症例報告
ラップ療法施行中に仙骨部褥瘡に続発したガス壊疽の1例
著者:
登谷晶美1
谷岡未樹1
宮地良樹1
丸田直樹2
中川雄仁2
所属機関:
1京都大学医学部大学院医学研究科皮膚科
2福井赤十字病院皮膚科
ページ範囲:P.245 - P.248
文献購入ページに移動
要約 82歳,女性,Alzheimer型認知症.当院受診1か月前より仙骨部に褥瘡が発生したため,入所中の施設にてラップを用いた密閉療法(ラップ療法)を開始された.その後,原因不明の熱発が出現したため,前医を受診し抗菌薬を投与され,褥瘡部のデブリードマンが施行された.しかしその後もさらに全身状態が悪化し,不明熱として当院に緊急搬送された.当院受診時,水玉状の孔をあけたラップが褥瘡に直接貼付され,上からガーゼ保護されていた.ラップを取り除くと強い悪臭と皮膚壊死が認められた.採血では白血球数34,800/μl,CRP 14.0mg/dlと炎症反応高値を認め,クレアチニン2.75mg/dlと腎機能低下を認めた.また創部細菌培養検査では嫌気性菌を検出した.腹部単純CTでは皮下および筋肉組織内にガス像を認めた.以上よりガス壊疽を疑い緊急にデブリードマンを施行,連日の洗浄処置,またメロペネム点滴0.5g/日,テイコプラニン点滴400mg/日を15日間施行し改善した.自験例では褥瘡感染と認識しながらもラップ療法を継続し,重症感染症を合併した症例である.ラップ療法は安易で安価な治療法であるが,重篤な合併症も起こしうることを十分に理解する必要があると考える.