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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科70巻10号

2016年09月発行

文献概要

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文献紹介 寄生虫感染によるアレルギーの抑制作用は腸内細菌叢の変化に起因する

著者: 安田文世1

所属機関: 1慶應義塾大学

ページ範囲:P.811 - P.811

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 アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患は,寄生虫感染が蔓延していた頃にはほとんど存在しなかったといわれる.これは寄生虫に対するIgE抗体反応が誘導されることにより,他の外来抗原への反応が抑制されるためと説明されてきた.本論文では,寄生虫感染そのものではなく,寄生虫感染により変化した腸内細菌叢が,アレルギー反応を抑制することが示された.
 マウスに寄生虫を感染させた上で,ハウスダストによる気道アレルギー反応を誘発させ,その反応の大きさの変化を,気管支肺胞洗浄液中の好中球数,IL-4値,IL-5値,ハウスダスト特異的IgG1値,肺の組織変化などで評価した.結果は寄生虫感染させたマウスのほうが,感染させてないマウスに比べ有意にアレルギー反応が抑制されていた.一方,寄生虫には直接効果のない抗生剤を予め投与したマウスでは,寄生虫を感染させてもアレルギー反応は抑制されなかった.ところが,予め抗生剤を投与しておいたマウスを,寄生虫感染したマウスと同じケージで飼育すると(寄生虫はマウスからマウスへ感染しないが,腸内細菌はマウスからマウスへと感染する),アレルギー反応が抑制された.すなわち,寄生虫感染自体ではなく,寄生虫感染により変化した腸内細菌がアレルギー反応を抑制することが明らかとなった.アレルギー反応が抑制されたマウスでは,腸内細菌由来の短鎖脂肪酸の濃度が上昇しており,短鎖脂肪酸の免疫機能への作用を媒介するGPR41受容体を欠損させたマウスでは,寄生虫感染によるアレルギー抑制効果が消失した.さらにはブタやボランティアのヒトに寄生虫を感染させると,腸内の短鎖脂肪酸産生が上昇することが示された.膨大な実験をもとに寄生虫感染がアレルギーを抑制する機構を明らかにした,大変興味深い論文である.

参考文献

Zaiss MM, et al:The Intestinal Microbiota Contributes to the Ability of Helminths to Modulate Allergic Inflammation. Immunity 43:998-1010, 2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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