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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科68巻9号

2014年08月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・84

Q考えられる疾患は何か?

著者: 坪田晶子

ページ範囲:P.669 - P.670

症例

患 者:10か月,男児

主 訴:顔面および陰股部の皮疹

家族歴:兄がアトピー性皮膚炎,父親が気管支喘息

既往歴:初診の前日に慢性中耳炎と診断された.

現病歴:初診の約2か月前から陰股部に紅斑が出現し,近医小児科で抗真菌剤を処方されたが改善せず,約1か月前から顔面に紅斑局面が出現し,拡大してきた.

現 症:口囲および両眼周囲に境界明瞭な鮮紅色の紅斑性局面が認められ,表面に鱗屑を付着していた.陰股部にも同様に境界明瞭な乾癬様の局面が認められた(図1a,b).直接鏡検による真菌検査は陰性であった.

マイオピニオン

皮膚科の患者における心の問題

著者: 上出良一

ページ範囲:P.672 - P.673

 3月末に定年退職し,40年余りの大学生活に終止符を打ちました.思い出もいろいろありますが,特に診療面で力を入れていたアトピー性皮膚炎と光線過敏症の患者さん達のことが心に残っています.また,乾癬患者さんの会を通じて知り合った多くの患者さんや医師,看護師さん,手術をした癌患者さんなども,折に触れ思い出します.

 皮膚病は命に関わることが少ない反面,外観が損なわれるのでQOLを著しく損ないます.その意味で完治させる治療法の進歩が望まれますが.一方,患者さんの気の持ちようが疾患の遷延化をもたらしていることも否めません.特にアトピー性皮膚炎でそれを強く感じます.

今月の症例

急激な膿疱化に伴いcapillary leak syndromeを併発した尋常性乾癬の1例

著者: 若林満貴 ,   平澤祐輔 ,   奥山泰裕 ,   丹羽祐介 ,   池田志斈

ページ範囲:P.674 - P.678

要約 64歳,男性.50歳頃に尋常性乾癬と診断され,クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏にてPASIスコア7程度で経過していた.外来加療中に,ステロイド外用剤の自己中断があり,紅斑の拡大とわずかな膿疱の出現(PASIスコア38)がみられたため,エトレチナート40mg/日の内服を開始した.しかし,3日後に紅皮症化,膿海の形成,発熱,全身の浮腫が出現し(PASIスコア45),緊急入院となった.採血でCRP 36.2mg/dlと著明な炎症反応がみられ,さらに呼吸不全(SPO2 94%,両側胸水貯留),腎不全(クレアチニン3.65mg/dl,乏尿)を併発した.諸検査結果で尋常性乾癬の膿疱化に伴う二次性capillary leak syndrome(CLS)と考えた.ステロイド全身投与(ベタメタゾン5mg/日)と,人工透析により呼吸不全,腎不全が改善し,PASIスコアは20となった.尋常性乾癬は一般的に予後良好な疾患であるが,紅皮症化や膿疱化などを契機にCLSを合併すると死亡に至ることがあるため,早期診断と適切な治療選択が望まれる.

症例報告

痔疾薬によるsystemic contact dermatitisの1例

著者: 水口将志 ,   古屋亜衣子 ,   藤本典宏 ,   佐藤貴浩

ページ範囲:P.679 - P.683

要約 40歳,女性.初診11日前より全身に掻痒を伴う紅斑を生じ,ステロイド内服加療を行ったが難治であった.薬疹や中毒疹を疑い皮膚生検を予定した際,皮疹が出現する3日前から痔疾のためヘモレックス®軟膏を使用していたことが明らかとなった.現症は四肢・体幹に掻痒を伴う米粒大から母指頭大までの浸潤を触れる紅斑が播種状に多発し,肛囲には掻痒を伴わない淡紅色の紅斑を認めた.パッチテストは,ヘモレックス®軟膏のas isおよび成分の塩酸ジブカインに陽性で,塩酸ジブカインによるsystemic contact dermatitisと診断した.坐薬や腟錠など粘膜からの吸収を目的とした薬剤による本疾患では,薬剤使用部位の自覚症状が乏しく,患者本人も気が付かないことがあり,見逃さないよう注意が必要である.

全身性エリテマトーデス治療中にStevens-Johnson症候群/中毒性表皮壊死症を発症した妊婦の1例

著者: 車谷紋乃 ,   藤澤大輔 ,   稲冨徹 ,   猪俣弘武 ,   北村登 ,   武井正美 ,   山本樹生 ,   照井正

ページ範囲:P.684 - P.688

要約 24歳,女性.全身性エリテマトーデスでプレドニゾロン(PSL)内服中の2010年7月妊娠が判明しPSLを15mg/日から漸減し9月に11mg/日となった.10月に感冒のため,カロナール®を2日間内服.内服4日後より手指と顔面,体幹に鱗屑を付着する紅斑が多発し,全身性エリテマトーデスの増悪を疑われ,前医内科に入院.四肢,体幹の皮疹は拡大し,中央暗紫紅色調を呈する多形紅斑様紅斑が多発癒合し,水疱が生じた(体表面積の約22%).眼脂が付着し,頰粘膜と硬口蓋にびらんが多発.重症薬疹が疑われ,翌日当科に入院.生検病理組織像で,全層性の表皮壊死と,表皮真皮境界部の裂隙形成,真皮浅層の血管周囲性の炎症細胞浸潤があり,Stevens-Johnson症候群/中毒性表皮壊死症と診断した.PSLを50mg/日に増量し,血漿交換療法を3日間併用した.第3病日に敗血症を生じ,抗生剤と免疫グロブリンを投与.全身状態の改善と上皮化があり,第35病日に退院.第5病日にDLSTを行いカロナール®が陽性.妊婦例であり,児への影響が懸念され治療に難渋した.

エリスロマイシンが奏効した急性痘瘡状苔癬状粃糠疹の1例

著者: 栗原和生 ,   津嶋友央

ページ範囲:P.689 - P.692

要約 3歳,男児.大腿に頂点に壊死を付着する丘疹が出現し,その後全身に拡大した.近医でセフェム系抗生物質内服,ステロイド外用にて治療されたが改善しなかったため,当科を紹介された.初診時,2~7mm大の紅色丘疹が体幹・四肢に多発していた.個疹は壊死性結痂を頂点に伴い,鱗屑が縁どるように認められた.生検病理組織像では,表皮細胞壊死,真皮浅層リンパ球浸潤が顕著にみられた.以上より,急性痘瘡状苔癬状粃糠疹と診断した.エリスロマイシンの2か月間継続投与で皮疹はほぼ消退した.マクロライド系抗菌薬は,抗菌作用だけでなく,抗炎症作用,免疫調整作用があるため有効であったと思われる.エリスロマイシンは急性痘瘡状苔癬状粃糠疹の有効な治療の選択肢の1つであると考えた.

成人発症Still病の2例

著者: 佐々木桃子 ,   杉山由華 ,   佐々木哲雄

ページ範囲:P.693 - P.698

要約 症例1:53歳,女性.四肢筋関節痛,発熱,咽頭痛があり,フェリチン4,164ng/ml,CRP 11.06mg/dlであった.発熱に伴って出現する紅斑がみられ,病理組織像では真皮上層の血管周囲主体の好中球を混ずる軽度の炎症細胞浸潤が認められた.他疾患が除外され,定型的皮疹もみられたため,成人発症Still病と診断した.ステロイド点滴,内服で加療し,1年5か月で中止した.発症から3年2か月間通院し,再燃はみられていない.症例2:61歳,女性.初診1か月前から皮疹,咽頭痛,5日前から関節痛があった.末梢血白血球14,800/μlと増多,CRP 17.69mg/dlで,即日入院した.39℃以上の発熱,フェリチン10,100ng/ml,肝機能異常があった.軽度浸潤性の紅斑が広範囲にみられ,病理組織像では真皮上層の好中球を混ずる炎症細胞浸潤が認められた.自己抗体陰性で,同症と診断した.ステロイド点滴当初に症状再燃とフェリチン値の更なる上昇がみられたが,その後改善に転じ,プレドニゾロン内服に切替え,30mg/日で退院した.両例において血清フェリチン値は本症の診断のみならず,その病勢の指標としても有用と考えられた.

皮膚筋炎と鑑別を要した成人Still病の1例

著者: 廣門未知子 ,   高橋一夫 ,   内田敬久 ,   池澤善郎 ,   須田昭子 ,   岳野光洋

ページ範囲:P.699 - P.703

要約 79歳,女性.2006年10月頃より掻痒を伴う皮疹が出現し,その後39℃台の発熱と関節痛が出現した.初診時,体幹,四肢に強い掻痒を伴う掻破に一致した浮腫性紅斑がみられ,色素沈着を混じていた.好中球優位の白血球増加,フェリチン,CRPの上昇とともにアルドラーゼ,ミオグロビンの上昇を伴った.皮膚生検病理組織像では明らかな液状変性はないがリンパ球の表皮内浸潤,異常角化細胞,真皮浅層の浮腫と血管周囲に好中球浸潤も伴うリンパ球主体の炎症細胞浸潤を認めた.全身検索で子宮頸癌が見つかり,腫瘍随伴性の皮膚筋炎も考えられたが,成人Still病診断の主要項目である39℃台の高熱,関節痛,白血球増加を認め,皮膚症状も非定型疹に一致しており,成人Still病と診断した.成人Still病の診断は特異的マーカーがいまだなく皮疹の評価が重要であるが,成人Still病の非典型疹を考えるうえで自験例は示唆に富んでいると思われ報告した.

鋲釘血管腫の1例

著者: 奥野愛香 ,   服部ゆかり ,   寺島剛 ,   武内英二 ,   真鍋俊明

ページ範囲:P.705 - P.710

要約 41歳,男性.数年前から右下腿中央部外側に褐色の結節とその周囲に褐色斑認めた.病理組織所見上,真皮表層の血管では内皮細胞の腫大が目立ち,鋲釘像(いわゆるhobnail appearance)で,真皮深層では膠原線維間に多数の裂隙状管腔とヘモジデリン沈着を認めた.Patch stageのKaposi肉腫との鑑別が最も問題となったが,HHV-8陰性であり,鋲釘血管腫と診断した.鋲釘血管腫とKaposi肉腫は組織学的に極めて類似して見えることもあるが,その病理発生,予後は異なる.過剰診断や過剰治療を避けるためには,両者の組織像をよく理解しておく必要がある.また,AIDS関連型を含め,すべての臨床型のKaposi肉腫でHHV-8陽性を示すためHHV-8の免疫組織学的検索が両者の鑑別に役立つ.

左母指指端に生じた有茎性悪性末梢神経鞘腫瘍の1例

著者: 貞安杏奈 ,   芳賀貴裕 ,   相場節也

ページ範囲:P.711 - P.714

要約 86歳,男性.2012年11月,左母指指端を受傷した.その後,同部位に小結節が生じたが自然に消退した.12月上旬に同様の結節が出現し,急激に拡大したため,2013年1月上旬に近くの皮膚科を受診し,有棘細胞癌の疑いで当科を紹介受診した.初診時,左母指指端に26×21×20mm大の血痂,潰瘍を付着し壊死を伴う暗赤色ないし黄色調の有茎性結節を認めた.血管拡張性肉芽腫,エクリン汗孔腫あるいは癌を鑑別に切除生検した.病理組織学的に紡錘形の異型細胞が増殖し,免疫染色ではビメンチン,S100蛋白,NSE,ネスチン陽性であり,悪性末梢神経鞘腫瘍と診断した.切除断端は陰性で,術後6か月経過し,局所再発や転移は認めていない.悪性末梢神経鞘腫瘍は四肢近位や体幹に好発し,30~50%は神経線維腫症I型に合併する.今回われわれは非神経線維腫症I型の患者に生じた指端の悪性末梢神経鞘腫瘍を経験した.発症部位や臨床像からは診断が困難であった.

Acantholytic anaplastic extramammary Paget's diseaseの1例

著者: 大久保絢香 ,   櫻井英一 ,   佐藤隆亮 ,   馬場俊右 ,   森志朋 ,   高橋和宏 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.715 - P.719

要約 75歳,男性.約5年前に陰茎基部左側に不整形紅斑局面が出現し徐々に拡大した.初診時生検の病理組織像では表皮に棘融解像を認めたが,明らかな異型細胞を認めず確定診断には至らなかった.3年後,新たにびらんが出現し再度生検を施行した.病理組織像で表皮の一部に個細胞角化を欠く異型細胞から成るBowen病様の所見および棘融解像を認めた.免疫染色で,CK7,CEA,GCDFP-15が陽性で,CK20およびp63が陰性であり,acantholytic anaplastic extramammary Paget’s diseaseと診断した.細胞異型性が軽度あるいは棘融解像を有する乳房外Paget病はBowen病やHailey-Hailey病との鑑別が重要である.

リンパ節転移を伴ったmucinous carcinoma of the skinの1例

著者: 仁木真理子 ,   松立吉弘 ,   村尾和俊 ,   久保宜明 ,   橋本一郎 ,   柏木圭介 ,   仙崎雄一 ,   中西秀樹

ページ範囲:P.720 - P.724

要約 61歳,女性.未治療の糖尿病あり.1年前に右側頭部の腫瘤が生じ,徐々に増大した.初診時,右側頭部に60×45×20mmのびらん・潰瘍を伴う紅色腫瘤を認めた.CA19-9 113U/ml.病理組織では,腫瘍は線維性隔壁に区切られ,この中にアルシアンブルー染色陽性の粘液様物質と卵円形で中等度の異型性を伴う腫瘍細胞塊がみられた.腫瘍細胞はサイトケラチン(CK)7陽性,CK20陰性で,内臓悪性腫瘍は認めなかった.Mucinous carcinoma of the skin(MCS)と診断し,辺縁より2cm離し,骨膜を含め切除した.センチネルリンパ節に転移があり,頸部リンパ節郭清術も行ったが,郭清したリンパ節のうち1個に転移があった.術後8か月目に,耳後部皮下にin transit転移を生じた.病理組織は原発巣とは異なり,粘液様物質のほとんど伴わない腫瘍細胞塊が主体であった.MCSは転移はまれで予後の良い腫瘍とされているが,大型で,表面に潰瘍を伴う場合や病理組織学的に粘液様物質の少ない腫瘍細胞塊がみられる場合には転移の可能性を念頭に置く必要がある.

下腿の硬結として初発したOsler結節から診断に至った感染性心内膜炎の1例

著者: 中村元泰 ,   関東裕美 ,   福田裕子 ,   大橋則夫 ,   渡邊善則 ,   佐々木雄毅 ,   藤本進一郎 ,   高村和久 ,   石河晃

ページ範囲:P.725 - P.730

要約 49歳,男性.初診の4日前から発熱と左下肢痛が出現し,歩行不能となり当院救急外来を受診した.初診時,左下腿に発赤,腫脹と,熱感を伴う鶏卵大の硬結を認めた.CRP,白血球数が高値であり,蜂窩織炎の疑いで入院した.生検施行後抗生剤投与にて症状は軽快し,1週間後に退院したが,その1週間後,再度39℃の発熱が出現し,再入院した.再入院時,手指に有痛性の紅色結節が,手掌,足趾には無痛性の点状出血がみられた.初診時みられた下腿の硬結の生検結果より下腿と手指の結節はOsler結節と診断した.心エコーで大動脈弁に疣贅,血液培養で黄色ブドウ球菌が確認され,感染性心内膜炎が明らかになった.循環器内科に転科後,抗生剤による治療が奏効し,諸検査が正常化し,大動脈弁置換術を行った.Osler結節は手指足趾に好発するが,他の部位に硬結として発症することがあり,発熱患者に有痛性紅斑を認めた際にはOsler結節も念頭に置くべきと考えた.

生毛部急性深在性白癬の2例

著者: 原田和俊 ,   佐野信也 ,   川村龍吉 ,   柴垣直孝 ,   畑康樹 ,   島田眞路

ページ範囲:P.731 - P.736

要約 症例1:70歳,男性.腕時計を装着していた左前腕伸側に紅斑が出現した.ステロイド軟膏を外用するも,皮疹が改善しないため当科を受診した.症例2:80歳,男性.腕時計を着用していた左前腕に紅斑が出現した.さらに腕時計を右腕に付け替えたところ,右前腕にも同様な紅斑が出現した.ステロイド軟膏を外用して皮疹が増悪し,当科へ紹介された.両症例とも,前腕伸側に浸潤を触れる紅斑,小丘疹が局面を形成していた.病理組織学的に毛囊周囲に炎症細胞浸潤があり,組織培養でTrichophyton rubrumが検出された.以上の検査結果より,生毛部急性深在性白癬と診断し,抗真菌剤内服により治癒した.2症例とも,前腕に出現した紅斑に,ステロイド軟膏を外用し,皮疹部に腕時計を着用していた.これらの経過から,本疾患において,不適切なステロイド軟膏の外用と局所の湿潤環境が重要な発症因子である可能性が示唆された.

小児の頰部に生じたMicrosporum gypseumによる顔面白癬の1例

著者: 小谷晋平 ,   大森麻美子 ,   小坂博志 ,   上野充彦 ,   小川真希子 ,   長野徹 ,   竹川啓史

ページ範囲:P.737 - P.740

要約 1歳,女児.初診3か月前から左頰部の紅色局面があり,近医でステロイド剤・抗菌剤を外用したが徐々に拡大してきた.初診時左頰部に環状で,周囲とは境界明瞭な軽度落屑を伴う紅色の局面を認めた.紅色調は辺縁に強く,膿疱もみられた.真菌培養検査にてMicrosporum gypseumが検出され,ラノコナゾール外用を継続し略治した.M. gypseumは一般に好土壌性真菌とされ,非病原性であるが,まれにヒトや動物に感染する.土壌との接触がなくとも,ペットを介したヒトへの感染の可能性も指摘されており,土壌と接触の既往がなくとも感染する恐れがある.また,異型白癬の像を呈することもあり,診断に難渋することがある.小児の報告例が多く顔面,軀幹の白癬の起因菌として念頭に置く必要があると考えた.

印象記

第113回日本皮膚科学会総会印象記

著者: 古川福実

ページ範囲:P.741 - P.744

 第113回日本皮膚科学会総会が,2014年5月30日(金)~6月1日(日)に国立京都国際会館で,岩月啓氏岡山大学教授を会頭とし開催されました.印象を簡明に表現すると,歴史と斬新性を併せ持ち創意工夫に満ちた総会といえます.私もいくつかの学会を主催しましたが,当初の斬新的な企画が最終的には紆余曲折を経て従来型プログラムに落ち着くのが常でした.しかし,岩月会頭は,強い意志のもとに新たな企画・運営を強い意志のもと実行されました.まさに,学会テーマ「皮膚科の職人魂」を具現化されたものでした(図1).

 以下,思いつくままに.

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欧文目次

ページ範囲:P.667 - P.667

文献紹介 フィラグリン発現を亢進させることによるアトピー性皮膚炎の新しい治療戦略

著者: 安田文世

ページ範囲:P.698 - P.698

 アトピー性皮膚炎患者の約20~30%でフィラグリン遺伝子の異常があり,またほぼすべてでフィラグリン蛋白が低下していることが知られる.本論文ではフィラグリン培養表皮細胞を用いて1,000以上の市販の化合物ライブラリーから,フィラグリンの発現を亢進させる物質をスクリーニングし,JTC801という物質を発見した.この化合物を加えると,培養表皮細胞のプロフィラグリンの発現を上昇させ,ヒトの皮膚に近い構造を持つ3次元表皮培養ではフィラグリン蛋白の発現が亢進し,フィラグリンモノマーの産生が上昇した.さらにフィラグリン遺伝子のヘテロ変異マウス(flaky tail mice)にJTC801を皮下注射したところ,フィラグリンの発現が上昇していることがわかった.アトピー性皮膚炎の動物モデル(NC/Nga mice)にJTC801を内服投与させた群では非投与群に比べ皮膚のフィラグリン蛋白の発現亢進がみられた.この発見から,フィラグリンをターゲットとした新たな治療法の開発が期待される.

文献紹介 1施設34人の薬剤性過敏症症候群患者の短期,長期での合併症の検討

著者: 大井裕美子

ページ範囲:P.710 - P.710

 薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)は,特定の薬物で生じる重篤な全身性の過敏性症候群であり,ヘルペスウイルスの再活性化や臓器不全を合併することが知られている.DIHSが寛解となった後に自己免疫性疾患を発症することは報告されているが,長期間の経過観察があまりなされておらず,長期的な合併症の発症については明らかになっていない.

 この論文では,平均4~5年の経過を観察し,DIHS発症後6か月以内のearly phase,6か月以降のlate phaseそれぞれでのウイルス/細菌の感染症,臓器障害について,ステロイド投与群,ステロイド非投与群で検討した.ステロイド投与群14例では,0.6~1.0mg/kg/日でプレドニゾロンを投与開始しその後漸減した.ステロイド非投与群20例では対症療法を行った.

お知らせ 第6回日本レックリングハウゼン病学会学術大会

ページ範囲:P.746 - P.746

テ ー マ 遺伝カウンセリングと連携診療

会  期 2014年11月15日(土)~16日(日)

会  場 東京医科大学病院6F講堂

     〠160-0023 東京都新宿区西新宿6-7-1

次号予告

ページ範囲:P.747 - P.747

投稿規定

ページ範囲:P.748 - P.749

あとがき

著者: 中川秀己

ページ範囲:P.750 - P.750

 「誠実」という言葉,見ただけで堅苦しく感じられますね.誠実とは「他人の意のままに自己を育てることでもなく,また自分の意のままにならぬ他人を突き放してしまうことでもなく,何とかして他人と自分との間に通路をこしらえあげようと努力すること」ということらしい.簡単に言えば,「まこと,まごころ」であります.診療にこの心構えを持ってあたれば,患者さんとの良好な関係が構築でき,治療のアドヒアランスも上がることは間違いないとは思うのですが,実際には時間がない,心の余裕がない,患者さんのキャラクターについて行けないなどのさまざまな理由で,不「誠実」な診療を行ってしまっていることが少なからずあるのが現状です.

 今,誰かと心がつながっていると実感できることは,とても幸せなことであり,かけがえのない宝なのだと思いますが,所詮,他人は自己とは異なる存在で,考えも違えば生きてきた環境も違います.そんな他者(特に患者さんと家内)と本当の意味でわかりあうことなど不可能に近いと思われてしまいます.しかしながら,ほぼ,毎日,家庭で家内から不「誠実」極まりないといわれている私にとって,せめて病院,大学では「誠実」でありたいと思っています.そこで,「わかり合うことの努力」を最小限にするために,診療にあたって,1つだけでいいから,今日,患者さんに診察を受けて良かったと思ってもらえるような診療を心掛けようと努力することにしています.「一日一善」です.これなら短い診療時間でも意外と可能で,長続きしますし,患者さんにも喜ばれることが多いと思います.

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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