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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科69巻6号

2015年05月発行

文献概要

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文献紹介 βカテニンはメラノサイトの遊走能を抑制する一方,メラノーマの転移を促進する

著者: 中村善雄1

所属機関: 1慶應義塾大学

ページ範囲:P.406 - P.406

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 Wnt-βカテニンシグナルは,主に組織の発生段階において細胞質内のβカテニンが核内に移行することで活性化する.がんではそのシグナル伝達経路の構成因子に遺伝子異常が起こることで核内にβカテニンが集積し,細胞にがん細胞としての性質をもたらしている.核内βカテニンの集積は,一般的な癌腫では予後不良因子となる一方で,メラノーマでは予後良好因子となることが知られている.この理由を探るべく,著者らはWnt-βカテニンシグナル伝達経路がメラノーマとメラノサイトの遊走・転移能に及ぼす影響を解析している.
 不死化したメラノサイトを用いたin vitroの実験では,シグナルを活性化することと核内にβカテニンを強発現することで遊走能が抑制されることを示した.また,メラノサイト特異的にβカテニンを強発現するトランスジェニックマウスを用いた実験では,核内βカテニンがメラノサイトの遊走を阻害することを証明した.さらに,βカテニンの核内強発現によってMITFとCSKの発現が誘導され,遊走能の抑制が起きることを不死化メラノサイトとメラノーマ細胞株を用いて示している.その一方,メラノサイト特異的に変異型NRASを発現させたメラノーマモデルトランスジェニックマウスにメラノサイト特異的にβカテニンを強発現するマウスを交配させた検討においては,βカテニン強発現群において肺転移がより高率に認められることが確認された.以上の結果より,Wnt-βカテニンシグナルは転移の初期段階の一プロセスである遊走能には抑制的に働くが,それ以後のプロセスにおいては促進的に働く可能性が示唆された.

参考文献

Gallagher SJ, et al:Beta-catenin inhibits melanocyte migration but induces melanoma metastasis. Oncogene 32:2230-2238, 2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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