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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科70巻12号

2016年11月発行

文献概要

症例報告

神経内分泌腫瘍による脂肪壊死症の合併が考えられたTrousseau症候群の1例

著者: 熊谷宜子1 泉映里1 髙江雄二郎1 金田義弘2

所属機関: 1済生会横浜市南部病院皮膚科 2済生会横浜市南部病院消化器内科

ページ範囲:P.995 - P.1000

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要約 66歳,男性.初診の1か月前より発熱,両下腿の有痛性紅色結節が出現し,徐々に大腿部・前腕に拡大した.下腿の結節の病理組織像では,真皮中層の静脈血栓の多発と周囲のリンパ球,好中球の浸潤,膿瘍形成を認め,脂肪組織にも壊死像を伴っていた.細菌,真菌,抗酸菌培養は陰性であった.当院内科にて,神経内分泌腫瘍で精査中だった.悪性腫瘍に伴う多発血栓症と考え,Trousseau症候群と診断し,脂肪壊死症の合併も疑った.血栓に対して抗凝固療法や原病の治療が検討されたが,患者の希望がなく無治療の方針であり,貧血も伴い,いずれの治療法も選択できなかった.ステロイド投与を試みたところ,結節の新生はなくなり,自覚症状も改善した.悪性腫瘍に伴う血液凝固亢進による血栓症で,他の血栓傾向を呈する疾患が除外されたものをTrousseau症候群という.皮膚科領域での報告は少なく,担癌患者の皮膚症状の鑑別疾患となりうる.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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