文献詳細
症例報告
文献概要
要約 74歳,男性.1年数か月前から腹部に自覚症状のない結節が出現し,徐々に増大して血性滲出液を伴ってきたため,受診した.右側腹部に径52×40mmで高さ10mmの有茎性茸状のびらんを伴う灰黒色腫瘤を認めた.ダーモスコピーでは明らかなlarge blue-gray ovoid nestsやmultiple blue-gray globulesの所見はみられず,blue-white veilや不規則な血管拡張を認めた.以上より悪性黒色腫の可能性も考え,生検を施行し,基底細胞癌と診断した.基底細胞癌の体幹発症は全体の1割程度で表在型の割合が多いが,有茎性腫瘤を呈する場合もある.また基底細胞癌と悪性黒色腫では悪性度が大きく異なり切除範囲も違うため,臨床像やダーモスコピー所見から診断困難な場合は,部分生検を行い,診断を確定させてから治療方針を考えるのがより好ましいと考えた.
参考文献
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