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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科69巻2号

2015年02月発行

文献概要

症例報告

ハチ刺症による横紋筋融解症の1例

著者: 原本理恵1 渋谷倫太郎1 井形華絵1 大谷稔男1

所属機関: 1倉敷中央病院皮膚科

ページ範囲:P.140 - P.144

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要約 83歳,女性.自宅の庭で左中指をハチに刺され,出血と疼痛を生じた.近医で消毒処置を受け,非ステロイド抗炎症薬の内服薬を処方されたが,翌日,左上肢の腫脹が顕著になり再診した.血液検査でCKが14,423U/lと高値だったため,当院救急外来を紹介受診し,同日,当科入院となった.入院翌日のCKは25,048U/lに上昇,ミオグロブリンも血中が9,920.0ng/ml,尿中が56,000ng/mlと高値を示し,横紋筋融解症と診断した.輸液と炭酸水素ナトリウム120mEq/日の投与で検査値は正常化し,左上肢の症状も消失した.Crは入院時を通して正常だった.ハチ刺症による横紋筋融解症はまれで,特に1か所の刺傷で生じた報告は少ない.しかし,ハチ毒が直接血管内に注入されたときは発症しうると考えられた.ハチ刺症による横紋筋融解症は,血液透析を必要とした例や死に至った例も少なくない.入院後早期に転帰を予測するのは必ずしも容易でないが,CK値は参考になると思われた.ハチ刺症の合併症としての横紋筋融解症を認識し,本症が疑われたら重症度を把握し,速やかに治療を開始することが必要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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