する「免疫寛容」が重要となる.食餌抗原に対する「経口免疫寛容」はその最たる例であるが,詳細な機構の解明は道半ばである.
 著者らは,腸管上皮間から手を伸ばして抗原をサンプリングするCX3CR1陽性マクロファージ(CX3CR1+ macrophage:CX3CR1+ MΦ)と,制御性T細胞(regulatory T cell:Treg)を誘導し免疫制御に寄与する腸管CD103陽性樹状細胞(CD103+ dendritic cell:CD103+ DC)に着目し,解析を行った.

投稿規定

ページ範囲:P.1094 - P.1095

次号予告

ページ範囲:P.1096 - P.1096

あとがき

著者: 塩原哲夫

ページ範囲:P.1098 - P.1098

 評論家という人種が,お茶の間に頻繁に現れるようになったのはいつの頃だっただろうか.彼らの言い分だけを聞いていると,彼らに批判される側の人々(指導者)は馬鹿ばかりということになる.子供時代の筆者にとって,何でこんなに物のわかった人々が指導者にならないのかが不思議であった.そう思う人が多かったせいか,評論家たちは選挙に出て当選し,指導者層の末席をけがすようになった.しかし,彼らの多くは,まわりを切りまくった評論家時代の冴え(?)を失い,失望を残してわれわれの目の前から消えた.
 仕事をし続けていれば,何らかの責任ある地位につくのは必然である.そうなれば,軽々しい一方的な批判はできなくなる.部下のことを思う一方で,その組織全体のことも考えねばならず,時に非情な決断もしなければならなくなるからである.それは責任があるからこそ味わう,逃げ場のない深い悲しみなのである.指導者の本質とは,このような言葉にできない多くの思いを背負いながら,責任を果たしていくことにある.

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P. - P.

臨床皮膚科 第68巻 事項索引

ページ範囲:P. - P.

臨床皮膚科 第68巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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