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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科70巻12号

2016年11月発行

文献概要

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文献紹介 尋常性天疱瘡に対するキメラ抗原受容体T細胞の応用

著者: 小林研太1

所属機関: 1慶應義塾大学

ページ範囲:P.974 - P.974

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 キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)は抗原特異的なモノクローナル抗体の可変領域を組み替えた単鎖抗体をN末端側に,T細胞受容体ζ鎖,共刺激分子をC末端側に有するキメラ蛋白であり,これを導入されたT細胞は高い抗原特異性と細胞傷害活性を有する.近年,CD19を標的抗原としたCART細胞を用いた臨床試験で,血液腫瘍において高い奏効率が得られている.本研究では,CARを応用して抗Dsg3抗体を標的抗原としたchimeric autoantibody receptor(CAAR)を作製し,尋常性天疱瘡治療へ用いようと試みた.単鎖抗体の代わりにDsg3を構成する細胞外カドヘリンを用いて,T細胞受容体ζ鎖,共刺激分子CD137と組み合わせ,抗Dsg3抗体特異的CAARが作製された.まず,in vitroでCAART細胞は抗Dsg3抗体産生hybridomaに対して細胞障害活性を示し,また,遊離したポリクローナル抗体存在下においても細胞障害活性は保たれた.次に,抗Dsg3抗体産生hybridomaを用いて作製された尋常性天疱瘡モデルマウスにおいてCAART細胞の効果を確かめた.CAART細胞を注入されたマウスでは抗Dsg3抗体産生hybridomaが消失し,表皮細胞間のIgG沈着や表皮の棘融解を認めなかったことから,尋常性天疱瘡に対する治療効果が示された.一方で,標的細胞以外のケラチノサイトやFcγ受容体発現細胞,骨髄B細胞に対する細胞障害活性を示さなかった.以上の実験結果から,今回作製されたCAART細胞は抗Dsg3抗体産生B細胞を特異的に障害し,尋常性天疱瘡に対して効果的であると同時に免疫抑制を起こさない治療となりうることが示唆された.現在の尋常性天疱瘡治療はステロイドや抗CD20抗体が主体であり,治療に伴う免疫抑制状態が必発である.本研究で作製されたCAART細胞は免疫抑制を伴わずに治療効果を得られる特異的治療となる可能性を示しており,尋常性天疱瘡および他の自己免疫疾患に対する治療の新たな一歩となることが期待される.

参考文献

Ellebrecht CT, et al:Reengineering chimeric antigen receptor T cells for targeted therapy of autoimmune disease. Science 353:179-184, 2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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