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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科68巻5号

2014年04月発行

文献概要

Derm.2014

古くて新しい亜鉛華軟膏?!―亜鉛研究ブーム到来とともに

著者: 川村龍吉1

所属機関: 1山梨大学医学部皮膚科学教室

ページ範囲:P.50 - P.50

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 「亜鉛欠乏症に伴う皮膚炎」に関する論文で昨年の皆見賞をいただいたが,くしくも昨年は亜鉛欠乏症症例が初めて報告されてから50周年に当たる年だったらしい.亜鉛と言えばわれわれ皮膚科医がすぐに連想するのが亜鉛華(単)軟膏であるが,最近では潰瘍を伴う皮膚癌などに用いられるMohs軟膏も成分は亜鉛そのものである.古くからわれわれ皮膚科医は手湿疹やおむつ皮膚炎などの亀裂やびらん・潰瘍を伴う一次刺激性接触皮膚炎に対してなぜか経験的に亜鉛華軟膏を繁用してきた.島田眞路教授が「30年以上前にあった外用剤で今も使われているのはステロイドと亜鉛華軟膏ぐらいである」とおっしゃられていたが,亜鉛華軟膏が超ロングセラーになるには何か特別な理由があるはずである.先の受賞論文で腸性肢端皮膚炎の本態が一次刺激性接触皮膚炎であることを明らかにしたが,培養表皮細胞に亜鉛を添加すると一次刺激物質によって誘導される起炎物質:細胞外ATPの放出量が著明に抑制されることもわかった.きっと亜鉛は起炎物質ATPの量を減らすことで,ステロイドとは異なる機序の消炎作用を発揮するのだろう.

 大阪大学の平野俊夫学長らが「亜鉛は細胞外刺激を細胞内に伝達するメッセンジャーである」ことを発見された後,2007年から国際亜鉛生物学会を立ち上げられ,日本は今や亜鉛研究のメッカとなりつつある.また内科医の倉澤隆平先生が本邦の高齢者は意外に亜鉛が欠乏していることを報告されて亜鉛研究ブームに拍車がかかっているが,これからの亜鉛研究の進展に期待したい.そういえば先日,日本皮膚科学会「皮膚科の将来を考える会」の親睦会で,亜鉛華軟膏をリント布の綿の面に塗るかツルツルの面に塗るかで大論争となった.出身医局によってどちらの面に塗るかは概ね半々に割れたが,いずれの陣営も医局の先輩に教わった方法を絶対と信じて譲らず,結局結論は出なかった.どなたか本当のことを教えてください….

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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