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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科68巻6号

2014年05月発行

文献概要

今月の症例

棘融解による成長期脱毛を伴った尋常性天疱瘡の1例

著者: 入來景悟1 森本亜里1 山上淳1 天谷雅行1 柳澤宏人2 奥野哲朗3 大山学1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部皮膚科学教室 2深谷赤十字病院皮膚科 3奥野皮膚科

ページ範囲:P.389 - P.394

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要約 43歳,男性.初診1か月前より口内炎を自覚した.当科初診時,前額部・前胸部・背部などにびらんを認め,頭部のびらんは脱毛を伴っていた.前頭部の毛髪は,抜毛テストで容易に引き抜くことができた.抜去された毛髪検体の直接蛍光抗体法(direct immunofluorescence:DIF)所見では,付着する外毛根鞘の細胞間にIgGの沈着を認めた.脱毛部の病理組織所見では,外毛根鞘内に棘融解像がみられた.ELISA法で抗デスモグレイン(Dsg)1,3抗体価が高値であり,尋常性天疱瘡と診断した.加療によるpemphigus disease area index,抗Dsg抗体価の低下とともにテストで抜毛される範囲が縮小した.また,毛髪検体へのIgG沈着もみられなくなった.尋常性天疱瘡で脱毛をきたすことは稀だが,棘融解により外毛根鞘を付着する成長期脱毛がみられるのが特徴的である.抜毛テストおよび得られた検体のDIFは,低侵襲かつ簡便な手法であり,抗Dsg抗体に起因する病態を,臨床的・免疫学的に評価できるため,今後,病勢把握および診断の一助となる可能性が示唆された.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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