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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科69巻12号

2015年11月発行

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文献紹介 次世代シークエンサーによるT細胞クローナリティーの評価は,菌状息肉症の診断感度を向上させる フリーアクセス

著者: 堀川弘登1

所属機関: 1慶應義塾大学

ページ範囲:P.916 - P.916

文献概要

 菌状息肉症(mycosis fungoides:MF)は皮膚型リンパ腫(cutaneous T cell lymphoma:CTCL)のうち約50%を占める疾患である.初期病変では時に病理学的診断が困難であり,腫瘍性を確かめる検査としてT細胞受容体(T cell receptor:TCR)の遺伝子再構成を検出する方法が有用である.現在汎用されているポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)はTCR遺伝子のVJ領域の増幅産物を電気泳動で検出する方法である.しかしこの方法は,PCR生成物の質量からモノクローナリティーを間接的に検出する方法であるため,感度・特異度が不十分であることや,同一患者の複数検体から得られた場合にそれらのTCR遺伝子を正確に比較できないといった問題点がある.次世代シークエンス(next-generation sequencing:NGS)は,TCR遺伝子のVJ領域の塩基配列を直接解読する手法である.この方法は従来の方法と比較して感度が高いだけでなく,同一患者の複数検体を比較することができる.さらに,ホルマリン固定された検体でも解析できるという利点もある.本研究は,病理学的にMFと診断され,従来のPCR電気泳動法を行った34人の患者のホルマリン固定検体をNGSで検査し,その感度を比較した.その結果,従来法で陰性だった19人のうち16人がNGSで陽性となり,従来法で陽性だった15人のうち13人がNGSで陽性となった.感度は,従来法で44%(95% CI 0.29-0.60)であったのに対し,NGSでは85%(95% CI 0.70-0.94)だった.また,NGSが陽性であった患者のうち3人について,治療中に再発が疑われた際に生検された検体を再度NGSで解析し,診断時の生検検体と比較した.その結果,異なる時期に採取された2つの検体では,部位にかかわらず同一のTCR遺伝子を塩基配列レベルで確認できた.以上のことから,NGSはMFの診断精度を高めるだけでなく,再発の検出感度も高める可能性を持った検査方法であることが示唆された.

参考文献

Sufficool KE, et al:T-cell clonality assessment by next-generation sequencing improves detection sensitivity in mycosis fungoides. J Am Acad Dermatol 73:228-236, 2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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