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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科69巻9号

2015年08月発行

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あとがき フリーアクセス

著者: 石河晃

ページ範囲:P.710 - P.710

文献概要

 カルテが電子化され,近年めっきり字を書くことが減りました.もともとワープロ文書は場所を取らずに保存・検索が可能で,便利に使っていましたが,電子カルテになってから特に,漢字を書こうとしてもすぐ出てこないことが増えたような気がします.辞書代わりにスマホに入力して調べることもあります.某先輩皮膚科医が皮膚科新人教育の際に次の問題を出し,その解答を見れば各人の将来がおよそ予測できる,と言っていたことばが耳の奥でこだましています.「みなさん,風邪のことを『かんぼう』と言いますが,正確に漢字で書いてみて下さい.」
 一方,若手医師達の成書離れが近年気になっています.皮膚科の教本は世界的な名著がいくつかあり,皮膚病理の記載をよく読むことはカンファレンス準備として必須事項でしたが,成書にあたる医師が少なくなっています.電子カルテのせいで所見や病名などの専門用語が日本語記載となり,英文表記になじみがないため,読み進むのに時間がかかることが一因のようです.多くの人は成書の代わりにネット検索です.ネット検索は必要な事項を必要な分だけ引っぱることが可能です.学生実習のプレゼンテーションなどを見ていると,ネットを利用し,視覚に訴える上手なプレゼンをする学生が増えたと感じます.キーワード検索してダウンロードした文章や画像をコピーペーストすることで,頭を使わずに一見とても立派なレポートが出来上がってしまいます.ある日,レポートが課された学生が,私のところへワープロ打ちされたA4版6頁にわたる「完璧な」レポートを提出してきました.しかし,レポートを手にとって何が書いてあるか質問すると,何一つ具体的に答えられなかったのです.私は普段からレポートは手書きすることを要求しています.漢字を忘れないためにも重要なことだと思います.ちなみに「かんぼう」は「感冒」です.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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