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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科69巻3号

2015年03月発行

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文献紹介 ゲノムワイド関連解析により発見された疾患関与が示唆される蛋白質コード配列の変異は,その変異頻度にかかわらず関節リウマチにおけるリスク因子となりうる フリーアクセス

著者: 安田文世1

所属機関: 1慶應義塾大学

ページ範囲:P.247 - P.247

文献概要

 ゲノムワイド関連解析(genome-wide association studies:GWAS)による疾患関連変異解析とは,集団内で高頻度な疾患には高頻度な多型が関与するという仮説(common disease common variant hypothesis)に基づき,疾患群と非疾患群で頻度に有意差がある一塩基多型を同定して疾患と相関する領域を推定する解析手法である.しかしこの方法で同定された変異だけでは,他の方法で推定された遺伝性因子を説明できないことが少なくなく,missing heritability(失われた遺伝性)と命名された.本論文ではmissing heritability解明のため,低頻度多型(アレル頻度5%以下)の解析を行った.関節リウマチ患者で生物学的に関連がある候補遺伝子について配列決定し,同定した変異頻度を1000 Genomes Projectで得られた多型頻度情報に基づきcommon(5%以上),low(0.5〜5%),rare(0.5%未満)に分類した.さらにlowおよびrare群では非同義・同義置換に分類し,変異重症度予測プログラム(PolyPhen)の結果を加味した.その結果,患者群とコントロール群に有意差がある変異を含む2種の遺伝子(IL2RAとIL2RB)を同定した.これはlowおよびrare群の変異もcommon diseaseに寄与していることを示している.さらにcommon群とlow群は,過去のimmunochipやGWASデータを加えて解析し,最終的に10変異を疾患との関与が高いと結論づけた.特にCD2遺伝子はrs699738のミスセンス変異とrs798036の非コード領域変異頻度が疾患群で有意に高いことを示した.
 本論文ではGWASで対象外にされた低頻度多型に相関する領域がmissing heritabilityに含まれることを証明する手法を提案しているが,統計学的な証明には多くのサンプル数が必要とされると,今後の課題を述べている.

参考文献

Diogo D, et al:Rare, low-frequency, and common variants in the protein-coding sequence of biological candidate genes from GWASs contribute to risk of rheumatoid arthritis. Am J Hum Genet 92:15-27, 2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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