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Derm.2014
性器ヘルペス治療において考えること
著者: 松尾光馬1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学皮膚科学講座
ページ範囲:P.164 - P.164
文献購入ページに移動 遡ること十数年,ウイルス学教室で学んだ後,「ヘルペス外来」という帯状疱疹,性器ヘルペスを主に診察する外来を担当することとなった.留学時の実験の1つに,マウス腹部の皮膚から単純ヘルペスウイルスを感染させ,脊髄神経節における潜伏ウイルス量を検討する,とういうものがあった.抗ウイルス薬は感染1日前,感染後24時間後から開始する群など数グループに分け,8時間ごとに経口投与を行う.その後,脊椎を剪刃で半分に割り,1mmほどの神経節を1つ1つ取り出しDNAを抽出する.定量検査を何度か行い少し驚いた.皮膚への感染前から抗ウイルス薬を投与しても103コピー,24時間以内の開始でも105コピー程度のウイルス量がみられるのである.もう少し薬が効いてくれれば,というのが正直な感想であった.ヒトに置き換えてみたらどうであろう? 性器ヘルペスの初感染後,感染早期に抗ウイルス薬投与を開始すれば潜伏するウイルス量は減少し,再発頻度も減ると考えてきたが,皮疹が出現し受診する時期には少なくとも2日は経過しているのである.その時点で内服,点滴を開始しても遅いのでは,と鬱屈しつつ症状を軽快させるために治療を行うしかないのが現状である.ウイルスの増殖抑制という特性を持つ現在用いられる抗ウイルス薬では限界があり,コンドームや今後用いられるであろうワクチンなどで予防するしかないのだろうか.ただし,性器ヘルペスにおいては薬を投与するのみが治療ではない.失望した面持ちで外来を受診する患者さんに対しては,どのようなことに対して不安を抱いているのかを聞きだし,個々に解決していくことも重要である.当校の学祖,高木兼寛先生の教え「病気を診ずして病人を診よ」という言葉を礎石とし,診療を行うよう日々奮励している.
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