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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科69巻12号

2015年11月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・99

考えられる疾患は何か?

著者: 鳥居秀嗣

ページ範囲:P.897 - P.898

症例
患 者:72歳,男性
主 訴:左臀部の結節
既往歴:70歳時,膀胱良性腫瘍
家族歴:特記すべきことなし.
現病歴:2年前に左臀部の結節に気づいたが放置していた.徐々に増大し,びらんを伴うようになってきたため当科を受診した.
現 症:左臀部に6×6×3.5cm大,皮表より茎部をもって隆起する,暗紫色で弾性硬の結節を認めた(図1).表面は不整で一部びらん化し,易出血性で下床との可動性は良好であった.両鼠径リンパ節は触知しなかった.

マイオピニオン

皮膚科診断学におけるダーモスコピーの位置づけ

著者: 田中勝

ページ範囲:P.900 - P.901

はじめに
 ダーモスコープは皮膚腫瘍の診断に不可欠な道具であるのみならず,あらゆる皮疹を詳細に観察するために必要な「皮膚科医の聴診器」である.したがって,皮膚科臨床医は常にダーモスコープを携帯し,すべての皮疹を見るぐらいのつもりでダーモスコープを使い,ダーモスコープを通して観察される皮疹の景色に慣れてほしいと思う(まだ使ってない人,今からでも遅くないですよ!).

症例報告

ステロイド長期内服患者に生じた皮下深部解離性血腫の2例

著者: 栗山幸子 ,   兼子泰一 ,   太田悠介 ,   糟谷啓 ,   青島正浩 ,   池谷茂樹 ,   深水秀一 ,   戸倉新樹

ページ範囲:P.902 - P.906

要約 症例1:54歳,女性.SLEのためステロイドを28年間内服していた.軽微な打撲を契機に右下腿が腫脹し,激痛を伴ったため救急外来を受診した.CTにて巨大な皮下血腫を認め,皮下深部解離性血腫と診断した.翌日まで圧迫し経過をみたが,血腫は増大し続け,緊急血腫除去術を要した.症例2:64歳,女性.水疱性類天疱瘡のため7年間ステロイドを内服していた.明らかな受傷機転はないが,起床時に左足関節周囲の発赤と腫脹,疼痛を自覚したため,当科を受診した.CTにて厚さ3cm程度の皮下血腫を認め,皮下深部解離性血腫と診断した.圧迫と止血剤の内服を開始したところ,血腫は徐々に縮小した.皮下深部解離性血腫はdermatoporosisの臨床像の中で最も重症とされる.特にステロイド長期内服中などdermatoporosisが疑われる患者において,急激な四肢の腫脹,疼痛をきたす疾患として本症を鑑別に挙げる必要がある.

塩酸ジブカインによる光線過敏型薬疹の1例

著者: 夏見亜希 ,   加藤敦子

ページ範囲:P.907 - P.911

要約 41歳,女性.内痔核の手術後よりプロクトセディル®軟膏を使用していた.その5日後より手背・頸部に瘙痒を伴う皮疹が出現したため,すべての薬剤を中止し,ステロイド外用剤による加療を受けたが,改善しなかったため受診した.露光部に一致して浮腫性紅斑と水疱を認め,最少反応量の低下もみられたことから,光線過敏症と診断した.治癒後,原因検索のため,使用していた内服薬・外用薬の光貼布試験を施行した.プロクトセディル®軟膏と,その成分である塩酸ジブカインは,いずれも非照射部で陰性,UVA照射部で陽性であった.以上より,軟膏に含まれた塩酸ジブカインによる光線過敏型薬疹であると診断した.粘膜に外用する薬剤は吸収されやすく,全身投与と同じように激しい症状を呈する可能性があり,注意が必要である.

ドセタキセルとシクロホスファミド投与後に乳癌術後創部に出現したfixed erythrodysaesthesia plaqueの1例

著者: 八丁目直和 ,   浅野雅之 ,   松田好郎 ,   相場節也

ページ範囲:P.912 - P.916

要約 66歳,女性.2013年12月に右乳癌に対して乳房切除術を受け,その1か月後よりドセタキセル70mg/m2とシクロホスファミド600mg/m2の3週ごと,1回投与の治療が開始された.3クール目終了10日後に,乳癌手術創部に瘙痒を伴う皮疹が出現した.皮疹が限局性であったため4クール目の抗癌剤が継続投与され,4クール目投与2日後に当科を受診した.乳癌手術創部を中心に不整形な落屑を伴う紅褐色斑を認め,病理組織検査で表皮角化細胞の配列の乱れと異常角化細胞が散見された.Fixed erythrodysaesthesia plaque(FEP)と診断し,ステロイド外用薬により加療した.皮疹は徐々に改善し,皮疹出現41日後には皮疹は色素沈着となって治癒した.FEPはドセタキセルによる稀な薬疹の1つだが,薬剤の中止を必要としない点が重要である.

TGM1遺伝子変異が同定された葉状魚鱗癬の姉弟症例

著者: 滝沢佐和 ,   春名邦隆 ,   濱田尚宏 ,   沼田早苗 ,   橋本隆 ,   須賀康

ページ範囲:P.917 - P.922

要約 症例1:28歳,男性.症例2:32歳,女性で症例1の姉.両症例ともに生下時にコロジオン児の外観を呈し,その後は徐々に全身に過角化,鱗屑が顕著となり,眼瞼外反,脱毛なども伴っていたため先天性魚鱗癬と診断された.皮膚病理組織所見では,不全角化を伴わない著明な角質肥厚,表皮肥厚を認めた.In situ transglutaminase assayで,表皮内酵素活性の明らかな低下がみられたためTGM1遺伝子変異による葉状魚鱗癬を強く疑いDNA解析を施行した.その結果,両症例とも停止コドンを形成するc.374delAのホモ変異体であることが判明した.患者の遺伝相談やより良い皮疹のコントロールを検討する上でも,今後の症例の集積と詳細な検討が重要と考えた.

色素レーザーで改善した母斑様限局性被角血管腫の1例

著者: 日浦梓 ,   大原國章 ,   林伸和

ページ範囲:P.925 - P.928

要約 生後6か月,男児.生来,右前腕から上腕の外側を中心に角化を伴う地図状の紫紅色局面が多発し,肘頭部では出血を繰り返していた.臨床所見より母斑様限局性被角血管腫と診断した.外科的切除以外の治療を望んだため,色素レーザー(Vbeam®)を開始した.スポットサイズ7mm,1.5〜6msec,9〜12.5J/cm2の照射設定で合計11回の照射後(3歳1か月),紅斑は軽度残存するが角化は消失し,整容的に著明な改善を認めた.母斑様限局性被角血管腫に対する色素レーザーを用いた治療報告は少ない.治療の第一選択は手術だが,広範囲で手術が困難な例や関節を含むため術後の運動機能への影響が懸念される症例,手術を望まない症例などでの整容面での改善には,色素レーザーが有用であると考えた.

ソラフェニブ投与後急速に出現したケラトアカントーマ様有棘細胞癌と思われた1例

著者: 新田桐子 ,   牛込悠紀子 ,   早川順 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.929 - P.933

要約 68歳,男性.2008年に右腎細胞癌を切除後,2012年,多発肺転移にて再発し,2012年11月よりソラフェニブ400mg/日を開始した.その2週間後より口囲右上方に結節が出現した.2013年1月,ソラフェニブを減量した後も結節が拡大したため,当科を紹介された.生検組織はケラトアカントーマ(keratoacanthoma:KA)に一致する所見であったが,その後も拡大が止まらず全切除した.切除標本では辺縁の腫瘍細胞の異型性が高度でケラトアカントーマ様有棘細胞癌(keratoacanthoma-like squamous cell carcinoma:KA-like SCC)と診断した.ソラフェニブ投与後に出現した皮膚腫瘍の報告は,海外では多いが本邦では稀で,KA-like SCCは2例目である.ソラフェニブ投与患者に生じるKA,KA-like SCCでは多発例,非露光部例が多いことを認識し,主治医は定期的な全身の診察を行うべきである.腫瘍が生じた場合,単発例では早期の切除を,多発例では薬剤の減量や中止を検討することが望ましい.

腹部に生じた有茎性基底細胞癌の1例

著者: 花岡佑真 ,   松井佐起 ,   福山國太郎

ページ範囲:P.935 - P.938

要約 74歳,男性.1年数か月前から腹部に自覚症状のない結節が出現し,徐々に増大して血性滲出液を伴ってきたため,受診した.右側腹部に径52×40mmで高さ10mmの有茎性茸状のびらんを伴う灰黒色腫瘤を認めた.ダーモスコピーでは明らかなlarge blue-gray ovoid nestsやmultiple blue-gray globulesの所見はみられず,blue-white veilや不規則な血管拡張を認めた.以上より悪性黒色腫の可能性も考え,生検を施行し,基底細胞癌と診断した.基底細胞癌の体幹発症は全体の1割程度で表在型の割合が多いが,有茎性腫瘤を呈する場合もある.また基底細胞癌と悪性黒色腫では悪性度が大きく異なり切除範囲も違うため,臨床像やダーモスコピー所見から診断困難な場合は,部分生検を行い,診断を確定させてから治療方針を考えるのがより好ましいと考えた.

5%イミキモドクリーム外用が奏効した乳房外Paget病の1例

著者: 角田加奈子 ,   馬場由香 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.939 - P.943

要約 87歳,女性.3年前から外陰部に無症状の紅斑が出現して徐々に拡大し,受診した.紅斑部の生検では,表皮内に淡い胞体を持つ異型細胞が増殖し,これらはCEA,CK7陽性で,乳房外Paget病と診断した.高齢で全身状態が不良のため,手術や放射線療法は施行せず,5%イミキモドクリームの外用を週3回行った.治療中の病巣では,granzyme B,CD8陽性リンパ球が真皮内に多数浸潤し,表皮向性もみられた.外用開始から12週間後,紅斑,びらんは消退,病理組織学的にも腫瘍細胞の消失を確認した.また,granzyme B,CD8陽性リンパ球は治療中と比し,治療終了時には明らかに減少していた.リンパ球を介し抗腫瘍効果を示す5%イミキモドクリーム外用療法は,簡便で低侵襲な治療方法であり,高齢で手術困難な症例に対する選択肢となると考える.

副乳癌と鑑別を要したmucinous carcinoma of the skinの男性例

著者: 林雄二郎 ,   野々村優美 ,   岡本奈都子 ,   坂田晋吾 ,   十一英子

ページ範囲:P.945 - P.948

要約 68歳,男性.右腋窩の2cm大の皮下腫瘤を主訴に受診した.切除標本の病理組織像は粘液で満たされた胞巣とその内部に浮遊する腫瘍細胞からなる皮下結節で,免疫染色ではエストロゲン受容体,プロゲステロン受容体が陽性で周囲に乳腺組織は認めなかった.全身検索で転移性腫瘍を否定しmucinous carcinoma of the skin(MCS)と診断した.タモキシフェン内服,2cmマージンでの追加切除,センチネルリンパ節生検を施行し,センチネルリンパ節には癌浸潤を認めなかった.男性腋窩のMCS,副乳癌の粘液癌タイプはいずれも非常に稀である.また,病理組織像,免疫染色は同一所見を呈し鑑別点は周囲の乳腺組織の有無のみである.皮膚悪性腫瘍取扱い規約ではMCSの治療は基底細胞癌に準じるとあるが,男性腋窩の粘液癌はより慎重な対応が必要と考えた.

左上腕の紅色腫瘤で発症したALK陽性全身型anaplastic large cell lymphomaの1例

著者: 八木夏希 ,   中尾将治 ,   筒井清広 ,   青木剛 ,   杉盛千春 ,   金原拓郎

ページ範囲:P.949 - P.953

要約 32歳,男性.初診6か月前に左上腕に紅色腫瘤が出現,徐々に増大した.抗菌薬治療で改善せず,さらに増大,表面にびらんを伴うようになった.初診時,40×40mmのドーム状に隆起した紅色腫瘤を認め,びらん,壊死を伴った.皮膚生検標本で真皮浅層から皮下組織に中型,大型の異型リンパ球が密に増殖し.その形質はCD3,CD4,CD30,ALK,granzyme Bが陽性.PET-CTで左上腕の腫瘍および左腋窩リンパ節,左鎖骨下リンパ節に集積を認めた.ALK陽性全身型anaplastic large cell lymphoma(ALCL)と診断し,CHOP療法6クールを開始した.CHOP療法1クール終了後,左腋窩のリンパ節病変は著明に縮小し,左上腕の紅色腫瘤は消失,胡桃大の潰瘍を残すのみとなった.治療開始2か月後に上皮化した.地固め療法として放射線照射を追加,治療終了後のPET-CTで異常集積はみられなかった.4か月後,再発はない.臨床像からのALK発現の推測は難しく,治療反応性,予後の観点からも,全身型ALCLと診断した際にはALKの発現検索は必須と考えた.

外歯瘻の9例

著者: 稲坂優 ,   菅原京子 ,   稲葉由季 ,   伊藤有美 ,   臼田俊和 ,   大林修文 ,   木下弘幸 ,   小寺雅也

ページ範囲:P.954 - P.958

要約 外歯瘻は,歯性感染による慢性化膿性炎症が皮下組織を経て口腔外皮膚にまで波及する結果,瘻孔や肉芽腫を形成する歯科的疾患である.本疾患では顔面に瘻孔や肉芽腫を形成して皮膚科を受診する機会は多いが,原因となる歯の症状が乏しい場合も稀ではなく,確定診断までに長期間を要する症例も少なくない.自験9症例の検討では,臨床的な特徴から外歯瘻を疑った際には,X線検査や超音波検査などの画像的検索を積極的に行い確定診断を付けることにより,歯科との連携による速やかな治療が可能になるものと考えられた.

インフリキシマブが奏効した小児pyostomatitis vegetansの1例

著者: 松本奈央子 ,   畑康樹 ,   角田知之 ,   乾あやの

ページ範囲:P.959 - P.962

要約 13歳,男児.原発性硬化性胆管炎,潰瘍性大腸炎で小児科にて加療中.サラゾスルファピリジン,プレドニゾロンで加療されるも寛解に至らなかった.初診1週間前より膿苔を付着する口唇の潰瘍が出現した.口腔内に粘膜疹は認めず,潰瘍は口唇に限局していた.血中抗Dsg1・Dsg3抗体は陰性であった.病理組織学所見で真皮浅層に稠密な好酸球,好中球の浸潤を認めた.経過中,口唇粘膜の症状のみで皮疹は認めなかった.以上の所見から潰瘍性大腸炎に合併したpyostomatitis vegetansと診断した.インフリキシマブを開始し,消化器症状の軽快とともに口唇粘膜の症状も消退した.自験例はインフリキシマブが奏効し,潰瘍性大腸炎,原発性硬化性胆管炎を合併した本邦初症例であり報告する.

肛囲にPaget現象を呈した肛門管癌の1例

著者: 森志朋 ,   遠藤幸紀 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.963 - P.966

要約 69歳,男性.2012年頃より排便時肛門痛を自覚していたが放置していた.排便困難をきたし翌年12月に前医を受診した.肛門狭窄や周囲炎を認め大腸内視鏡を施行したがそれ以外に異常所見はなかった.周囲炎部の生検病理組織像で腺癌と判明し外科と当科を受診した.肛門周囲と陰囊部に発赤・びらん局面を認め,病理組織所見では皮疹部は表皮内に胞体の明るい異型細胞が浸潤し,肛門粘膜部は腺癌の像であった.免疫組織学的所見はCDX-2+,CK19+,CK20+,CK7−,GCDFP−でPaget現象を呈した肛門管癌と診断し,皮疹辺縁より1.5cm離してmapping biopsy施行した.生検部に腫瘍細胞は認めずMiles手術時に皮膚切除し単純縫縮した.肛門周囲に皮疹を認める場合は,診断確定や切除範囲決定のためにも皮膚科医は積極的にmapping biopsyを行う必要がある.

臨床統計

乾癬患者に対する生物学的製剤導入前の軀幹部CT検査の有用性に関する検討

著者: 國行秀一 ,   松村泰宏 ,   平田央 ,   前川直輝

ページ範囲:P.967 - P.972

要約 当院の乾癬外来では,生物学的製剤導入前のスクリーニング検査として,結核・悪性腫瘍・その他の合併症の有無を調べる目的で,軀幹部(頸部〜骨盤部)CT検査を実施している.生物学的製剤の適応と判断し,CT検査を実施した乾癬患者は40例で,65歳以上14例,64歳未満26例であった.65歳以上の症例から,悪性腫瘍が3例(多発性肝細胞癌,前立腺癌,直腸癌),腹部大動脈瘤が2例(総腸骨動脈瘤,腎下部大動脈瘤)発見された.一方,64歳以下の26例では,異常は確認されなかった.検討症例数が少数であるが,65歳以上の高齢者において,導入前の軀幹部CT検査が,悪性腫瘍・動脈瘤などの発見に有用と思われた.

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欧文目次

ページ範囲:P.895 - P.895

文献紹介 次世代シークエンサーによるT細胞クローナリティーの評価は,菌状息肉症の診断感度を向上させる

著者: 堀川弘登

ページ範囲:P.916 - P.916

 菌状息肉症(mycosis fungoides:MF)は皮膚型リンパ腫(cutaneous T cell lymphoma:CTCL)のうち約50%を占める疾患である.初期病変では時に病理学的診断が困難であり,腫瘍性を確かめる検査としてT細胞受容体(T cell receptor:TCR)の遺伝子再構成を検出する方法が有用である.現在汎用されているポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)はTCR遺伝子のVJ領域の増幅産物を電気泳動で検出する方法である.しかしこの方法は,PCR生成物の質量からモノクローナリティーを間接的に検出する方法であるため,感度・特異度が不十分であることや,同一患者の複数検体から得られた場合にそれらのTCR遺伝子を正確に比較できないといった問題点がある.次世代シークエンス(next-generation sequencing:NGS)は,TCR遺伝子のVJ領域の塩基配列を直接解読する手法である.この方法は従来の方法と比較して感度が高いだけでなく,同一患者の複数検体を比較することができる.さらに,ホルマリン固定された検体でも解析できるという利点もある.本研究は,病理学的にMFと診断され,従来のPCR電気泳動法を行った34人の患者のホルマリン固定検体をNGSで検査し,その感度を比較した.その結果,従来法で陰性だった19人のうち16人がNGSで陽性となり,従来法で陽性だった15人のうち13人がNGSで陽性となった.感度は,従来法で44%(95% CI 0.29-0.60)であったのに対し,NGSでは85%(95% CI 0.70-0.94)だった.また,NGSが陽性であった患者のうち3人について,治療中に再発が疑われた際に生検された検体を再度NGSで解析し,診断時の生検検体と比較した.その結果,異なる時期に採取された2つの検体では,部位にかかわらず同一のTCR遺伝子を塩基配列レベルで確認できた.以上のことから,NGSはMFの診断精度を高めるだけでなく,再発の検出感度も高める可能性を持った検査方法であることが示唆された.

書評 —著:新谷  歩—今日から使える医療統計

著者: 佐々木宏治

ページ範囲:P.923 - P.923

 臨床研究をするに当たりどの統計手法を使うべきなのだろうか? 論文を読むたびに目にする統計手法は正しい手法なのだろうか? それぞれの統計解析の意味はいったい何なのだろう?——論文を読む際,また自分自身が臨床研究をするに当たって,このような疑問を感じたことはありませんか.私がそのような疑問を抱えた時に巡り合ったのが,2011年に新谷歩先生が週刊医学界新聞に寄稿された「今日から使える医療統計学講座」シリーズでした.
 統計学の教科書をひもとくと,一つ一つの統計解析に関して解説が詳細に述べられていますが,臨床研究をするに当たりどのように統計テストを選択していくかを解説しているものは非常に少ないと感じます.

次号予告

ページ範囲:P.973 - P.973

あとがき

著者: 塩原哲夫

ページ範囲:P.976 - P.976

 好奇心は,“奇”を好む心と書く.筆者は子供の頃から好奇心が人一倍強かったせいか,いつも自分の考えが,まわりの人と違っていることを感じてきた.そのため,人前ではなるべく自分の考えを言わないという習性が身についてしまい,今でも人前で自分の考えを披瀝するのに常にためらいがある(そうは思わない向きも多いと思うが).
 先日,正規の音楽教育を受けずに独力で世界的な作曲家になった武満徹氏の生前の映像が放映されていたが,それは好奇心に関して筆者が長年抱いてきた疑問を氷解させるものであった.彼は“自分は目に見えないものを見たいし,聞こえないものを聞きたいと思う.ある人の絵を見ていると,聞こえないものが聞こえてくるから好きなのだ”という趣旨の発言をされていた.そのとき筆者は,見えないものを見たいと思う心こそが好奇心なのであって,別に“奇”を好む訳ではないということを改めて認識したのである.筆者と同世代の映画監督にスティーヴン・スピルバーグがいるが,彼の作る映画はすべて筆者らの世代が少年の頃抱いた好奇心を具現化したものである.それは宇宙であり,恐竜であり,未来の世界などであり,昔の子供は皆このような好奇心の塊だった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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