臨床皮膚科68巻9号

2014年08月発行

症例報告

小児の頰部に生じたMicrosporum gypseumによる顔面白癬の1例

著者： 小谷晋平¹ 大森麻美子¹ 小坂博志¹ 上野充彦¹ 小川真希子¹ 長野徹¹ 竹川啓史²

所属機関： ¹神戸市立医療センター中央市民病院皮膚科 ²神戸市立医療センター中央市民病院臨床検査技術部

ページ範囲：P.737 - P.740

要約　1歳，女児．初診3か月前から左頰部の紅色局面があり，近医でステロイド剤・抗菌剤を外用したが徐々に拡大してきた．初診時左頰部に環状で，周囲とは境界明瞭な軽度落屑を伴う紅色の局面を認めた．紅色調は辺縁に強く，膿疱もみられた．真菌培養検査にてMicrosporum gypseumが検出され，ラノコナゾール外用を継続し略治した．M. gypseumは一般に好土壌性真菌とされ，非病原性であるが，まれにヒトや動物に感染する．土壌との接触がなくとも，ペットを介したヒトへの感染の可能性も指摘されており，土壌と接触の既往がなくとも感染する恐れがある．また，異型白癬の像を呈することもあり，診断に難渋することがある．小児の報告例が多く顔面，軀幹の白癬の起因菌として念頭に置く必要があると考えた．

参考文献

1) 山口英世(編)：病原真菌と真菌症，3版，南山堂，p204, 2005

2) 北川真希，他：皮膚臨床 52:937, 2010

3) 安西三郎，中野忠男：皮膚病診療 30:173, 2008

4) 吉田暁子，他：皮膚病診療 28:155, 2006

5) 菊地伊豆実，他：臨皮 60:736, 2006

6) 高瀬孝子：J Visual Dermatol 5:326, 2006

7) 比留間政太郎：J Visual Dermatol 1:794, 2006

8) 竹川啓史，他：Medical Technol 39:565, 2011

9) 高瀬孝子：J Visual Dermatol 5:344, 2006