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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科68巻6号

2014年05月発行

症例報告

猫に引っ掻かれ生じた手背の傷が難治性の潰瘍となったsteal症候群の1例

著者: 新津佳恵1 原武1 行徳英一1 石本達郎2 村尾靖子3

所属機関: 1県立広島病院皮膚科 2県立広島病院移植外科 3村尾皮ふ科クリニック

ページ範囲:P.437 - P.440

文献概要

要約 64歳,男性.慢性腎不全に対し左前腕内シャントが作製され,血液透析中であった.当科初診4日前,左手背を飼い猫に引っ掻かれ,潰瘍が生じた.発熱がみられ,近医でミノサイクリンを投与されたが,創周囲に発赤,腫脹,紫斑,水疱,膿疱が生じ,当科を受診した.CRPは高値であり,創部培養検査でCapnocytophaga canimorsusPasturella multocidaなどが検出された.ドリペネム水和物の投与により解熱し,CRP値は漸減したが,左手背の潰瘍は壊死組織を除去しても,むしろ拡大し悪化した.臨床経過や潰瘍周囲の皮膚灌流圧(skin perfusion pressure:SPP)の低下からsteal症候群と診断し,左前腕内のシャント閉鎖術を行った.その後,潰瘍周囲のSPPは上昇し,潰瘍の縮小傾向がみられ,創面は閉鎖した.血液透析患者のシャント側に難治性潰瘍が生じた場合,steal症候群を考慮する必要があり,診断には非侵襲的なSPPが有用であると考えられた.

参考文献

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9) Higashimori A, et al:Cardiovasc Interv Ther 26:172,2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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