要約 80歳,男性.既往歴に認知症,不眠症,カルバマゼピンによる過去3回の薬疹がある.初診2日前に歯痛のためカルバマゼピン内服後,翌日より体幹,四肢に疼痛を伴う皮疹が出現し,2日後当科を受診した.初診時,体幹を中心に強い浸潤を触れる紅斑が多数認められた.経過より,カルバマゼピンによる薬疹を疑った.同薬剤の薬疹を数度繰り返していることから重症化が懸念されたが,ステロイドパルス療法により速やかに軽快した.病理組織で表皮の好酸性壊死を多数認めたものの,粘膜疹を認めず,全身状態が比較的良好であり,リンパ球刺激試験とパッチテストが陽性であることから,カルバマゼピンによる多発型固定薬疹と診断した.自験例は治療開始前に施行したリンパ球刺激試験は陰性となり,第23病日に陽性となった.急性期に陰性になった理由として,regulatory T cellの増加が関わっている可能性が示唆された.