icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科69巻5号

2015年04月発行

Derm.2015

Lewandowskyの皮疹

著者: 清水晶1

所属機関: 1群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学

ページ範囲:P.16 - P.16

文献概要

 有名であるがなかなか出会えない症例というのはあると思う.ヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus:HPV)に興味がある私にとっては疣贅状表皮発育異常症(epidermodysplasia verruciformis:EV)(Lewandowsky-Lutz)がそれである.HPVの研究はこの疾患の研究で大きく進歩してきた.当科でも過去に1例経験しているが,残念ながら当時の自分には縁がなかった.学会などで「Lewandowskyの皮疹は…,」と話す先生をうらやましく思っていた.いつか巡り合うに違いないと信じ文献を集め,HPVタイピングの腕を磨いてきた.そのなかで,免疫不全を伴う多発性疣贅鑑別のすばらしいアルゴリズムが発表されているのに気付いた(Leiding JW, Holland SM:J Allergy Clin Immunol 130:1030, 2012).
 今年初めに当科石川治教授から「先生にぜひに見せたい症例がある」と言われ,患者さんにお会いしすぐにこれはと思った.これまで見たことのないような多発性疣贅があり,30歳前半であるが肛門癌,そして骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)も合併していた.疣贅は癜風様ではなくEVではないが,類似の疾患に違いないと思った(当然ここでも「Lewandowskyの皮疹は…,」という議論が行われた).採血を行い,免疫グロブリン正常,単球ゼロ…,などの所見を前述のアルゴリズムに当てはめていくと,転写因子GATA2の異常に違いないと思われた.GATA2変異例はリンパ浮腫を伴うことが多い.たまたま足の疣贅を撮った写真で浮腫を確認しさらに確信を深めた.その後は一直線で,GATA2遺伝子変異を確認し診断に至った.新規のスプライスサイト変異でありmRNAの確認が必要で,弘前大学の中野創先生をはじめスタッフの皆様に大変お世話になった.GATA2遺伝子変異は皮膚科領域からの報告は少なく,遺伝的にMDSを生じることから血液内科からの報告がほとんどである.今後は皮膚科医としてこの遺伝子変異で疣贅が多発するメカニズムを明らかにし,医学的根拠に基づいた治療をしたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら