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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科70巻10号

2016年09月発行

文献概要

症例報告

生物学的製剤投与前に脱髄疾患の精査を必要とした尋常性乾癬の1例

著者: 生野由起1 武岡伸太郎1 多田弥生1 林耕太郎1 大西誉光1 河村保臣2 渡辺晋一1

所属機関: 1帝京大学医学部皮膚科学講座 2帝京大学医学部神経内科学講座

ページ範囲:P.786 - P.790

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要約 36歳,女性.20年前より被髪頭部に瘙痒を伴う鱗屑が出現した.外用薬(詳細不明)で一時改善した.約6年前から手背に瘙痒を伴う小豆大の角化性紅斑が出現し,徐々に全身に拡大した.近医にて加療したが軽快せず当科を受診した.初診時,頭皮全体,顔面の脂漏部位,四肢・体幹に鱗屑を伴うコイン大から手拳大までの紅斑局面が多発散在していた.手掌足底は角化が顕著で指の屈曲伸展ができないほどであった.爪甲は黄色に混濁し粗糙で,点状陥凹,剝離を伴い高度に変形していた.PASI scoreは34.1であり,病理組織像では錯角化,表皮肥厚,規則的な表皮突起の棍棒状の延長,真皮乳頭部の毛細血管拡張を認め,尋常性乾癬と診断した.両足底に感覚障害を認めたため神経内科にて精査した.神経伝導速度検査では知覚神経の伝導速度が軽度低下し,感覚神経活動電位の低下を認めるが,脱髄や時間的分散を認めないため,アルコール性神経障害と診断された.インフリキシマブを導入しPASI 3.1まで改善した.乾癬患者ではアルコール多飲者が多く自験例のような脱髄疾患類似の神経障害を伴うこともあり,乾癬治療上注意すべきである.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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