臨床皮膚科68巻2号

2014年02月発行

症例報告

鼻翼基部に結節を生じた上顎外歯瘻の2例

著者： 臼井真理子¹ 田中敬子¹ 難波未央¹ 鷲崎久美子¹ 関東裕美¹ 米山勇哉² 福井暁子² 関谷秀樹² 林健³ 山口潤⁴ 石河晃¹

所属機関： ¹東邦大学医学部皮膚科学講座(大森) ²東邦大学医学部口腔外科学講座 ³東京労災病院皮膚科 ⁴下丸子皮膚科クリニック

ページ範囲：P.169 - P.173

要約　症例1：69歳，女性．2012年2月より排膿を伴う右鼻翼基部の丘疹が出現した．前医で切除術施行するも再発し，同年10月に精査加療目的で当科を紹介された．初診時，右鼻翼基部にびらんを伴う淡紅色丘疹を認めた．症例2：75歳，男性．2012年7月より左鼻翼基部に排膿を伴う紅色結節を自覚した．症例1，2ともに病理組織像は，真皮内に好中球や組織球を主体とした炎症細胞浸潤と毛細血管増生を認め，化膿性肉芽腫の像であった．オルトパントモグラフィにて右上1・3歯(症例1)，左上2歯(症例2)に根尖病巣を認め上顎外歯瘻と診断した．原因歯の抜歯にて結節は消退した．上顎外歯瘻は稀ではあるが，高齢者でも歯根が保存されやすい前歯部の根尖病巣は鼻翼基部に外歯瘻を形成しやすい．鼻唇溝基部の鼻翼基部に生じる紅色丘疹は本疾患に特徴的であり，高齢化社会を迎え十分認識しておく必要があると考えた．

参考文献

1) 林耕太郎，他：臨皮 66:909, 2012

2) 小沢一嘉，他：日口外誌 35:1569, 1989

3) 久保孝一，他：日口外誌 43:45, 1997

4) 齊藤輝海，他：愛院大歯誌 42:185, 2004

5) 崎元和子，他：臨皮 64:883, 2010